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vetOSCE受験記録

1. 医療面接

vetOSCEの医療面接は、模擬クライアントと獣医学生が問診の形を取ってやりとりする。
呼び込み:「佐藤モモちゃん、診察室へどうぞ〜」
に始まり、
オープンクエスチョン:「本日はどうされましたか?」
クローズドクエスチョン:「それについて詳しく教えてくださいますか?」
診察の要望などを尋ねたり、飼い主の心当たりや心配事(解釈モデルという)を聞き出すことも大切だ。

しかし、この医療面接で診断を下す必要はない。大切なのは飼い主に寄り添って共感の態度を示すこと。「それは心配ですね」「それは大変ですね」ときちんと心を込めて発することが重要である。
また、動物への気遣いも忘れてはいけない。動物といってもケージに入れられたぬいぐるみなわけだが、「モモちゃん、こんにちは」とぬいぐるみにも挨拶をすることが必須である。時と場合に応じて「かわいいですね」「確かに元気がなさそうです」などと想像力をフル稼働させねばならない。正直言って、試験官に見つめられながらぬいぐるみ相手に挨拶するのはだいぶ恥ずかしい。

私の周りのやらかし例としては、

  • モモちゃんへの挨拶を忘れた

  • 飼い主への自己紹介を忘れた

  • 「それは心配ですね」が棒読みすぎると言われた

  • 犬の名前を「くん」呼びしていたら後半にメスであることが判明した

  • 飼い主に荷物を置かせるのを忘れ、リュックを背負わせたまま診察した

……などなど。大学生が「ぬいぐるみに話しかけんの忘れた…」と落ち込んでいる様はけっこう見応えがある。言っておくが、我々は大まじめである。

面白いのは、この試験の飼い主役は外部の「飼い主っぽい!」人が模擬クライアントとしてやってくるところだ。年によっては涙を流すなど、迫真の演技をかます猛者飼い主もいるという。こっちが泣きたくなってしまう。

2. 伴侶動物身体検査

これが一番茶番感がすごい。ぬいぐるみ相手に体重・体温を測定し、リンパ節の触診などを行う。
この試験のキモは、ぬいぐるみに触る際必ず「モモちゃん、触るね」と話しかけること。いかにぬいぐるみがビー玉の目で見てこようが、試験官が「ま、無機物なんだけどね(笑)」みたいな顔していようが、心が痛かろうが、とにかく合言葉は「モモちゃん、触るね☆」である。忘れること勿れ。
ちなみに体重はぬいぐるみの重さを答える。「400gです」などとハムスター並みの体重を真顔で答えよう。
体温はふつう直腸で測るが、当然ぬいぐるみにお尻の穴はない。動揺しないようにしよう。試験官がここで一番生あたたかい視線になる。当然測れない体温は、犬の正常体温を答えればOKだ。
ちあみに犬のぬいぐるみの形状によっては、デフォルメされ過ぎていて該当リンパ節がないこともザラである。私のぬいぐるみは「おすわり!」しているワンちゃんだったので、膝下リンパを触診せよと言われた時は本当に戸惑った。
いやあんた、膝ないじゃん。「多分この辺です」と適当につまんどいたら、試験官も曖昧に頷いて終了となった。

3. 産業動物ハンドリング

こちらの試験のお供は牛の模型である。公園とかに置いてありそうな、ベンチくらいの大きさの子牛ちゃんだ。これに「頭絡」と呼ばれる縄をつけ、正しく柱に結びつける。あとはまたしても模型の体温を測る。勘弁してくれ。
この頭絡が正しく結べたかどうかをチェックするために、試験官が縄をちょっと引っ張るのだが、これに割と試験官の個人差が出る。
「岩を引き抜く勢いでやられた」「すごく優しかった」など、ピンからキリまであるので気をつけよう。
何にせよそこそこキツく結んでおけば問題ない。
あとは牛の身体の名称をきちんと覚えているかどうか。「き甲」「十字部」「管」など、真面目に勉強しておかないと体のどこなのかふつうにわからない。

頭絡はこういう縄みたいなやつ。

4. 外科実技(皮膚縫合 or 手術用ガウン着用)

私が一番苦手だったのがこの科目だ。本番にあたるのが縫合なのかガウン着用なのか、試験室に入るそのギリギリまでわからない。そしてどちらも細かい注意力を要求される。緊張している特にはとにかく失敗しやすい。

・皮膚縫合

正しい器具(角針、外科剪刀、把針器)を選択するのが第一関門。用意された器具には、皮膚縫合に向かないダミーがわざと潜んでいるので選ばぬよう注意だ。あとは落ち着いてしっかり偽皮膚を縫おう。ちなみに縫合糸は絶対に鋏で切ること。かつて糸を素手でちぎった猛者がいるらしいが、不合格だったそうだ。ゴリラかお前は。

・手術ガウン着用

5分以内に手術用の帽子、マスク、ガウン、手袋を無菌的に着用せねばならない。この無菌的にというところが厄介だ。細かく決まった手順を正しく追わないとあっさり汚染してしまう。そして、5分という制限時間はそれにしてはかなりタイトである。
「時間オーバーした」「普通に汚染した」「手袋を破いた」……などなど、やらかしエピソードにも事欠かない。

手術用ガウン。テレビドラマとかでおなじみ。

総括

とにかく緊張したが、大きなやらかしもなくOSCEを終了でき嬉しく思う。これだけ偉そうにタラタラ語った私が落ちていたら面白すぎるので、当落はきちんと発表しようと思う。いま「当落」と変換しようとしたら「頭絡」になって泣いた。このように私のパソコンは獣医学用語に侵食されていくのだ。

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