パレード
「無事でしたか」
「無事来れました。封鎖とかされてましたけど（笑）」
「でしょ? 朝からっすよ」
「しかしこの日に来るかね、って感じですよねわたし?!」
「確かに（笑）」
「今日しか来れる日なくて。知らなかったんですよ今日って。
昨日テレビのニュースで知った（笑）」
「今日っすよ。まさに今からっす。ちょうど。めっちゃ今からっす（笑）」
阪神優勝パレードの日のヘアサロンでの会話です。
店は大阪・心斎橋にあります。
御堂筋沿いではないんやが、一本逸れただけのところの二階に。
「なんか、ウチの店の下の通りが、スタート地点っていうか、そんなやつらしいんすよ」
「まじですか。まさかの」
「そう、まさかの」
「まじかー」
「そうっす。今からオリックスが先で、その後阪神やから、あの神戸と同時。
だからちょうど店出るくらいの時間がほんま「ちょうど」かもしれんっすわ」
「えー! 困るんやけど!」
大丈夫だった。
ちょうどオリックスが下を通っている間にわたしは髪切ったりなんだったりを終えて、
巻き込まれず無事に次の現場へと行けた。
しかしまあちょうどその日にとは。
で、いろんな面白い話を聞いたり、見たり。
心斎橋駅2番出口あたりやクリスタ長堀は
昼前からユニフォーム姿の人やユニフォーム姿ではないけれど
親子連れもカップルもいっぱいで、
飲食店もお手洗いも行列で、ガードマンもすごい数。
地上にあがる出口は「入口専用」とか「出口専用」と封鎖されたり限定されたり、
パレードを見に来たのではなく
月イチの髪ケアってか
今回月イチをだいぶ遅れて店へ行くわたしもあやうく遅刻というか、
どないして辿り着いたらええんやとちょっと迷うほどだった。
帰りも、いつもコーヒーを飲む店はいっぱいで、
なんとか座れたけれどがやがやMAXですぐに出た。
施術中もパレードの話ばかり。
朝からめっちゃ人が多いこと。
ファミリー連れもお年寄り来るやんなあなこと。
お年寄りとかほど「もう次の優勝は見られないやろうし」とか言いがちで、
そうやんなあ、なこと。
阪神という球団やからこそ「ガチ勢」も「とりあえず盛り上がりたい人」もめっちゃ来るんなあ、なこと。
合わせて万博関連のパレードはいらねー!なこと。
「近いし、ついでに道頓堀飛び込む人とか居そうっすね」
居そう。どうだったかは知らん。
「パレード中にジェット風船などは飛ばさないで下さい、みたいなん貼ってましたよ」
やりかねん。こわ。あれ凶器レベルやで。
近所に屋台とかも出たりしそう、と言うたら、
「コンビニとかはやっぱり店頭で売ったりしてるとこありましたわ。肉まんかチキンとか」
やはり。
その他、阪神とは関係ない店でもユニフォームとかグッズを売っていたとのこと。
御堂筋沿道の店とかカフェ、「2階から座ってみれますよ」とか売りにしてそう、みたいなこと。
なんか花火大会みたいですね。「ほんま。花火大会以上っすね」
花火大会かキムタクの信長まつりかディズニーランドのエレクトリカルパレードかそれ以上か?
「経済効果で言うとえらいことなんでしょうね。クラファンはうまいこといかなかったけれどそれでも」うんうん。
「美容院は、あんま関係ないっすけどね。むしろ、皆この日は避けて予約しはったりしてて」わたし来た（笑）
さらに出たのは、〝推し〟と〝推し愛〟にまつわるエピソードだ。
「なんか、店のお客さんが言ってたんすけど。
推し選手がパレードの時に道のどっち側に来るかわからんやないですか。
絶対撮りたいから友達同士で場所わかれて「担当」し合うらしいっす」
マジでミッキーレベル!
笑いながらも唸ってしまった。
そうやんなあ。切実やんなあ。
お祭り騒ぎの御堂筋で、
ガチ野球ファン、虎党、盛り上がりたいだけ人、
もう後がないから今今日を見ておきたい人、騒ぎたい人、
いろんな人が来すぎる中で、さまざまな人と、仕事として必死なガードマンやスタッフたち。
と話していて、ふと、わたしの頭の中には先日数日間、JR大阪駅桜橋口近くて見た見ていたこりゃまたちょっと異様なムードの雰囲気だったアレが浮かんだ。思い出したのだった。
駅に向かう地下道の壁に女の子たちが群がっている。毎日だ。
この数日というか一週間強ここを行き帰りに通っていたわたしは
最初「何事や?」と立ち止まった。
立ち止まると同時に視線を感じる。何人もの。
女の子のじゃない。群がる女の子たちを監視するガードマンの。
壁にはきれいな男の子が大写しになった巨大ポスター。何枚も。
女の子たちはそのポスターをスマホでばんばん撮ってた。
SnowManの渡辺翔太によるスキンケア化粧品のポスターだと後から知った。
「#ズームしたくなる肌へ」ほえー!
寄って撮ったり、近づいて撮ったり、ポスターの彼と2ショットのようにして身を寄せて撮ったり。
それをガードマンさんたちが仕事として監視している、かなり遅い時間まで。
微笑ましいのと、ちょっと異様なのと。
熱と、愛と、推しへの想いと、仕事で監視する人と。
これも後から知ったが、
ポスターを剥がして持って帰ったり、それを売ったりすることへの見張りであったらしい。
え、あれ、剥がすの?! それ、愛じゃないやん。
いやいや推しとか愛とかじゃなくて、
そういうひとたちに転売してという奴ら輩もいるし、愛があり余ってそういうことをするしかねない人もいるから、と人から聞いた。
愛は深い。愛は重い。愛はきれい。愛は途方もない。
ああ人間とは、人間って。
ちなみにズームしたくなる肌巨大ポスターから徒歩すぐには阪神電車大阪梅田駅がある。
ここには優勝記念ポスターが貼りまくられていた、いや、いる。
これも、老若男女が撮りまくってる、撮りまくっている。
ああ人間とは、人間って。
愛と気持ちと、金と気持ちと、警備と、経済と。
生のパレードは続く、続くのだなあ。
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以下は、自己紹介 。よろしければお付き合い下さい。
構成作家/ライター/コラム・エッセイスト
中村桃子（桃花舞台）と申します。
旅芝居（大衆演劇）や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。
普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、
各種文章やキャッチコピーなど、やっています。
劇場が好き。人間に興味が尽きません。
舞台鑑賞（歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス）と、
学生時代の劇団活動（作・演出/制作/役者）、
本を読むことと書くことで生きてきました。
某劇団の音楽監督、
亡き関西の喜劇作家、
大阪を愛するエッセイストに師事し、
大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリー。
詳しいプロフィールや経歴やご挨拶は以下のBlogのトップページから。
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めっちゃ、どうぞ。
lifeworkたる原稿企画（書籍化）２本を進め中。
その顔見世と筋トレを兼ねての1日1色々note「桃花舞台」を更新中。
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先日、ご縁あって素敵なWebマガジン「Stay Salty」Vol.33の巻頭、
「PEOPLE」にも載せていただきました。
５月1日から東京・湯島の本屋「出発点」で2箱古本屋もやっています。
参加した読書エッセイ集もお店と通販で取り扱い中。
旅と思索社様のWebマガジン「tabistory」では2種類の連載をしています。
酒場話「心はだか、ぴったんこ」（現在19話）と
大事な場所の話「Home」（現在、番外編を入れて4話）です。
noteは「ほぼ1日1エッセイ」、6つのマガジンにわけてまとめています。
旅芝居・大衆演劇関係では各種ライティング業をずっとやってきました。
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担当していたDVD付マガジン『演劇の友』は休刊ですが、
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