ナフタレン
母は、よくナフタレンを使う
着物の入っているタンスだけでなく
Tシャツや下着が入っているタンスにも
ナフタレンをどんどん入れている
母の使うタンスの近くには
ナフタレンの匂いが漂っている
私はナフタレンの匂いが苦手
私のタンスの中には入れないで
そう伝えると「わかった」と
母は答えてくれた
でも、1ヶ月もしないうちに
私のタンスにナフタレンが入っている
母は優しさで入れてくれてるから
なかなかキツくは言えない
出来るだけ柔らかい声で
私は、もう一度お願いしてみる
たぶん、やる事がいっぱいで
うっかり忘れてしまうんだと思う
ご近所さんが、ぼた餅をくれたらしい
かなり上等らしく小豆が苦手な私にも
ぜひ食べて欲しいものだったらしい
母は私に伝える事をすっかり忘れたので
ぼた餅は、食器棚の隅っこで
小さくなってミイラのように固まっていた
それを見て母と私も固まった
実家で暮らしていた時のはなし
私が、もっと歳をとった時
どこかでナフタレンの匂いを嗅いだら
なつかしいと母を思い出すのかな
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