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私たちはまだ恋をする準備が出来ていない #32 Satomi side

アラサー・アラフォーが恋をしたくなる小説。
あらすじ:さとみ32歳、琉生25歳。社内には内緒で同棲開始。それを知らない琉生の後輩、志田潤にキスされそうになったのを全力で拒否。
その続きのお話しです。
※毎回1話完結のため、どこから読んでもお楽しみいただけます。伏線などに気づきたい方、登場人物を把握したい方は1話目からからどうぞ!

あれから半月ほど、志田くんとは会わなかった。

一時期は毎朝会っていたのに、やっぱり私の出勤時間に合わせてたんだろうな。

ほっとするような、どこか寂しいような気持ちになる。

・・・寂しい?

朝、会社が近づくたびに、今日は会えるかな、と思っている自分に気が付いた。会ってどうするんだろう。何ていうの?

何にもなかったように、普通に喋れるわけがない。

ただ・・・避けられてるのかと思うと、ちょっと苦しくなった。

「おはようございます」

「おお、さとみちゃん、おはよ」

いつものようにヨシダさんは私より早く出勤していた。

私は、カバンから用意していたチョコレートを差し出す。

「これ。一日遅れちゃいましたけど、いつもお世話になってるので」

今年のバレンタインデーは日曜日なので迷ったが、ヨシダさんには日ごろの感謝を込めて、渡しておきたかったのだ。本当は金曜日に渡すつもりだったが、うっかりしていた。

「毎年、ありがとね」

ヨシダさんがにっこりした。琉生はヨシダさんが苦手なようだけど、私はじぶんのおじいちゃんのようなかんじで、好きだ。

「今年は日曜日だったもんね、バレンタイン。いい日だった?」

「・・・ええ、まあ」

私はどう答えるか考えつつ、曖昧にした。

「ワンコくん、最近来ないね」

ヨシダさんが新聞をめくりながら言った。

「志田くんは彼氏じゃないですよ」

私は苦笑する。

「ああ、そうなの?てっきりバレンタインで付き合うのかと思った」

ヨシダさんは、残念、という感じのリアクションで再び新聞に目を落とした。

「ちゃんと別に彼氏、いますから」

それにバレンタインで付き合うことになったら私が告白する形になってしまう。それは・・・ない。

だけど、この前のことがなかったら、義理チョコくらいあげていたかもしれないなあ、とよぎった。

いや、そんな風に餌付けているから気を持たせてしまうんだ。

考えるのはやめよう。

私はパソコンを開くと、いつもの作業に取り掛かった。

「すみません」

ふいに声を掛けられて、顔を上げると、デザイン部の由衣さんがいた。

「はい。何でしょうか」

「次の広報誌の件で相談したいことがあるんですけど、水曜日の夕方お時間いただけませんか?」

「私・・・?」

「はい。今企画で特集ページが過去の企画と被ってるんじゃないかっていう話が部内で出ていて、客観的に見られる人に見てもらったらいいんじゃないかって言われて、佐倉さんの名前が挙がったんです」

「そう・・・」

私はヨシダさんのほうをちらっと見た。行っておいで、というアイコンタクトがあったので、行くことにした。

***

「という流れでデザイン部の人と話すことになった」

私は夕飯を温め直しながら、今日あったことを琉生に話した。

今日も琉生が返ってきたのは23時近く。最近、毎日帰りは遅くて、朝は早い。

「ふーん。そう。でもそんなの、総務の人と話す必要あんのかな」

琉生がごはんを口に運びながら、言った。

「そうだよね、私もそう思った。広報誌の企画なら、バックナンバーみたら分かるだろうし、私なんかより営業部の人のほうがいいんじゃないかって」

琉生が難しい顔をして、言った。

「なんかあいつが変なこと言ってきても、無視していいからな」

「変なことって?」

「えっとぉ・・・なんか・・・俺のこととか」

「あ、ああ。うん」

私たちの関係ってことか。私も察した。由衣さんと琉生のことは、以前別な女性陣が噂していたのも知っている。琉生は頑なに否定するので、信じてはいるが。

彼女になんらか琉生への気持ちがあるのかもしれない、という可能性は捨てきれない。

「考えすぎかもしれないしな。普通に仕事の話だけかもしれないし」

「そうだね。ありがと。水曜日、話してくる」

私は琉生の前に淹れたてのお茶を置いた。


*** 次回は2月17日(水)15時頃更新予定です ***

雨宮から(あとがきに代えて):仕事のスケジュールの都合であんまり文字量が書けませんでした。さとみの回は比較的書きやすいので好きです。

たださとみと自分(雨宮)の性格は全然違うので、さとみにイライラすることはありますね(おい作者w)

私の性格や考え方は、潤や由衣にモロ出てるので、この二人は書きやすいです。※雨宮は潤のようなかわいらしいワンコではなく飼い主の手を食いちぎるような狂犬です

ただ話の展開が、下手すると潤がストーカーみたいになっちゃいそうなので、かわいいワンコくんのままいさせるにはどうしたらいいかなあと、思案中。もともとは1Pモノの漫画を書いていたので、そこで使ったエピソードもそろそろ出したいと思っています。


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