「明日」の「あ」の字の時間帯
1日の中でどの時間が好きですか。その理由は何ですか。
僕は、タイトルにもある通り、「明日」の「あ」の字に覆い被さるような時間帯がとても好きです。
個人的には夜中の3時半あたりかなと思います。夜に時計をふと見たときに3時だと、「うん、まだいけるな」と思うし、でもそれが4時だと「うわっ、もう4時か」ってなるじゃないですか。
だからあいだをとって3時半。
朝型人間の人にはちっとも共感してもらえないと思うんですけど、夜型人間の皆さんはこの時間帯何してます?僕のお話を挟ませてもらうと、本を読んで考え事をしたり、自分の気になる分野の勉強したりしてます。勿論そんな出来た人間ではありませんので、お酒を飲みに行ったりぐーたらすることもしばしばあります。
<布団離れの問題児>
僕は、深夜3時半まではいかなくても、「夜中」という時間帯は人間にとって何か重要な意味を持つんじゃないかと昔から思ったりしています。(ここでの夜中は独断と感覚で午後11時~午前4時とする、異論は認める)
ほら、小さい頃って夜更かししようと思っても出来なかったじゃないですか。まず周りの人間に寝なさいと怒られるし、たとえその関門を突破したとしても体力的に起きとけない。気づいたら寝ちゃってた、みたいな。
僕そのころ大人がめちゃくちゃ羨ましかったんです。小学校低学年の頃なんて9時にはもう寝てましたから、「夜中」ってなんなん、どんなもんなんやろって、すっごい気になってましたし、でもその反面、未知すぎてちょっと怖いなとか思ったりもしてました。
そんな僕も身体の成長につれて活動時間を増やし夜を侵食し、徹夜なんて所業をいつの間にか出来るようになってしまいました。初めて日付を超えたときと、3時あたりまで起きてたときは何か悪いことしてるんじゃないかという罪悪感と背徳感で不思議な感覚だったのを覚えています。
でもこの年になってみて思うのは、大人になったから夜更かし出来るようになったのも事実だし、それと同時に夜更かしは大人になるための条件だったなってことです。
<1人が加速する時間>
卵が先か鶏が先かみたいな話を突然始めましたけど、ここで言う「大人」は前者が身体的なもの、後者が内面的なものを指します。
夜中って何もなければ1人じゃないですか。
学校も仕事も、用事も、大抵の事は日中に終わる。夜中に何するかを強制してくるものは基本ありません。だから、夜という時間をどう使うかは僕ら一人一人に委ねられているんです。
「夜中」という時間帯に、触れて初めて、住んで初めて、僕らは(内面的に)大人になり始めます。
それは、"寝静まった世界で自分に向き合う時間ができるから"です。
誰にも干渉されない領域を両腕に抱えて、そこで音楽・読書・映画なんかの芸術に触れる人も居れば、人と会う時間を大切にする人も居るし、趣味に没頭する人も居る。勤勉な人は将来の自分のために勉強しているかもしれないし、寝っ転がってスマホをいじっている人もそれはそれは沢山居ることでしょう。
<走る羊を追いかけて>
僕は、そういう時間が人生において何より貴重だし、個人のアイデンティティを形成する上で大きな役割を担っていると思うのです。自分が何者なのか、何になりたいのか、自分が好きなものは何で、自分が好きな人は誰なのか。
いつだって考え事をするのは夜中です。
何もやるべき事が無い夜中に自分からやることこそが自分が本当に好きなことだし、会う人こそが自分の本当に好きな人。やりたかったけど出来なかったこと、会いたかったけど会えなかった人、言いたかったけど言えなかったこと、してほしかったけどしてもらえなかった事だってきっとそう。自分の根幹で後々意味を持つようになる。
そういう、自分と向き合った結果出てきたものの寄せ集めが方向付けをしてくれるおかげで、僕らは大人になれるのです。年齢に比べてこの人は大人だなぁとか、逆に子供っぽいなぁとか、身体にそこが比例しないのも自分と向き合ってきた総量にばらつきがあるからなんじゃないかなと勝手に思っています。
あの時間帯に出合ったものや出会った人、出くわした出来事なんかが今の自分の中で大きな心の支えとなっているなんて人、多いんじゃないでしょうか。
だから夜が好きなんです。いま自分がこうしている瞬間にも、どこかで誰かが大事なターニングポイントに直面しているかもしれない。そう考えただけで幸せになります。
でも、こんだけ高説垂れといてあれですけど、成長につれて起きておける時間が増えると、その代わりにいろいろな選択肢が増えちゃうんですよね。寝ないんじゃなくて区切りを付けるのが難しくなって寝れなくなっちゃうという悩ましさ。
だって、寝ない理由なんていくらでもあるじゃないですか僕ら。
小さい頃、夜更かしできる贅沢に腰掛けていると羨んでいた大人達が、実は一日という単位に自分で区切りを付ける事が難しくて、ただ寝れていないだけだったんだなと気づいたのは、ごく最近のことです。
ここまで長いことお付き合いありがとうございました。どうか皆さん良い夜を。