【掌編小説】ライバルは大谷翔平♪
定年後も、嘱託職員として、勤め続けた。
そんなわしも、気づけば八十八歳!
「じいちゃんな、そろそろ嘱託職員も辞めて、第二の人生を歩もうと思うとるんじゃ」
「へぇ~」
「セカンドキャリアじゃ、セカンドキャリア♪」
「で、何するの?」
「そんなもん決まっとろうがッ!」
「えっ?」
「わしをいくつじゃと思うとるんじゃ?」
「八十~……、八?」
「そう、八十八! つまり米寿じゃよ、米寿!」
「まぁ~、そうだよね」
「『米寿』って、どう書く?」
「えっ? まぁ~、『米』に『寿』」
「そう、つまり、『米国』で『寿』♪ 米国で一花咲かせてやるってことよ♪」
「えっ? じいちゃん、アメリカで結婚ッ! 寿退社ぁ~ッッッ!!!」
「ハッハッハ! まぁ~、活躍いかんによっては、それもあり得るな~♪ ハ~リウ~ッドな女優さんでも口説きましょうかな♪」
「『活躍いかんによっては』、……って、一体何する気だよ?!」
「メジャーリーガーじゃよ!」
「はぁッッッ??? 普通、逆でしょッ!」
「何がじゃ?」
「メジャーリーガーとかプロスポーツ選手だった人が、ケガや体力の限界とかっつって、第二の人生でタレントさんなったり、一般の仕事に就いたりじゃん」
「別に、世間一般の逆を行ったって構わんじゃろ! 八十八のじいちゃんが、メジャーリーガー目指しちゃいかんなんて、国連で決まったわけじゃなかろ? 世間を、あっと言わせたいんじゃよ!」
「アハハ……、契約してくれる球団があればいい~ね~~~、おじい~~~ちゃん♪」
「おまえ、じいちゃんバカにしとるじゃろ! 今に見とれ、じいちゃんな、大谷翔平のライバルになってやるよ!」
「だいたい、じいちゃんさ~、年齢もさることながら、野球経験もないのに、大谷翔平をどうやって投打でねじ伏せんの?」
「そんなもん、じいちゃんな~、大谷翔平よりも随分長く生きとるんじゃ!」
「そ……、そりゃ、まぁ~」
「野球経験なんかなくても、長い人生経験で、ねじ伏せちゃるわい! アッハッハ♪」
「じいちゃん、ポジティブにも程があるよッ!」
「つべこべ言ってねえでッ! サッサと本屋さんで、野球の入門書買うて来てくれいッ!」
「マジかよ!」
「なるべく字の大きいやつな♪」
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