【掌編小説】JKだって異業種交流会に参加したいんだからね~ッ!
「何かさぁ、今日、街のホールで、地元の信用金庫主催の、異業種交流会やってるんだって!」
「へぇ~」
A子が街の情報を仕入れて来た。B子が気のない返事。それもそのはず、私たちは、まだ、高校生。
「ねぇ、行ってみようよ!」
「えーーーッッッ!!! 大人たちが仕事で交流する会だよ!」
「何、言ってんの~。今の時代、年齢関係なく、アイデア一つで、起業してる子供だって、いっくらでもいるんだよ! 何かヒントあるかもしんないし、社会見学、社会見学!」
「ま、まぁ~、A子の言うことも分かるけど、まだまだ遊んでいたい平凡な女子校生の私たちに限っては、無茶スギちゃんじゃない?」
「でもさぁ、ほら、『個人様での参加もOK』って書いてあるよ♪」
A子がB子にチラシを見せながら、参加資格のところを指差した。
「いや、まぁ、確かに、書いてはいるけどさぁ~、それは、あくまでも個人商店とかってことじゃないの? ねぇ、C子、どう思う?」
「いや、まぁ~、私もB子の言う通りだと思うよぉ~ッ!」
もう~、そんな分かり切ったこと、いちいち、こっちにフラないでよ!
「まぁ、でも、受付で、入場断られたら断られたでいいじゃない。別に、年齢制限とか書いてないんだし」
一度言い出したらキリがないA子に、押し切られる形で、とりあえず、私たちはホールへと向かった。
暇だし!
ニャハ♪
「いらっしゃいませ♪」
タイトなスーツに身を包んだ、大人の色香漂う、フェロモン出まくり系セクシー受付嬢なお姉さんたちが、出迎えてくれた。
やっぱ、場違いも場違い! 場違い甚だしい私たち!
見渡す限り、大人ばかり!
B子も私も、ただただ、その会場の空気に、圧倒されていた。
だけど、A子は臆することもなく、受付のお姉さんとのやりとりも、堂々たるものだった。
「3名様でのご参加ですか?」
「はい、そうです!」
「企業様でのご参加ですか?」
受付のお姉さんは、『そんなはずないやろ!』、と思いながらも、マニュアル上だろう、一応、私たちにそう訊いて来た。
「いえ、それぞれ個人です」
「ありがとうございます。では、それぞれ、何屋さんでいらっしゃいますか?」
ほら、来たッ! A子ぉ~ッ! もう~、だから、言わんこっちゃないッ! やっぱ、『個人』って、『個人商店』のことだったじゃ~ん! 受付のお姉さんたちだって笑顔だけど、いつまでも笑ってくれてないよぉ~! 『子供が冷やかしに来やがって!』って、遠回しに私たちをバカにしてるよぉ~! ほら、目が笑ってないじゃ~ん! ねぇ~、『すいませんでした!』、って言って、もう、帰ろうよぉ~! ねぇ、A子ぉ~……!
B子も私も、心の中で、A子に叫び続けた。
するとッ!
A子は、何を思ったのか、笑顔でお姉さんに、
「はにかみ屋です!」
と、答えた!
えーーーッッッ!!!
私は、一瞬、頭の中が真っ白になった!
がッ!
次の瞬間ッ!
「照れ屋です!」
と、B子が瞬発力で答えた!
私は、「えっ?!」と、呆気に取られたが、二人につられて、気づいたときには、
「恥ずかしがり屋です!」
と、答えていた!
ん?! こんな受け答えでいいのか?! 一瞬、時が止まったようにも思えたが、そうでもないようにも思えた。
「はにかみ屋さん、照れ屋さん、恥ずかしがり屋さんの3名様ですね! こちら、本日の会場のご案内図となっております。ごゆっくり、どうぞ~♪」
……って、入場させてくれるんか~い♪