雑文 #57
ビートルズのプロデューサー、ジョージ・マーティン氏が亡くなった。
かと言って、私がビートルズの熱心なファンかと聞かれれば、いや普通に好きなだけなんだけど、その訃報を今日ラジオで聴いて、「In My Life」が流れたもんだから、この曲が私はビートルズの中でたぶん一番好きなもんだから、そしてこの曲の後半のあの美しいピアノの旋律がジョージ・マーティン氏の演奏であることを知ったものだから、なんかいろいろなものが相まって、少し泣いた。
https://m.youtube.com/watch?v=z5CjaqZb5nM
ビートルズと言えば、私がその存在を認識した頃にはもう解散していたし、ジョン・レノンはいなかったし、すでに伝説でありスタンダードであった。
私はロックとポップスをほとんど聴かないという、かなりヘンテコなティーンエイジャーだったけれども、ビートルズの音楽だけは好きになった。
今日の午後、店でビートルズをいっぱいかけながらずっと思っていた。
私は、もし十代にビートルズを聴いていなかったら、いまくるりにここまでハマっていなかったんじゃないかと。
まったくもってロックの良さを知らない人に出来上がっていたのではないかと(妹がそうなんです)
もちろん一言で「ロック」とかジャンルに括れないことは承知ですけれど、なんか思えば私は十代でそういった音楽はビートルズしかちゃんと聴かなかったような気がする。
それから思い出したのは、ビートルズを聴いたきっかけ。
ある男子だったのです。
彼とは同じクラスで、まあまあ仲良い感じだったのですが、高校で別のクラスになりました。
彼はバンドでギター&ヴォーカルをやっていました。
ある時、ライブをやることになり、廊下などですれ違う度に私に「ライブ観に来てくれ!」と言うようになりました。
私は仲の良い女子数人と一緒にいて、だいぶからかわれたので、恥ずかしくて「行くよ」と素直に言えませんでした。
でも心情は、行ってあげたいな、って感じです。
何度も言われて、終いには「お前のためにやるんだからな」と言われて私はビビるやら照れくさいやら信じられないやら…
なんと言うか、自分に自信のあるひとだったのですかね。まあイケてるほうのひとでしたから。
私は結局、友達数人を誘って観に行きました。
なんと遅刻して行きました(感じ悪いよね…)
ドアを開けると、彼がビートルズの「It Won't Be Long」を歌っていました。あの感じ、いまでも覚えています。
ちゃんと歌えてちゃんと弾けてる!と私は感心したものでした。
ライブが終わると彼はお礼を言いに来てくれましたが、私は何ひとつ気の利いたことを言えなかったのでしょう。
その後彼とは疎遠になり、気がつくと彼には下級生のかわいい彼女ができていました。
私はそれまでロックとか聴いていなかったのに、なぜあんなに熱心に観に来てくれと言われたのか、不思議でした。
普通に考えて、好意を持たれていたのでしょうが、純情かつつむじ曲がりの当時の私にはそんなことすらわからず、そのライブ後にはただただ「ビートルズを聴いてみたい」と思い女友達にレコードを借りたのです(彼に借りればよかったのに…)
『With the Beatles』というレコードです。カセットテープに落として何度も何度も聴きました。
どうして私は過去のエピソードをこんなに細かに覚えているのだろう。
「In My Life」にもそこはかとなく流れていますが、懐かしむ感じ、郷愁的な感じに私はたまらなく惹かれます。
くるりを大好きな理由のひとつがそれなんだと、今日確信しました。
ずっとずっと後世に残る曲になってほしい。
大量生産の片手間の、世間におもねて作った曲とは違うのですよ。
https://m.youtube.com/watch?v=jbYh4su2HGE