夢二ワールドに迷い込む:夢二郷土美術館
「実は行ったことなかった場所」が割とある。今回行った夢二郷土美術館がそう。
ここ数日、外に出る機会が全然なかった。中ですべきことは沢山あるだけどね。だけど篭ってばかりだからやる気も起きない。どこかに遊びに行こうか。どこに?
そうだ、夢二郷土美術館に行ってみよう。名前は聞いたことがあったし、インスタを見てその耽美な雰囲気がいいなと思っていたのだ。
夢二郷土美術館は、岡山県岡山市中区にある美術館。その名の通り、大正ロマンの体現者・竹久夢二の作品をコレクション及び展示している。館名に「郷土」とついていることからお分かりだろうか、夢二は岡山出身なのだ。
到着してまず、その外観の可愛さに驚いた。いきなり夢二の世界観というか、大正ロマンに迷い込ませてくる感じ。
入り口の看板。こちらの猫ちゃんはなにもの?後に明らかに。
夢二のこと、ぼんやりとしか知らなかったので、まずは初めの展示室でその生涯についてのビデオを鑑賞。とても有名な方なのに、幼少期を辿る過程で知っている地名が沢山出てきて(私は岡山在住)、何だか親近感が湧く。
ビデオを見終わって、早速展示室の中へ。四方の壁に所狭しと並べられた夢二作品。社会の教科書にも載っているあの大正ロマン全開な作品たちを、心ゆくまで目に焼き付けることができる。
展示を見ている中で、特に好きだなあと思った作品がこちら↓
《『セノオ楽譜』No.100 原画》…ほぼ赤と黒だけで、凝った服の模様を表現しているのに、シックになりすぎずリズミカルで楽しい。フォントもザ・大正って感じで風情がある。
《SPRING 雑誌『少女画報』第13巻第1号》…一周回って、今のアニメでありそうな絵柄!っていうかこういうのどかで耽美なアニメ、見たい。
《月刊夢二エハガキ 第21集「四季の花」》…黒ペンに水彩一色なのに、こんなに華が出るのはやっぱり夢二の魔法…?
《桜さく国 紅桃の巻》…シュルレアリスム的な…地中の蛇がいい味出してる!
《沖野岩三郎著『ユートピア物語』》パキッとした、ロシアの構成主義みのあるパキッとした色味×夢二のしなやかさの融合。
《秋のいこい》…女の、訴えかけてくるような切ない目…ついじっと見つめてしまう。
《星まつ里》…今日見た夢二作品の中でも、トップレベルに艶やか。こんなカラフルな着物着こなせるような、艶やかさを自分自身が持ちたい。
作品を見ながら、夢二の絵は、現代の女の子がインスタとかティックトックでインフルエンサーの投稿を楽しむのに似ているな、と思っていた。大正期・昭和初期の「憧れの女の子」を体現していたのが夢二だったのかも。
しなやかな身体、思わせぶりな表情、可愛い色と柄の着物。描かれるのはある時は優雅な暮らし、またある時は悲劇の主人公。現代を生きる私ですら「こんな女の子になりたいなあ」と思う。
展示室を出たところには、この美術館の番をしている猫ちゃん「黒の助」がいた。何でも8年くらい前、突然美術館の庭に住み着いたのだとか。夢二が描いた黒猫にそっくり。入り口にいた猫ちゃんの看板は、黒の助のイラストだったのです。
黒の助がいるケースを見てみる。おねんね中。そっと覗き込むと、む〜っと一瞬目を開けて、また眠った。ごめんね起こしちゃって。
趣のある外観や内観、展示室でこれでもかというほど味わえる大正ロマン感、可愛い黒の助、それら全てが「夢二ワールド」に誘ってくれる。あの耽美でレトロな世界観に迷い込みたいのなら、是非行ってみて。