リノベーションをした話 その1
器となる中古マンションが無事購入できた私たちは、ついにリノベのターンに入った。
不動産担当のお姉さんは「ここから、とても楽しくなりますからね!」とにこやかに言う。
が、すでにその時期から夫婦揃って仕事がパッツンパッツンになってしまい、「や、やべぇ…」となっていたのだった。
ヘッダー写真:リノベ前の購入時の部屋で寝転ぶ夫
スケジュールの選択
リノベを開始する前に、施工会社から2つの選択肢が与えられた。
1つは「設計時間無制限(1年だったか?)」、もう1つは「設計時間3ヶ月」だ。もちろん前者の方が設計費用がかかる。
どちらも、打ち合わせ回数自体には制限はなかった。
当時住んでいた賃貸マンションは、更新月が間近に迫っていたため、さすがにそこまでには間に合わないということで、私たち的には特に時間制限がない。
夫は「ゆっくり決められる無制限の方にしたら?」と言ってくれたけど、自分の性格を考えて「3ヶ月制限」の方に決めた。
私は仕事関連の書籍を何冊か出しているのだが、執筆中に、書き終わっている章の原稿をうっかり見返してしまうと、全部丸っと書き換えたくなってしまうのだ(実際何度か書き換えた)。
締め切りがなければ、永遠に書き換えていた気がする。
もう1つ。
買い物に行った際、最初に気に入った物が見つかっても「もしかしたらこの後でもっといい物があるかも…」とその場で買わず、1日歩き回ってしまう。
しかし最終的に、最初に見た物を買いに戻ることになる。
たいていそういう物が、お気に入りになったりするのだ。
逆にうだうだ長く考えて、よくわからなくなってしまい、もうじゃあ時間ないしこれで!と買った物は、大体「やっぱあっちにした方がよかった…」となる。
そんなわけで、3ヶ月という制限時間の中でスパスパっと決めて、終わったら振り返らない!という方針にした。じゃないと終わらない。
無制限の方にしてたら、これを書いている今も、まだ決まっていなかっただろう。そして住み始めてからの後悔も多くなっていた気がする。
設計期間は死ぬほど忙しい3ヶ月だったけど、その選択は間違ってなかったなー。
要件定義 その1: 準備
初回打ち合わせの前に、施工会社さんの事例集の中から2人の好みや、リノベでやりたいこと、やりたくないこと、所有家具などをリストアップした
(一部抜粋したものが下記)
理想の間取り&収納
・キッチン・ダイニング・リビングは一体型
・仕事部屋は室内窓付きの壁でリビングと仕切りたい
・寝室はベッドと犬用ケージだけでOK
・玄関に・土間(犬用カート・キャンプ道具がしまえるくらい)
・ウォークインクローゼット
・キッチンにパントリー
・アイランドキッチン
・壁一面(低め)の収納
やりたくないこと
・スケルトン
・見せる収納
・地震が起こった時に危険な家具や食器の配置
・室内窓も、簡単に割れそうなガラスはつけたくない
・手入れに手間がかかる素材は避けたい
やりたいこと・こだわり
・土間〜玄関の中に姿見(壁付け)
・ミーレの食洗機&リンナイのガスコンロ&ガスオーブンを入れたい
・回遊動線で最適な形にしたい
・リビング・ダイニング・仕事部屋は床暖房(できればキッチンも)
・トイレはタンクレス&トイレ内手洗い
・犬の足に負担がかかりづらいフローリング
・掃除しやすい配置(ルンバの動線考慮)
・収納も使う場所や出す頻度を考えて最適化したい
・風通し
・冬はなるべくエアコンを使わないような暖房効率
・コンセントの位置は大事
・壁つきのデスク(高さは要検討)
・各タオルかけはフック
おわかりいただけるだろうか・・・
見た目系の希望は一切なく、完全に機能・実用・効率性重視であることを・・・
要件定義 その2: 必須要件
夫も私もエンジニアという職業柄、何事においても効率性や機能性を重視しがちだと思う。以前書いた旅の記事もそんな感じだ。
私の中では見た目のオシャレさよりも、「広くて行き来しやすいキッチン」や、「生活動線に基づく収納」が重要だった。
当時住んでいた家は、WICもキッチンも完全な行き止まり空間になっており、2人で同じ場所に用がある時の狭さと、行き来のしづらさが、かなり不満だった。そういった細かいストレスをできるだけ解決したかったので、見た目よりも機能性重視のリストができたわけである。
そんなわけで、前の記事で紹介した雑誌や、下記のリノベ漫画(おもしろいよ)などで知った単語だが「回遊動線重視の間取り」が我が家のリノベの必須要件となった。
3ヶ月後、できあがった間取りがこちら。
ここにくるまでの話は追々書くとして、トイレ、パントリー、ベッドルーム、シューズインクローゼット(以降SIC)をのぞき、全部「どちらからでも入れる」間取りにした。
最初はSICもウォークインクローゼット(以降WIC)と繋げようかと思ったけれど、壁面が少なくなってしまうため、収納スペースが減ってしまう。
用途を考えたらさほどSICからWICにアクセスする必要性はないし、玄関側からすぐ回れるため、その壁は閉じることにした。
ベッドルームは寝るだけなので、回遊性は不要。
風呂前の脱衣所には洗濯機を置くため、WICとつなげることで、洗ったものをしまったり、風呂前に着替えを出したりしやすいように。
こうやって自分たちの生活スタイルにあわせて、どこを通りやすくして、何を優先するか…を明確にした結果、住み始めて2ヶ月半たった今、生活動線にストレスが全くなくなった。
夫も3日に1度くらい「我が家便利っっ!」って叫んでる。
要件定義 その3: 犬の安全確保
我が家には子供はいないが、目に入れても痛くない(痛い)犬が2頭いる。
はい、かわいい
「犬が快適に、安全に過ごせるようなおうち」というのが、もう1つの外せない要件だ。
間取りには関係ないけど、床はペットが滑りにくい床になっている。これはまたそのうち、壁・床編みたいな内容でまとめるつもり。
我が家は犬たちをお留守番させる際、必ずケージに入れている。
色々な意見や考え方はあると思うが、留守中に万が一が起こらないようにそうしている。
前の家では、もし留守中に大きな地震があっても、何も倒れたり落ちてきたりしないリビングの一角に、ケージを設置していた。↓
リノベをするにあたり、一番最初に決めていたのがケージの場所だ。
我が家の犬たちは、私たちが寝る時はベッドルームで寝るし、仕事している時はデスクの近くでくつろいでいる。
そのため、前の家ではベッドルームにクレートを2つ置いていて、そこが夜の寝床だったし、リビングやワークスペースにも犬ベッドがあった。
2頭しかいないのに、ベッドだけで6個くらいあった…
つまり、リビングにケージがあっても、お留守番の時かルンバが走ってる時くらいしかそこにいないのだ(ルンバはケージ内まで来ないと知ってる)
そんなわけで、ベッドルームにケージを置ければいいのだよ…というのは常々思っていた。
設計打ち合わせのわりと初期段階で、こういうことできますか?と確認し、実際にできたのがこちら!
ベッドルーム
そして、今、こうなっている。
もともと使っていたスカンジナビアンペットケージは、パーツがいくつかに分かれていて、組み合わせで形を変えたり、パーツを買えば拡張もできる。
今まではこれを長方形に組み合わせ自立させていたが、壁に取り付けられるパーツがあるので、前面だけにこれを取り付けることにした。
施行中に一度、使用するパーツを持っていき、現場監督の方達ときっちりサイズを計算した。そして引っ越し後に、自分たちで取り付けて完成。
上部は作り付けの棚付きクローゼットなので、地震があっても安心安全。
下に敷いてあるのは、IKEAの撥水性のあるキッチンマット。ジャストサイズで、水がちょっとこぼれても問題なし。
トイレシートは一応置いてあるけど、滅多に使わない。
要件定義 その4:犬も人も物も安全に過ごせる家
10年前の大震災時、一人暮らしで家で仕事していた私は、必死でパソコンのモニターとテレビを押さえていた。
東京都は震度5くらいだったと思う。押さえていなかったら、確実にどちらも倒れていた。
私は身長が低いというのもあるが、元々家具が倒れることに恐怖心があったので、今までも背の高い家具は買っていなかった。
とはいえ賃貸住宅の収納では色々足りないため、「自分の身長(150cm)を超えない高さの家具」というルールで、食器棚やタンスなどは持っていた。
今回リノベするにあたり「できるだけ家具類は備え付けにしたい」という願望があった。
そう相談したところ「備え付けは高くなりますよ」と言われ、むむ…となったが、サイズにあった家具を探して買う手間、既存家具がきっちり合わない可能性などを考慮し、基本家具は備え付けにした。
その際、オープンの棚は飾り程度のものしか作らなかった。
「見せる収納」という言葉があるが、私は「しまっちゃう収納」派だ。
おしゃれに見せる自信もなければ、地震の際に落ちるのを避けたい。
パントリー内は何かあってもその中で物が落ちるので、実用性を優先してオープンの棚にした。しかし、キッチン&ダイニング周りは全てひきだしと開き戸に(↑の回遊性の話の時の写真参照)
これで何かあっても、大事な食器や床などの被害や後片付けは少なく済むはずだ。
テレビも壁付にすると決めていた。壁付けにすれば、地震が来ても気にしなくて済む。テレビ台も壁付けにして、床から浮かせている。
パソコンモニターもすべて、アームで取り付けた。
このあたりの間取りに関係のない細かいこだわりは、今後書いていく予定。
間取りを決める時はすでに、この辺りは決まっていた。
ワークスペースの室内窓は安全ではないではないか!!と思われるかもしれない。私も思った。
いちおう、窓は飛散防止のガラスを使ってる。ここは安全基準からちょっとだけ外させてもらった。
だって、室内窓つけたかったんだもーん。
見た目だけでなく、他の理由もあるので、それもまたいつか。
要件定義まとめ
注文住宅だろうがリノベだろうが、全ての要望を完全完璧に叶えるのは難しい。
特にリノベの場合は、大きさや形、壊せない柱や梁など、大枠に制限のある箱の中で、いかに自分たちの希望を組み合わせていくか…となる。
何を優先し、希望が相反するものは妥協点を見つけ、こだわりすぎず、柔軟に考えるのが大事だと思う。
ネットにはたくさんおしゃれなリノベ事例があって、こんな家に住みたーい!って思うことも多いが、「よそはよそ!!うちはうち!!」の精神が必要だ。
こうして、スケジュールと要件定義をこなし、デザインと素材決めのターンに進むのであった。
次回予告
もうちょっと間取りの話を書きたいけど、止まらんと思うので、各エリアの内容を間取りの話も交えつつ、進めようかなと思っている。
それか壁紙や床の素材系か。
補足
これまで書いたリノベ記事を自分で読み返して、なんか私ひとりでリノベしたみたい…と思うくらい、夫の存在感が薄い文章になっていた(笑)
夫は基本的に「えりの好きなようにしていいよ!」という立ち位置だった。
デザイナーさんとのミーティング時は、夫が議事録係をやっていたほど、私に任せてくれていた。
別に無関心とかではなく、私たち夫婦の場合、普段から「得意な方が得意なことを、やりたい方がやりたいことをやればいい」というスタンスで生活している。旅の計画を考えるのも、住居の使い勝手を考えるのも、私の方が得意だし好きだったというだけだ。
2人ともやりたくないことは、たいてい夫がやってくれてる。それは全体的に見て私の方がやってることが多いからなのだけど、そういう気持ちで動いてくれるのは本当にありがたい。
というわけで、今後の記事もほぼ私目線での文章にはなるけれど、ショールームをまわった時も、何かを決定するときも、ちゃんと夫も一緒にいたので、
「男性ってそういうの無関心よね!」とか
「嫁が全部勝手に決めたんだな!」とか、
そんな風に思わないでいただけると幸いである。