見出し画像

The TRIBE

一生忘れることのできない映画「ザ・トライブ」
2014年にカンヌ国際映画祭で受賞したことから、結構な人が見ている映画だけれど、どうしても記録しておきたい作品だ。
全編手話でセリフも字幕もない。足音や生活音はそのまま入っているからサイレント映画ではない。聾唖者の世界に入り込んだような映画だ。出演者は全員オーディションで選ばれた聴覚障害者。第67回(2014)カンヌ国際映画祭国際批評家週間グランプリを受賞し、世界でも数々の賞を受賞している。

ストーリー

ピュアで、過激で、パワフルな純愛が暴走する
ろうあ者の寄宿学校に入学したセルゲイ。そこでは犯罪や売春などを行う悪の組織によるヒエラルキーが形成されており、入学早々彼らの洗礼を受ける。何回かの犯罪に関わりながら、組織の中で徐々に頭角を現していったセルゲイは、リーダーの愛人で、イタリア行きのために売春でお金を貯めているアナを好きになってしまう。アナと関係を持つうちにアナを自分だけのものにしたくなったセルゲイは、組織のタブーを破り、押さえきれない激しい感情の波に流されていく・・・。 

画像1

画像2

ショッキングな問題作なのか、純愛の傑作なのか

こんなに長く忘れられない映画って他にあるかしら。そう考えるとトライブはきっと一生忘れないレベルの傑作だ。

アナの渾身の演技、そう、衝撃の問題シーン闇医者で行う堕胎シーン。
女性なら恐怖や不快感や深い悲しみや嫌悪感などありとあらゆる感情が沸き起こるだろう。見ていて下腹部がキリキリ痛む。アナを演じたヤナ・ノヴィコヴァはこの映画が初演技だというが、この問題シーンではバケツ1杯の涙を流したとインタビューで答えている。そうだよ、私は目を背けたよ。直視ができないほど残酷だったし悲しかった。こんなシーンが撮られるなんて、誰が想像しただろう。

カンヌではショッキングなクライマックスに、特に目の肥えたカンヌ映画祭の観客や評論家達にもショックを与えたと言われている。
衝撃のクライマックスは…乗り越えられない衝撃で私は心も身体もフリーズしてしまった。

なんでこんな映画作ったんだろう。
ウクライナの政治的な背景や治安情勢とか知らないけれど、この映画のメッセージには若さと純愛と暴力と犯罪が混在していて、えぐいシーンも見るに耐えないクライマックスも何を伝えたい映画だったんだろうという消化できない感情が残るのだ。重要なところは特に長い長いワンカットで撮っているシーンが多く、一般的な映画の表現と違う展開に度肝を抜かれる。


純愛なんだけどね。トライブ(部族や民族)という括りで聾唖者を指しているのか、恋と現実を断絶しているのか、観る人をものすごく疲れさせるほどのエネルギーに満ちた作品だった。傑作だ。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?