
Photo by
scoop_kawamura
《短編小説レビュー》「鉄道員(ぽっぽや)」浅田次郎
今日のお話は映画じゃなくて小説のほうね。
この本は、表題作になっている「鉄道員ぽっぽや」を含め、8つのお話が描かれている浅田次郎の短編集なんです。どれもこれもせつなくて泣けちゃうお話ばかり。
「鉄道員(ぽっぽや)」って、高倉健さんが主演した映画で大ヒットした作品だったから、名前は知っていたけれど、映画も見ていないし、原作が短編だったことも知りませんでした。
それに、この本って直木賞もとっているらしいの。
あらためて読んでみたんだけど、昭和の匂いがしてジワっと沁みてくるんですよね。
なかでも、「うらぼんえ」が好きかなあ、家庭環境に恵まれなかったっていうだけで、なんにも悪くないのに、みじめな気もちになってしょげこむちえ子を、死んだはずのじいちゃんが……。あっ。
[角筈(つのはず)」とか「ラブレター」も、切なくて報われてほしいと泣かずにはいられなかったのよね。
生きていくのって結構つらいこともあって、それでもそっと支えてくれる人がいるから前にすすもうって立ち上がることができたりするんですよね。
現実と空想。ファンタジーの要素があって、心地よいあと味が感じられるお話だったな。たった一人でもそばにいてくれる人がいることで心強くいられ、深い愛情に包まれていることを確信できたら救われるんだって。
たぶん、泣きたいタイミングと重なったのかもしれないけれど、そっと静かに「大丈夫だよ」って励まされた作品でした。