明るいリビングに仲間が増えた
生まれて初めて、植物を衝動買いした。
今まで、物を言わない植物にはあまり関心も無かったし、ものぐさな私はきっと枯らしてしまう気がして、自分には向いていないとばかり思っていた。
でも生活が一変すると、嗜好も変わってくるらしい。良くも悪くもコロナの影響力は測り知れない。
在宅でも追われるほど仕事があるだけ有り難いのは承知している。それでも自作のワークスペースでPC画面かスマホとにらめっこする日々は、体にも気持ちにもじわじわとダメージが積もっていく。
来る日も来る日もずっと同じ部屋の同じ場所で、同じ景色を眺めて過ごす。今日が何曜日なのかもわからない。昨日と一昨日の記憶もごちゃごちゃ。あれ、いつの間にかこんな時間。ああ、もう。の繰り返し。
どうしても彩りが乏しく感じられるようになってしまった。つまらない。
ナチュラルに整えたリビングはお気に入りだけど、毎日過ごしているとだんだん無機質に思えてくる。ここがコンクリ打ちっぱなしとかモノクロ☆スタイリッシュ☆っていうオシャレ部屋じゃなくて本当に良かった。
柔道整復師の夫は、職業柄まだまだ通常営業で毎日出勤していて帰りは夜遅い。一日の大半を自宅で独りで淡々と過ごす日々がもう3週間続いている。あとどのくらい続くのか、誰にもわからないことを考えてしまう。
いい加減、気分転換もマンネリ化してきた。ペットを飼うわけにはいかないけれど、せめて何か癒やされるアイテムを部屋に置きたい。変化を楽しめて飽きないやつ。でもゲームは苦手。眩しい液晶ディスプレイとはもっと距離を置きたい。
というわけで、買い出しの途中でたまたま出会った、手のひらサイズの可愛い植物、シェフレラが突然我が家にやってきた。名前が覚えられなくて都度カンニングしているのは内緒。
葉っぱが手形みたいで可愛い。窓際が似合う。なんていうか、可愛い。
すっかり毎日気になる存在になった。我ながら清々しいほど単純で笑える。もう新しい芽が出てきた。物を言わないから退屈だろうと思っていたけど、数日でちゃんと変化するのがまた楽しくてさらに愛着が湧いていく。そろそろ会話もできるんじゃないか。
世界が止まって時間も止まってしまったようにも思える日々だけど、ちゃんと地球は回って季節も変わっていることを、こんな手のひらサイズの葉っぱが証明してくれている。大げさだけど、尊さまで感じている。
自分の単純さにも関心しつつ、楽しみは自分で見つけていかないと枯れてしまうことをまた自覚した。
シェリー。ちゃんとした名前が覚えられないからそう呼ぶことに今決めた。夫は勝手に「葉っぱ隊長」と呼んでいたのですぐにやめさせるね。
ものぐさな私と、ながく仲良くしてほしい。今は土が乾くのを待っている。はやくお水をあげたい。
今、私の生きる世界の中心はこのリビングなのだ。どうやって心地よく過ごすかが最重要課題になっている。私にとって快適な空間が、シェリーにとっても快適であれば嬉しい。
うまくいえないけど、ここにも確かな閉塞感と不安が存在していた。同じ空間で呼吸をする仲間がいるだけでこんなに空気が変わるなら、まだまだ大丈夫かもしれない。なんて。