少年と山
題名を見てピンときた人もいると思いますが
ヘミングウェイ(1952)の「老人と海」という本を読んだことがありますか?
僕は一回だけ読んだことがあるのですが、その時の感想は
ふぅ~すごい長い話だったなぁ。でも、つまりどういうこと?
大まかな内容としては
漁師の老人が大きなカジキと格闘した末捕まえるが、血の匂いに誘われたサメによってそれが食われてしまう。港に帰った時には骨だけになっており、老人はぼろぼろになりながら眠りにつく。
こんな感じなんだけど(実際はもっと大きなスケールで描写されている)
読んだ直後は、「なんだこれ?」とか「何が言いたかったの?」というのが率直な感想だった。、
実際、一見すると一端の老人の格闘記なんだけど、
この「なにもなさ」というか「老人が一つのことに熱中している」ということが大事だったのではないかと思う。
考えてみると、この本が発行された1952年は朝鮮戦争の真っただ中で、冷戦という世界規模の戦いに巻き込まれた罪なき民間人や兵士たちが大勢殺されていた。
そんなコンテクストの中でこの本の本当の意味を見出すとすれば、
自分の生きがいに対して体を傷つけながらも奮闘する一人の老人に
「人のすばらしさ」や「人生の美しさ」を体現させたのではないかと思う。
戦争なんか為政者の欺瞞や欲望によって生み出された俗物で、そんなものがなく、自分の情熱のために一生を費やせることの喜びをヘミングウェイは当時の社会のアンチテーゼとして流布させたのだと思う。
多くの人が自分の社会を生きられる現代は当時よりよっぽど幸せで、その幸せを享受している僕たちは過去に恥じぬように生きなければならないと思う。