【掌編小説】孫六じいちゃんと人気洋食店に並ぶ♪
今日は、ばあちゃんと母ちゃんがお出掛け。
……ってことで、じいちゃん、父ちゃん、俺の男三代で、最近近くに出来た洋食店へやって来た。
店の玄関先から列が出来始めていて、学生アルバイトさんの女の子から、俺たちは6番の番号札を渡された。
「わしの名前が孫六じゃから、6番の番号札なのか?」
「じいちゃん、それは、たまたまだよ、たまたま」
「何ッ?! キ○タマがどうしたって? キンタ○が?」
「父さんさぁ~、じいさんになってまで、そんなにギラギラ目を輝かせて、うれしそうに、キン○マ、○ンタマ言うなよっ! 恥ずかしいっ!」
「うるせえっ! 『三つ子の魂百まで』って言うじゃろがっ!」
「父さん、もう101歳だよ!」
「なぬっ?! わし、もう、101かッ?! ハッハッハ! ボチボチ下ネタも控えんとな~」
「父さん、100越えてから気づくのかよ~ッ! もうちょっと早く気づいてくれよ~」
「まぁ、そう言うな、倅よ! 101歳、102歳の2年間だけは、大人しくしてやるからよ」
「何で2年間だけなんだよ?」
「『百三つ子の魂二百まで』じゃッ! 2年間充電して、103歳から、パワーアップした下ネタで、人生再スタートじゃ! ハッハッハ♪」
「じいちゃん、200まで生きる気かよ!」
「200の次は300じゃ♪」
「全く、もう~、『ロクなじじいじゃねえ!』、って見抜かれての『6』なんじゃねえか、じいちゃん?」
「あの小娘にバレとったか? ひた隠しにしてたつもりじゃったが、『ロクなじじいじゃねえオーラ』が出てしもとったかぁ~? ん~、参ったの~♪ わしに惚れよったな、あの小娘♪ ハッハッハ~!」
こんな訳の分からないバカ話をしながら待っていると、どうやら注文だけは先に聴いておいてくれるらしく、前の人たちから順番に、店員さんが聴きに来てくれていた。
俺たちのところへ店員さんが来てくれて、
「先に……」
と、言い掛けてくれていたときに、
ー ピ~ポ~ッッッ!!! ピ~ポ~ッッッ!!! ー
ー ウ~~~ッッッ!!! ウ~~~ッッッ!!! ー
ー ウ~カンカンカンカンッッッ!!! ウ~カンカンカンカンッッッ!!! ー
と、救急車、パトカー、消防車のサイレンの音が、まぁ~、ほんっとに、けたたましく鳴り響き、一瞬、誰の声も聞こえなくなった。
がっ!
店員さんの問い掛けは、俺たちに続いていたらしく、
「……お伺い出来ますか?」
と、サイレンの音が遠くになるにつれ、聞こえて来た。
じいちゃんが、
「湯出田孫六」
と、名前を答えていたので、父ちゃんも続いて、
「湯出田孫七」
と、名前を答え、俺も、
「湯出田孫八」
と、名前を答えた。
そして、しばらくすると、
「番号札、6番でお待ちのお客様~ッ! お待たせいたしました~ッ! 奥のテーブル席へどうぞ~ッ!」
と呼ばれ、奥の窓際の席へ通された。
「どうやら、わしらは、窓際族じゃの~」
じいちゃんは、いちいちオヤジギャグを挟んで来るので、こっちもいちいちうっとおしいが、じいちゃんの元気のバロメーターだと、適当にスルーした。
「お待たせいたしましたぁ~♪ ゆでたまご6、ゆでたまご7、ゆでたまご8、合計21個のゆでたまごでございます~♪ ご注文以上でよろしいでしょうかぁ~♪ ごゆっくりどうぞ~♪」
大皿に、21個の、ゆでたまご! 洋食店で、わざわざ食うのか?!
家で食えるやんっ!
たまご食い過ぎやんっ!
コレステロール気になるや~んっ!