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私たちはまだ恋をする準備が出来ていない #31 Jun Side

アラサー・アラフォーが恋をしたくなる小説。
あらすじ:さとみ32歳、琉生25歳。内緒で社内恋愛中。それを知らずにさとみを追っていた潤がついに二人の関係に気づいてしまった。今回の主役は、潤です。
※毎回1話完結なのでどこからでもお楽しみいただけます

結局、あの後、珍しく俺は数日落ち込んだ。

さとみさんと琉生さんが付き合ってる、っていうことを知ったことより、それに気づいていなかった自分に。

同棲を始めたという二人の言動、斎藤部長の態度。さとみさんにアプローチしてた琉生さんが、一時期を境にめっきり総務に行かなくなったという噂。

はっきりどちらかに言われた訳じゃないけど、全部つじつまが合う。

だから琉生さんにウザがられてたのか、俺。いや、まあ、それだけじゃないだろうけど(それは自分でもわかってる)。

で、だ。これからどうするか。琉生さんは好きな先輩だけど、恋で遠慮するようなキャラじゃないわけだけど。

さとみさんを諦めて、例えば由衣さんに“行く”とか。

「うーん、でもやっぱ、さとみさんかなあああ」

そう叫んで思いっきり伸びをしたら、頭をばこんと叩かれた。

「うっせーよ、お前」

「あ、サーセン」

由衣さんに怒鳴られた。

「っていうか、なんでデザイン部でしかも私の横で昼飯食べてんの、あんた」

由衣さんが2個目のコンビニのおにぎりのパッケージを開けながら、俺につっかかる。

そう、今日は外出の案件がないので、由衣さんの部署で昼食をとることにしたのだ。

「いや、由衣さんに相談があって」

俺は食堂でお湯を入れてきたカップラーメンの蓋を開けながら、由衣さんのほうを向いた。

「え?また?誰かの写真のデータ渡すとか嫌よ」

由衣さんが眉をしかめる。

「あー、そうじゃないです」

俺はなんて説明しようか考えた。

「えっとー、今俺の脳内会議で、恋愛対象を引き続きさとみさんにするか、由衣さんにするか考えてて」

「はあ・・・」

「やっぱりさとみさんにすることにしました」

「・・・ほんとにあんた、失礼な奴だな。じゃあ、私のくだり、要らないでしょ」

もう一発、頭を叩かれた。そんなに叩かなくても・・・。

「で、ですよ、由衣さん」

俺は改まって由衣さんに聞きたいことがあったので、声を潜めた。

「由衣さんってまだ琉生さんの事好きですか?」

すると案の定、由衣さんは顔を真っ赤にして否定した。

「す、好きってなによ。あいつとは別に付き合ってもいないし」

「え?そうなんですか?俺の社内情報網だと3ヶ月くらいは確実に付き合ってたっていう話が・・・」

「だあああああっ。誰がそんなことを・・・!」

「あくまでも噂ですけど。入社後同期の飲み会の翌日、ラブホから出てきた二人を営業の先輩が見てるとか見てないとか」

「ないないない、絶対ない!」

明らかになんかあったでしょ、それ。わかりやすい態度で由衣さんが否定するがもちろん俺は信じてない。

「由衣さんがどうこうってわけじゃないんですよ。琉生さん、入社1年目の時いろんな女の人と噂になってますよね」

「らしいね。だってアイツ、顔もいいし、同期にも年上にもモテてたもん」

由衣さんが独り言のようにつぶやく。

「私だってつきあって“もらってた”って感じだし・・・」

そこまで言って由衣さんがハッと口に手を当てた。

「言いましたね、由衣さん・・・」

ふふふ、と俺は笑った。苦虫をかみつぶしたような顔で由衣さんが俺を睨んだ。

「でもそれって、琉生さんから口止めされてるんですよね?それってなんでなんですかね」

俺は由衣さんに質問をした。

「今の女に知られたくないんじゃないの」

由衣さんは吐き捨てるように言う。よっぽどトラウマになってるな、これ。

「今の女って誰でしょう」

俺は質問を続けた。

「知らないわよ、それは本当に」

本当に知らなそうなそぶりだった。

由衣さんは不機嫌そうにおにぎりにかぶりついた。俺は思っていたことを由衣さんに言う。

「会社の人もしくは関連会社の人じゃなかったら、別に社内で何言われてもいいじゃないですか」

「・・・・・・」

さすがの由衣さんも、俺が言わんとしていることに気づいたようだった。

「由衣さんが琉生さんとヨリを戻せるように、俺と組みません?」

俺はにやりと笑った。

「由衣さんはまだ好きなんですよね?琉生さんのこと」

俺の問いかけに、由衣さんはふくれっ面で頷いた。


*** 次回更新は2月15日(月)15時ごろの予定です ***

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