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ネットカフェの休業などで行き場を失ってしまった方々のお話

緊急事態宣言が出て、さまざまなお店に休業要請が出る中で、ネットカフェも多くがお店をお休みにしています。でも、日本には行き場がなくネットカフェで暮らす人々、いわゆる「ネットカフェ難民」がたくさんいます。東京都ではその数、4000人にも上るとされています。そういう方々は、今どうしているのか……。
そこで、つくろい東京ファンド代表の稲葉剛さんに取材をさせていただき、日刊ゲンダイで記事を書かせてもらいました。

4月11、12日の週末には、TOKYOチャレンジネットがネットカフェから押し出された方々のために緊急でホテルを用意しているということを聞いていたので、私もささやかながら情報発信をしたり、深夜の散歩がてら困っていそうな方がいないかなどを見ていました。
このときには勉強不足でまだよくわかっていなかったのですが、ネットカフェ難民を対象に支援をするTOKYOチャレンジネットには、もともと住宅支援をする条件として「都内に6カ月以上滞在していること」というのがあったそうでした。今回もその条件が適用されたため、ニュースでは「土日の2日間だけホテルに泊まらせてもらったけれど、その後どうしたらいいのか」と答えているネットカフェ難民の姿も写されていました。
たしかに、このような条件がないと、都外からたくさんの方が押し寄せてしまい、人の移動が起こりホテルもすぐにパンパンになるということが懸念されますが、どれだけの方が6カ月以上滞在していたことを証明できたのか……。稲葉さんへの取材では、献血をときどきしていた方が、その献血の記録で証明できたケースもあったとのことでした。

ネットカフェ難民は、冒頭で東京に4000人いると言われていると書きましたが、実はもっといるのではないかと稲葉さんはおっしゃっていました。
それは、女性の数があまり含まれていないのではないかということです。
ネットカフェに住んでいるかどうかというのは、都はこんな感じで調べています。

でも、こういう行政の調査に答えたくても正確に答えられない女性も多いのではということです。同じ女性の立場から考えてみると、防犯も微妙なネットカフェ個室に住んでいることを知られたくないという気持ちはわかります。また、DVや虐待などで逃げ込んで来ている場合も、居場所を誰かに教えることは危険に思えます。中には、こういう場所に逃げ込みながら、風俗などで稼ぎ、自立するお金を貯めようとしている人もいると思います。その場合も行政には知られたくありません。
実際は、もっと多いはずというのも納得です。
そんな方々が、今どのようにして居場所やお金を確保しようとしているのか……。日雇い派遣などで働いていたのが、2〜3月で仕事がなくなり、休業要請前にネットカフェに払うお金がなくなってしまった人も多いとおもいます。

今、居場所を失ったネットカフェ難民の安全を確保するために、さまざまな団体が活動されています。もちろん稲葉さんのつくろい東京ファンドもそうですし、女性なら仁藤夢乃さんのColaboが頑張っています。
私たちにできることは、こうした団体に支援をして、ひとりでも多くの方の人権と命を守ることです。
複数の団体がまとまって寄付を受け付け、その基金から各団体の実績に応じて困っている方1人あたり3000円を拠出するという「東京アンブレラ基金」という取り組みがあります。ぜひご覧ください。

また、私が日刊ゲンダイの記事で最も重要だと思ったのは、最後の稲葉さんの言葉のこの部分です。

「日本では、『真に困っている人のみを救う』という選別主義で社会福祉が行われています。今回、諸外国と比べて日本の現金給付が遅れているのもこのせいです。たとえば生活保護に対して、日本ではズルしている人がいないかと目を光らせ、厳しい審査を役所に求めて来ました。こういう空気が、いざ多くの人が困ったときに、支援が受けられない人が後を絶たないという結果を生み出しています」

今、政府や自治体がさまざまな助成金、支援金を用意していますが、それらが出てくるたびに多くの人が「あんな人たちにも配らなきゃいけないのか」「ああいう人はもらえて、自分たちはもらえない。不公平」と不満をもらし、その不満の矛先を支援されるべき人たちに向けて、冷たい言葉、傷つける言葉を無遠慮に投げつけています。
一律10万円ならまだしも、細かい条件をクリアしてもらえた人が「もらえてよかった」といえる空気でもなくなってきてしまっています。自分はズルいのではないか、他の人に悪いのではないか、そんなふうに思ってしまいます。
「大して税金を払っていないくせに」
こんなふうに、今では「年収の低い人=救われる価値のない人」というレッテルまで貼られつつあります。
これが、私たちが望んでいた社会だったでしょうか。
いつ誰が窮地に陥るかわからないこの状況の中で、足の引っ張り合いを続け、弱者を踏みつけにし、次は自分も踏みつけにされるのではないかと困ったときに声を挙げづらくなっていく。
こういう社会を、私たちは「住み心地の良い社会」と胸を張って言いながら生きていくのでしょうか。

混乱のさなか、国や自治体がまだまだ手の回らない部分、想像力の追いつかないところで、さまざまな団体が必死で活動をしています。何もできない私たちが、本当はどんな社会ならみんなで幸せに暮らせるのかを考えながら言動を変えていくことが、こうした団体の活動をしやすくするのではないかなと、思っています。

支援団体のみなさんにおかれましては、みなさんご自身のお体も大切に、気を付けてご活動をお願いいたします。本当に毎日毎日、ありがとうございます。

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大西桃子(ライター・無料塾代表)
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