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アメリカ大統領選 #25 An Apocalyptic Security Failure 終末的な警護失敗が暗殺未遂事件を許した

トランプ元大統領の暗殺未遂事件について、7/15,16(アメリカ現地時間)のダン・ボンジーノ氏のRumbe放送他をもとに、これまでに分かった事を整理してみる。さらに、ボンジーノ氏のシークレット・サービスの警護の致命的な欠陥と失敗についての分析と解説を紹介する。前の記事で紹介したように、ボンジーノ氏は元シークレット・サービスの現場指揮官で、その後、警護要員の教育にもあたった。今回の事件現場には、ボンジーノ氏の知り合いがいた、との事。ボンジーノ氏のキャリアは、この事件を警護側から分析したもので信頼性も確実性も高い、と考える。
またボンジーノ氏は、月曜日の朝トランプ元大統領で電話で話ができて、元気そうな声で安心した、との事だった。(ボンジーノ氏は前々からトランプ元大統領と親交があり、ボンジーノ・ショーに電話でインタビューに答えてもらった事が数回ある。(ショーン・ハニティー氏やタッカー・カールソン氏とのインタビューにもトランプ元大統領は応じている)

  1. 会場と周辺の事前監視と調査 監視計画と監視チームの配置は?

銃撃場所からトランプ元大統領まではわずかに130ヤードの距離だった。(120m)会場外とはいえ、この距離は十分に狙撃できる近距離だ。なぜこんな近距離にライフルをもった男がたどり着けた事自体が周辺監視の致命的な失敗だ。しっかりした監視計画に基づき、監視チームが配置されてさえいたら、この銃撃場所まで犯人がたどり着けたはずがない。


一体、周辺監視チームはどこに配置され、どの場所を監視していたのか?監視のため、ドローン、ヘリコプター、赤外線センサー(人の体温を検出する)等々のツールをなぜ使わなかったのか?そもそも周辺監視計画はどうなっていたのか?銃撃は夜ではなく真昼間だった。当然、銃撃場所は警護チームの監視対象場所にしなければならなかったはず。

しかし銃撃の後のFBIの記者会見では、”監視方法、監視チームの配置、監視計画、等々、何も分からない、これから時間をかけて調べる”、との無責任極まりない答弁だった。ちなみに、シークレット・サービスはDHS(国土安全保障省)の管轄で、要人警護のみを担当し、犯罪捜査はFBI(連邦捜査局(司法省の管轄)の担当になる。これはシークレット・サービスとFBIの機能と職務を分けて、互いに緊張感をもった相互監視できるようにしたもの。しかし現状ではこの二つの組織はなれ合いになっているように見える。

次にBBCの報道。家族で演説会場の外でパーティをしていた家族が、トランプ元大統領の演説を聴こうと会場に近づき、演説が始まったから5,6分たったころに、”屋根にライフルをもった男がはっている”のをハッキリ目撃した。すぐに、近くにいた警官に何回も警告した。その警官は双眼鏡で調べていたが、(屋根が邪魔して)見えなかったのかもしれない。しかし、目撃したのは我々だけでなく、他の聴衆も気が付き、警官に通報した。

周辺の監視体制が整ってさえいれば、そもそも犯人は狙撃場所に行けなかったはずだし、万一、監視の穴を抜けてたどり着けたにしても、一般民衆の聴衆が先に気が付くというのはありえない、警備の失態だ。

また、なぜ警報を受けた警察官なり、シークレット・サービスがその屋根が見えるところから調べなかったのか?犯人を射殺したカウンター・スナイパーからは見えたはずで、無線で警告が届いていたのか?また、銃撃音がしてから、女性が、”He is over there!”、"The sniper is up there!" と叫んでいるシーンがビデオに残っている。

少なくともこのような通報があったのだから、シークレット・サービスはトランプ元大統領の登壇と演説をいったん休止しなければならなかった。

わずか数インチで銃弾が頭部に当たっていた。

トランプ元大統領がほんのわずかに顔を右に向けたので、銃弾は右耳をかすったが、わずか数インチで頭部に当たっていたはず。これは奇跡のような幸運だ。Divine Intervention (聖なる介入)(私見だが、最初の1,2発はトランプ元大統領の右を通り抜け、その時の衝撃音波にトランプ元大統領は反応し、無意識に右を向いたのではないか、と考える。)

2.要注意人物に犯人はリストされていなかったのか?

シークレット・サービスのキム・チートル長官は、TVインタビューに、”FBIと情報交換していていた", と答えたが、要注意人物のリストに犯人はリストされていたのか否かは発表されていない。またこのインタビューでもチートル長官は自分の無能さをさらしただけで、とてもシークレット・サービスを指揮する能力はない、とボンジーノ氏は断じている。また、チートル長官は、責任をとって辞任する気は全くない、と明言もしている。DHS(国土安全保障省)のアレキサンドル・マヨーカ長官も、”しまりのない顔”で、ひたすら自分の責任逃れとしか取れない受け答えに終始していた。

キム・チートル シークレット・サービス長官

3.カウンター・スナイパーは何故犯人が狙撃を始めるのを待って射殺したの 
 か?

カウンター・スナイパーは警察組織のチーム。報道では、カウンター・スナイパーは射撃許可を待った。射撃許可は犯人が銃撃を始めるまで出なかったため、銃撃を許してしまった。

ボンジーノ氏によると、それは通常ではありえない。カウンター・スナイパーは犯人が射撃を始める前に、射撃してもよい、ルールになっている。ボンジーノ氏は名前は特定しなかったが、今回の警備でも、同じルールが適用されるべきだった、とシークレットサービスのある警護要員から聞いたとのこと。

カウンタースナイパー 射撃の前に一瞬だけ望遠スコープから目を放し目視で犯人を確認したよう見える
カウンター・スナイパー 望遠スコープで犯人を狙う
元海兵隊のスナイパー(右)がインタビューに答えた

上記写真の元海兵隊のスナイパー(スナイパー養成の教官もつとめた)は、130ヤードという距離は、訓練をうけたスナイパーなら、楽に1インチ(2.5cm)の的に10発中10発は命中できる距離だ。通常は、500ヤード(約450m)くらいの距離からの狙撃が多いが、そのくらいの距離になると狙撃場所の風速、風向き、気温、狙撃場所とターゲットとの高低差、等々を微調整しなければならない。またスナイパーは射撃に集中するため、指令等の無線連絡は横にいる監視員が受け持つ。(今回のカウンタースナイパーは上記写真では二人見えるが、いわゆる監視員はいなかったようだ)

ボンジーノ氏が指摘しているように、130ヤードという距離はスナイパーにとっては必殺必中の距離であり、監視チームは絶対に犯人または容疑者をいれてはいけない距離だとよく分かる。

もう一つ私には興味深い説明があった。それはこのカウンター・スナイパーの射撃時のビデオをみると、射撃するために、一瞬望遠スコープから目を放し肉眼でターゲットを確認したように見えたこと。望遠スコープは射撃距離によって倍率が変えられるようになっている。この元海兵隊スナイパーは、このくらいの距離ならあまり倍率は上げる必要はないはずだが、仮に倍率をあげていた場合は、スコープ越しの視野が狭くなる。(それだけ拡大されるから)肉眼で確認したように見えるのは、倍率をあげていたため、標的の全体を肉眼で確認し、間違いなく犯人であることを確認したかったからではないか、との見解だった。なお、倍率をあげると、スコープ越しの標的は揺れているように見える。(実際に標的が静止していたもスコープのわずからな揺れが拡大してみえるため)だから近距離射撃のときはむやみに倍率はあげない、とのこと。

この見解が正しいのなら、カウンター・スナイパーは、元々はもっと遠くを監視し射撃準備をしていたのかもしれない。つまり、犯人の姿は捉えていなかった、のかもしれない。想像だが、聴衆が犯人を通報したのに、その情報がカウンター・スナイパーにそもそも伝わっていなかった事も想定される。

4.銃撃後のシークレット・サービスの警備保護行動で、警備用ビンの人選間違いがあきらか

銃撃直後のビデオであきらかだが、トランプ大統領は、右耳を手で触り(おそらくは手についた血をみて、銃撃をうけたと分かり、)自分で身を伏せたように見える。その後でシークレットサービスがトランプ大統領を多いかくし、次の銃撃から守った。

しかし以下の一連の写真で分かるように、トランプ元大統領は立ち上がりこぶしを振り上げた。トランプ元大統領は、”靴を履かせてくれ”と2,3回叫び、車まで移動しようとするシークレット・サービスに、”Wait, Wait, Wait”待て、待て、待て、と3回命令したように聞こえる。

ボンジーノ氏によると、警護要員がいかに主張しようとも、シークレット・サービスは力づくででも、まず避難(この場合は車に引っ張っていく)させるのが当然の職務とのこと。確かに政治的には、このこぶしを突き上げたポーズは全米の保守派、あるいは、トランプ嫌いだった保守派も奮い立ったのかもしれない。しかしそういった政治的な配慮をしている場合ではなかった。第2第3の銃撃がない、という保証はどこにもなかったのだから、とにかく引きずり倒してでも避難させるのが先決だったはず、とボンジーノ氏は解説する。

銃撃後、警護要人をさらしてはいけない(例えばトランプ元大統領が主張しても)
まだトランプ大統領の頭部は完全にさらされている
まだトランプ大統領は第2第3の銃撃を受けるリスクがあった

上記の写真から分かるのは、勇敢な女性のシークレット・サービスがトランプ元大統領に抱き着くようにして、自らの体を盾にして守ろうとしている。しかしボンジーノ氏は、決してその女性の責任でも問題でもなく、そもそものシークレット・サービスの人員配置の失策と指摘する。

つまり、警護要人を避難させるまで、警護要人は頭部を含めて完全に隠さなければ、次の銃撃リスクを避けられない。要するに、背が高く大柄なトランプ元大統領の警護のためには、少なくとも同じくらいの背丈(できればむしろもっと背が高い)の警護人を配置するのが常識だ。たしかに、上記の3枚の写真ではトランプ元大統領の上半身、特に頭部は全くシールドされていないのが分かる。(私の先の記事に書いたが、昨日の共和党全国大会では、背が高く大柄な警護員が選ばれていたようだ)

5.シークレット・サービス、FBI、地元警察、民主党、バイデン政権とメディアの対応
まずバイデン政権は、”トランプ側から身辺警護の強化”要請はされていなかった、とまた大嘘をついた。実際には繰り返し要請があった。後にそれをいやいや認め、バイデン大統領自ら、RFケネディーJr候補を含めて身辺警護を強化すると声明を出した。(実際にどれくらいの強化になるのか?)

シークレット・サービス、その上部省である、国土安全保障省、そしてFBIとも幹部が責任を取る、という声は聞こえてこない。私からみると、そういった官僚や外部からきた長官は、左翼政権にこびへつらっていれば、自分の首を守れると思い、悠然と構えている。左翼の好きにさせていると、これだけ無能な役人が幅を利かせるようになる、良い実例だ。ボンジーノ氏は、今のシークレット・サービスは私がいた頃とは全く違う、と怒りをあらわにしている。(おそらくは、ボンジーノ氏の個人的つながりの内部情報を伝える”Whistle Blower” (内通者)もいるものと思う。

私の私見を最後にのべてみたい。
まず今後の選挙活動では、万全の警護体制を全ての大統領候補につけて欲しい。特に間違ってもトランプ元大統領に二度と暗殺の魔の手が伸びない事を祈る。また大統領就任後の警護も、決して楽ではないはず。シークレット・サービスの奮起を期待したい。

次に、いくら過去を振り返っても、どうしようもないのだが、仮に我が国にもボンジーノ氏のように要人警護のプロが、きっちりした警護計画をたて、また必要人員を的確に配置し、またカウンタ・スナイプも動員していれば、安倍元総理の暗殺は確実に防げたものと思えてならない。むしろ、例えば今回のトランプ元大統領の警護の10分の一要員(ただし警護訓練をうけたもの)だけでも暗殺は防げたのにと思えてならない。

最後に、アメリカメディアは、この暗殺未遂事件をトランプ有利に働かせないように、あの手この手で、トランプ批判を強めている。当然のように我が国の左翼メディアはその真似をするだけ。リベラル=左翼=全体主義=責任逃れ を許してはならない、と心底そう思う。

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