ふふふな豆腐屋と豆腐のはなし
近所に美味い豆腐屋があります。
近所というと厳密には違うかもしれないのですが。
チャリをびゃーっと飛ばして買いに行きます。
チャリカゴに豆腐が入っているだけで食べる前からもうしあわせです。
一時期毎日のように買いに行っていました。
けれど今は恥ずかしくなってもうてたまににしています。
何度食べても飽きません。これからもきっと飽きません。ふふふ。
お高くないのです。
毎日のみんなのお豆腐です。
せやけど悪いもん使こてません。
食べたらわかります。
「大豆の味がしっかりする~」
なんて下手なグルメ番組みたいなことは言いたくないのですがそれです。
かといって一昔流行った「男前豆腐」みたいに
「俺!俺やで!」と無駄に主張しまくることもないのです。これ。これがええのです。
冷や奴でも最高。湯豆腐でも最高。
せやから他の料理にして味付けるのは勿体ない。冷や奴か湯豆腐。二択や。
せやけど此処、豆腐が美味い、ということは、勿論、他のものも美味いのです。
厚揚げ。ひろうす(がんもどき)。豆乳。どれも美味くない訳がない。
ちいさな商店街の中の豆腐屋です。
かつては栄えていたそうですが
今はわりにシャッターが多いです。
でも魚屋や肉屋に交じって豆腐屋、しっかり、そして結構手堅くやってはります。
有名とも聞きますがいつ行っても普通~にやったはります。
いつも居てはるのは若い頃めっちゃ綺麗やってんやろうな~みたいな女将さんです。
昭和の朝ドラとかホームドラマに出てほしい感じの派手ではないけれど綺麗な人です。
威勢のええ大将と、もひとりのおっちゃんと、たまにパートのおばちゃんも居てます。
でも私が行く時は基本女将さんです。
ファンなのであまり喋れません。
一度定休日にチャリですれ違った時はお互い照れてなんか笑いながら挨拶したけれども。
大将は豪快です。
「ありがとー」と水槽の中の豆腐が震えるような声で御礼言うてくれます。
豆腐は震えながら笑っているように見えます。にこにこ。うふふ。
そんな大将にも私はもう顔バレしているようです。
一度、「ちょっと待って!おねーさん!」とオマケをくれました。
出来立てのまだあったかい豆腐。まだカタチもほわほわなやつ。
「これな。そのまま食べてな。まだあったかいから。おぼろな。」
これがね、惚れたきっかけもあるかもしれません、此処に。
またちょっと経ってから、またもろた。
「おねーさん!おまけ!こないだもあげたやろ?」覚えられてるやん!
負けへんくらいおっきな声で言いました。「美味しかったーー!」
豆腐も大将も笑ってくれました。うふふ。ふふふ。
商店街もな、豆腐屋もな、豆腐もな、ほわほわで、やわやわで。
せやけど、弱くない、きりっと、凛と、生きてる。
またチャリ乗って買いに行きます。
これからも。
うれしい豆腐を。
ふふふ。
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