鹿の目
鹿はゆっくりとこちらに来た。
私は見つめたままかたまったみたいになって、
奴は悠然と前を横切り、一度だけ、立ち止まってこちらを見た。
草食動物特有のあの大きな目。
そして、また悠然と歩いて行った。
毎週木曜日は奈良に行っています。
違う曜日の日もありますが身内事のうちのひとつです。
行き帰りにバスもしくは徒歩で奈良公園を通ります。
最近は頭がすっきりするのもありこのあたりの結構な距離を行き帰りに歩いています。
季節によりますが帰り道に陽が落ちかける様などはいとおかし。
奈良公園と云えば鹿。
もう見慣れているのでなんとも思わへんねんけど、当たり前にいる。
当たり前に歩いている。道路を横切っている。知らない人からしたらびっくりするらしい。
落語&講談で有名な『鹿政談』の世界。
そういや神田伯山がいつぞやのラジオで言っていて笑った。
「鹿せんべい屋の親父と鹿は結託している。
観光客を見かけたらおやじが「おーい、行ってこーい」っつって
鹿は「はーい、わかりましたー。……おなかすいたよぉ、せんべい食べたいなぁぁ」って寄って行ってせがむ」
さまざまな地域からの旅行者、多いんです。
最近、また増えました。
正倉院展の頃など更にエグいことになったりします。
このひとびとが鹿を追っかけるんです撮るんです、そう、撮るんです。集団でスマホを向けて。またはなんかバカでっかいカメラとかで。
いや、撮るなとは言っていない。
ただ、ちょっとかわいそうちゃうか? は思ったりもする。
動物園などでも撮るのだけが目的みたいになっている人がひたすらに撮りまくるんはちょっとどうなん? って思う人間だし、
でも私は専門家じゃないからそれがほんとに動物たちにとってのストレスになっているのかはわからない。
ただ私がもし鹿だったら動物だったらまいにちまいにち四六時中わぁわぁぎゃあぎゃあきゃあきゃあ言われながらなんか光るやつ向けられまくっていたらストレスやんけと思わんこともない。
関係ないけど古い看板とか古い建物とかも四六時中そんなんされたら「わしゃ見世物ちゃうぞ、なんやねん」「蜷川実花気取りの加工とかすなよ? おい、すなよ?!」と思ってるんちゃうかと思ったりする、いや、そもそも生きてないけど喋らへんけど。
今日も追っかけられてた1匹。
道路のあちら側で。
追っかけられてたというか囲まれていたが正しい。
「あー」と思ったけれど、撮る人が悪か悪人かと言われたらそんなこともない訳で、でもなんか「あー」って「うーん」って思ってしまって、もやもやとなった。
ほな、鹿が道路を渡ってこちらに来た。
え。えええ。
ゆっくりゆっくり歩いて来た。
車たちは鹿が道路を渡り切るまで止まっている。
奴らはきゃあきゃあ言うている。
お通りだ。
さあ!
そして、鹿は一度だけ立ち止まって私を見た。
大きな目。
そのまま鹿は県庁の方へと歩いて行った。いや、県庁へは行かんけど。
あいつ、『もののけ姫』に出てきたよね？
いや、村野四郎の詩だよね?
学生時代から仲良しで大好きな方が代表・作をつとめる劇団に「劇団鹿殺し」という集団が居ます。
劇団名はこの詩の鹿に憧れて付けたと聞いています。
全国で暴れています。
◆
以下は、ちょろっとですがいつもの自己紹介 。
と、苦手なりにもSNSあれこれ紹介、連載などなどの紹介!!も。
よろしければお付き合い下さい🍑✨
ご縁がつながったりしたらとても嬉しい。
大阪の物書き、中村桃子と申します。
構成作家/ライター/コラム・エッセイ/大衆芸能（旅芝居（大衆演劇）やストリップ）や大衆文化を追っています。
普段はラジオ番組の構成や資料やCM書きや、各種文章やキャッチコピーやら雑文業やらやってます。
現在、lifeworkたる原稿企画２本を進め中です。
舞台、演劇、古典芸能好き、からの、下町・大衆文化好き。酒場好き。いや、劇場が好き。人間に興味が尽きません。
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現在、関東の出版社・旅と思索社様のウェブマガジン「tabistory」様にて女２人の酒場巡りを連載中。
と、あたらしい連載「Home」。
皆の大事な場所についての話。
2023、復活。先日、新作が出ました🆕
以下は、過去のものから、お気に入りを２つ。
旅芝居・大衆演劇関係では、各種ライティング業。
文、キャッチコピー、映像などの企画・構成、各種文、台本、
役者絡みの代筆から、DVDパッケージのキャッチコピーや文。
あ、小道具の文とかも（笑）やってました。
担当していたDVD付マガジン『演劇の友』は休刊ですが、
アーカイブがYouTubeちゃんねるで公開中
（貴重映像ばかりです。私は今回のアップにはかかわってないけど）
あなたとご縁がありますように。今後ともどうぞよろしくお願いします。
皆、無理せず、どうぞどうぞ、元気でね。
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