
時間はかかろうともみんなで取り組むことに意義がある
医療業界にいると、情熱と能力のある方による取り組みで、劇的に患者さんが改善したり、組織としてすばらしい取り組みができたりする事例を時々拝見します。
やはり、早く取り組みを立ち上げるときや切羽詰まった状況の時は、属人的な取り組みをしなければならないことは、すでに皆さんご存知の通りです。
しかし、その最初の一歩を踏み出したメンバーの情熱はいつまで続くのでしょうか。
そのメンバーは永遠にその組織に留まり続けることはできるのでしょうか。
永遠に生きることはできるのでしょうか。
ひとつの組織は数年もすれば、方針が変わったり、メンバーが入れ替わったりして、様変わりしていきます。
組織の周囲を取り巻く環境も、逐一変化していきます。
各個人も、その時々の状況によって行えることは変化していきます。年齢を重ねるごとに、できることが増えると同時に、できないことも出てくるかもしれません。
すべてのことは、変化しています。そこに永遠に止まることはできません。
という前提で、病院や医療における品質の改善や改革を考えてみると、すべての改善や改革を行い続けて、持続的に結果を出し続けるためには、どこかひとつの部署・チームやだれかひとりの情熱や無理に頼り続けることは、得策とは言えないのです。
では、どうするか。
時間がかかってもいい。
最初はうまくいかなくてもいい。
でも「みんなでやる」ということです。
地道な方法ですが、これ以外の方法はありません。持続的に結果を出し続けるための特効薬や必殺技のようなものは存在しないのです。
「みんなでやる」ことの最大のデメリットは、「遅くなり、労力がかかる」ことです。
「みんなでやる」ためには、やろうとしていることを説明して、対話して、対話をもとに修正して、バラバラな意見をすり合わせをして、みんなの承認を得るという作業が発生します。
すり合わせたことをやってもらう、依頼するということも発生します。
任せるのであれば、どこまで任せるのか、どこはフォローに徹するのか、どこはこちらでやるのかという確認も必要になります。
依頼した内容をしっかりやってくれる人もいれば、やることができない人もいます。進捗を確認して、やってもらうように促し、なんとかやり切ってもらうという労力も発生します。
やってもらったことの結果の確認や、分析、その後の反省や修正も、みんなの意見を取りまとめるということも必要になります。
このようにみてみると、「みんなでやる」ことは本当に面倒が増えます。
それでもなぜ持続的に結果を出すためには、「みんなでやる」ことが有効なのか。
それは、「自分と同じ方向を向いて、それぞれの意志を持って動いてくれる人たちが増える」からです。
たんぽぽが自分の種を綿毛で飛ばして、その周辺一帯にたんぽぽがたくさん咲き、またそのたんぽぽからたくさんの綿毛が飛ぶ。
そんなように、「自分と共感してくれる人、自分の意志で自律的に動いてくれる人」を増やしていくと、その人からまた、「共感してくれる人、自分の意志で自律的に動いてくれる人」がねずみ算的に増えていくのです。
それぞれのみんなの動きがたとえ、ほんのわずかであったとしても、自分一人で起こせる動きとは、比べ物にならない大きさと多様な動きが出ます。
それがやがて当たり前になり、部署やチームが無くなったり、スタッフが入れ替わったとしても動き続け、結果が出続けていくはずです。
自分がいなくなったとしても、継続して結果が出るように各自の持ち場で粛々と「みんなでやる」を実践していきましょう。