とにかく心惹かれるアマビエ ~ その姿を読み解く
2020年になってから最大の収穫は、アマビエの存在を知れたことだ。
「わたしの姿を書き写した者は息災である」と告げる怪異。
豊作と疫病の流行を予知する、海からの異形の使者だ。
いま最も有名な姿は、冒頭に使わせてもらったイラスト屋さんもモチーフとしている長髪バージョンのアマビエだ。
もと絵はこちらになる。
レポートする文字の達筆さと、姿を描写した筆致の単調さが、異次元のコントラストを為すという、そういった意味でも第一級の貴重な資料だ。
また、弘化三年は1846年とのことなので、これが描かれたのは174年前。
四月中旬と有るので、季節はちょうど今頃の、春の海だ。
かつて蛭子能収氏がよく書いていた悪夢マンガの一コマのようでもあるが、浅瀬を表す波の描写などは秀逸だと思う。ふつう波を、こうは描かない。
そしてアマビエ本体は、見れば見るほど謎である。
アマビエの特徴を、言葉で描写してみよう。
・つま先にかかるほどの、真ん中わけの豊かな長髪。
・屈託なく多くを語りそうな嘴状の口吻。
・ダイヤ型の目は、人のように白目があって海獣の目とは違う。
・人なら耳のありそうな位置に、幾何学模様の異物を装着しているようだ。
・あごと首が明確にあり、鎖骨から上半身全体は一枚ずつが大きいうろこ様の外皮に覆われ、長髪の故、腕は存在自体確認できない。
・足は三本あるように見え、足指も各三本書かれており、下半身全体は足先まで黒い毛に覆われているように見える。
・立ち姿は、いくらか後ろに体重をかけているような若干の後傾姿勢。
ほかにも、アマビエを描写した当時の資料はいくつかあるが、それらは言葉で表現するなら「三本足の猿」という風情であり、また別々の場所と時代に描かれたそのどれもが、横向きの立ち姿で描かれているという、不思議な類似がある。
「三本足の猿」達は名をアマビコと書かれている。
従ってアマビエは、アマビコの写し間違えではないかと言われている。
そうした転移するエピソードも含めて、疫病封じの護符たるアマビエは、令和におけるネットの海からの来訪神的な存在として、光芒を放っているように思えてならない。
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