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恋愛取扱説明書

loveとlikeの違いって何だろう、明確な境界線はどこだろう。どうして愛情はあるのに好情は無いんだろう。誰も彼もが誰かを愛している訳ではないけれど、広義で言う好きな人は大抵の人にはいるはずだ。そこに抱く感情に名前はないのか。好意より愛情の方がおもんばかられているのは何故だろう。

それは愛という感情の塊を持つことが難しいからである、というふうに私は思う。

大抵の人間は生きていればどんな形であれ恋愛と向き合う時が来る。それは種の存続を本能に持つ生き物として生まれてきた以上どうしようもない。幼稚園で恋愛感情を自覚する子もいれば、大学生、あるいは社会人になって初めて人を好きになる人もいる。恋愛という概念が人生に登場する時期は人によってバラバラである。けれど、それに総じて言えることは、誰からも教わらなくても、人は勝手に人を好きになるということだ。

だから学校で恋の勉強は習わない。義務教育ではないのである。

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動物は羽の美しさや身体の大きさ、喧嘩の強さでパートナーを決めるけど、人間はそうやって決めるには進化しすぎてしまった、だから恋という精神疾患を患うのだと、どこかの精神科医が言っていたのを思いした。もちろん、モデルや俳優のように優れた身体的特徴で大勢の人間から'モテる'存在は一定としているけれど、その人が行為を寄せてくれる人全員に対して一番のパートナーになることが出来るかと言ったら決してそういうわけではない。

縄張りを守れて食料が獲得さえ出来れば、子供の面倒が看れて雄の不在時を支える事が出来れば、それだけで番の一つとして十分である時代は過ぎてしまった。現代を生きる人間として求められる条件は、収入、性格、趣味、頭の良さ、出身、仕事、その他諸々思いつくが、例を挙げればきりが無い。

それに今や地球の人口は70億人を超えてしまっている。この世に生を授かった時点で所謂「運命の人」が一人決まっているとして、世界の中から将来をその人を見つけることは到底不可能に近い。答えは単純、私達の生きる世界は少女マンガや恋愛ドラマではないから。そしてみんなそれをわかっている。割り切っている。というか経験から割り切らざるをえない。そしてある程度の妥協が必要である事を理解している。

だから、いい年して「私(俺)は将来運命の人と結婚するんだ!」なんて言っている人は残念ながら冷やかしの目で見られてしまう。人は過去に自分が諦めたことを直視したくない生き物だから。

だからこそ自分にとっての一番というのは定義として難しい。この人でいいのか、自分にはもっと合った人がこの世にはいるのではないか。相手にももっとふさわしいパートナーが探せば見つかるのではないか。そういう、絶対的に答えはyesである、けれど同時に実現ほぼ不可能な質問について人は堂々巡りをせざるを得ない。好きという直感から、愛という意識的な感情に多くの人が踏み出せないのはその為である。前者は受け身の状態異常で、後者は積極的な決断なのだ。そしてそれは難しい。だから私達は、愛を囁く人に魅力を感じるし、傍から愛を見て取れる夫婦という形に羨ましいと憧れを感じる。

けれど、そうではない、そうではないのかもしれない、そのことに私達は気づかなければいけない。

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「あの花は、どこにでもある普通の花だったんだ」

これは『星の王子さま』に登場する一節である。バラの一本しか存在しない星から地球にきた王子様はたくさんのバラをみてそう言った。だけれど、出合ったキツネから後にこう諭される。「君がバラのために使った時間が長ければ長いほど、バラは君にとって大切な存在になるんだ」そしてそのことに気づいた王子は、最後には「地球の人間たちって、同じ庭に、何千本もバラを育ててるけど、それでも自分が探しているものを見つけることができない。たった一輪のバラを大切にすれば、探しているものが見つかるかもしれないのにね。」こう言うのだ。

恐らく、いや確実に、世界中を探せば自分に合う人なんて沢山いるだろう。相手にふさわしい人だって星の数ほどいる。けれど、それでもその人と一緒にいるべきである理由は、偏に出合った事がすべてなのだ。沢山のバラがあることを知りながら、それでも一本のバラを地道に水をやって世話をして特別な存在にしたように、上と下を見れば際限の無い人たちの中から、その人じゃないと駄目な理由を時間をかけて二人で作れたことがすべてなのだ。

運命の人には二人目がいる。そして、その人は一人目と違って見つける手間がいらない、代わりに時間を費やせば誰の前にも表れる。私が思うに、結局人は一人目と二人目のどちらを選んでも幸せになれる。けれど、片方の存在を見逃して側にいる幸せを掴み損ねてはいけない。

そのことだけは忘れないようにするべきである。

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神原 百春
カ、カフェに行かせてください、、(^-^)