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私のヒーロー。さいあくななちゃん。

かなしくて
おんがくをきいていた。

ヘッドホンからこぼれ出すほどの爆音を
ひっきりなしに鳴るギターの音を
切なく儚げなコード進行を

きゃりーぱみゅぱみゅ
大森靖子
戦慄かなの
リーガルリリー
Billie Eilish
melanie martinez
Jazmin Bean

私だけの、可愛いキラキラ
誰にも犯されたくない
乙女心とエッジの効いた可愛いを
耳から注ぎ込んでいると
不思議と呼吸が楽になる


くたばれルッキズム

半泣きで
キャンバスにピンクを叩きつけて

美術室にふたり
先生とわたし。

思春期真っ只中
捻くれた反抗期
メンヘラ
パニック


上手く言葉にできないし
言葉として理解したくない

音だけじゃ表現は抽象的で
もどかしい

全部代弁できるのなんて
絵の世界しかなかった

誰にも犯されたくない気持ち
無性に悲しい
満たされない
愛されたくて
愛したいこころ。
全部全部下手くそで
から回って傷付いて
どこまでも不器用だ


死んじゃいたいなんて言えるほど強くないし
自分のこと大事にしていたいのに
傷付けてばっかりで
どうしたらいいかわかんない

「ママのお腹に帰りたい」
あの子が言っていた暗い言葉と空気
その全部がキラキラして眩しく見えた

私もそう素直に言えるほど
弱くて可愛かったらよかったかな

そう思って子宮を描いた
女の子に生まれて嬉しかった喜び
生理のたびにおかしくなるメンタルと
ルッキズムに首を絞められる憎みと
それら全てに対する愛おしさを込めて

ぐちゃぐちゃに潰れた五臓六腑に
聖少女のセーラー服と
名前の花
ぜんぶ、私のアイデンティティと
叫び続けている少女の代弁だ

あのはげのおじさんがいない日に絵画を黙って持ち帰った。大きなキャンバスをこっそり持ち出すの、怪盗みたいでワクワクした。

制作時間は半年

完成して一言、先生は言った
「貴女を見ててずっと彼女を思い出してた。ふわふわの髪も、山梨県も、ピンク色も、音楽も、いつかのななちゃんってこんな感じだったのかなあって。あなたのアンチテーゼ、あなたにはそれを、忘れないで大人になって欲しい」

そして一冊の本を貸してくれた
『芸術ロック宣言』さいあくななちゃん

一枚一枚に面食らい
彼女の一言一言が
染み入ってきた
彼女の言葉、おんがく
全てを噛み締めるように食べて
彼女の描いた絵もたべた

彼女の全てが、ぎらぎら光っていて
ピンクピンクピンクに殴られるような
絵が好きで好きで仕方ない

言葉にすると
その好きが途端に有形となって
断定されていくようで
すごく苦しい

べたあとこぼれた色水を
真四角の容器に入れているような窮屈さ
それをとてつも無く悲しい事と感じるほど
彼女が、彼女の作品がだいすきだ。


家出をした。
沢山犯されて壊れたいろんなのに
きらきらの絆創膏を貼って
可愛く見せた。

少し心がよくなったのは
音楽をはじめたから
聞くだけじゃ無くて
作り出すことは
呼吸する事に近しかった

ゆっくりときらきらの心を取り戻して、
3ヶ月ぶりに学校へ行った。

久しぶりの美術室。
あの先生は3月に退職したらしい。
ナナちゃんの本ももう置いていなかった。

少し悲しくなって大好きなピンクを眺めた。
私の心全てを代弁し切ったF50の訴えを眺めて
先生の言葉や、あの放課後を思い出していた。

そこに新しくやってきたハゲのおじさんが
こちらへ歩いてきてこういった。
「キミがこれ描いたのか〜 キミ上手いんだから現実に忠実に色を塗りなさいよー。こんな毒々しいピンク、入賞できるわけないよぉ〜メンヘラだメンヘラ(笑)」と、何度も私の前髪を撫でながら笑っていた

「バンドやるのでくる頻度遅くなります」
そう言いにきたつもりだったけど

「今日でやめまーーーーす」と叫んで美術室を走って出て行った

あのはげはずっと嫌いだし
そこでキレた私、まだまだ子供だったなと思う

いまでもおんがくと絵が好きだ。
たまに描きたくて創りたくて
狂ったように集中する時間が
すごくすきだ
いまでもずっとおんがくと絵を
ひっそりと作り続けてる

大好きなぴんく私のさけび
いつかのおんなのこを
救うものになればいいな

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