アメリカ大統領選挙 その9 ガザ戦争の大統領選への影響は?
Rumbleでたまたまみつけたこのインタビュー番組が興味深く、アメリカ大統領選への影響もありそうなので、紹介したい。
まず内容は、”イスラエル国防軍によるハマス攻撃の国際法的な合法性と正当性”についての初期評価報告書について、実際に調査に加わったジェフリー・コーン退役中佐に話を聞くというものだった。同氏は、元アメリカ陸軍で21年間兵役につき軍事法の専門家で、現在はテキサス工科大学で犯罪法と軍事法を教えている。
この初期評価報告書は、JINSA(The Jewish Institute for National Security of America) アメリカの国家安全保障のためのユダヤ研究所が、イスラエル国防軍の軍事作戦と戦闘状況について、米軍の元軍人計7名に調査報告を依頼したものとのこと。JINSAは当然イスラエル寄りの研究機関であるので、多少のイスラエル寄りバイアスはかかっているものと思う。ただしジェフリー・コーン退役中佐によると同研究所は、調査報告の結果については中立の立場で、あくまで調査分析した元軍人の意見を尊重したと明確に述べている。
まず、そのインタビューの前に、10月7日ハマスのイスラエルテロ攻撃について簡単にまとめておく。(以下はイスラエル国防軍の発表であることをお断りしておく。ニュースソースによっては、犠牲者数などばらつきがあることをご承知願いたい)
およそ3千人のハマス兵士がイスラエル南部を攻撃し、さらにガザ市民達がイスラエル国境の壁を壊して侵入した。このテロ攻撃の結果、計1,139人が殺害された。(38人の子供を含む695人のイスラエル国民と、アメリカ人を含む71人の外国人、373人のイスラエル警察および軍人を含む)。さらにおよそ250人のイスラエル国民と軍人がガザ地区に連れ去られたが、この中には30人の子供が含まれる。(4人のアメリカ人も捕虜にとられているとの報道がある)この捕虜は、イスラエルに収監されているパレスチナ人(女性と子供を含む)と交換目的だったとされる。
軍事法(国際法を含む)の専門家であるジェフリー・コーン退役中佐は、イスラエル国防軍の今回の軍事作戦は、国連が定めた個別・集団的自衛権で認められた範囲内で行われていると全員の意見が一致した、としている。
当然この自衛権は個人でも認められている。例えば、誰かに銃で撃たれた時は、自衛権として(自分も銃をもっていれば)相手を撃ち返すことが認められる。仮に、運よく相手の弾丸が自分には当たらずそれたから、といって、相手に対しても当たらないように銃を撃たなければならない、という事ではない。ハムラビ法典のように、”歯ならば歯を、目ならば目を”を実際に自己防衛するときにできるはずもない。
一方で、自衛権の定義にある"proportional”な対抗策がとれる、という意味を互いの犠牲者の数が比例的でなければならない、と考えるのは根本的に間違っている。これは、イスラエルの犠牲者が1千数百人であったのに対して、すでにイスラエル国防軍はガザ一般市民を含めて3万人以上を殺害しており、これは自衛権の許容範囲ではない、との論調のことを指す。
同氏は、まずガザ地区戦闘でのパレスチナ側犠牲者が3万人以上というのはかなり誇張していると思うと、断った上で、自衛権について以下の説明をしている。
国の自衛権とは、自国を守るために”required”必要な相当する軍事作戦と行動をとることができる、とするものである。単純に互いの犠牲者数が比例的でなければならない、とするのは、法解釈が間違っているとの主張。
トランプ元大統領が、このproportionalを我々一般人のような解釈をして、ISIS攻撃の際、”敵側の予測犠牲者が多すぎる”として、攻撃規模と方法を変えるように命令したとの話があった、と記憶する。
今回のイスラエル側の犠牲者は10月7日のハマステロ攻撃による犠牲者と捕虜として連れ去られた人々だけでなく、ガザ国境地帯の数千人のイスラエル人が避難を余儀なくされていることを忘れてはいけない。
イスラエル国防軍はイスラエル政府からの命令で、捕虜の奪還をむろん、こうした国境地帯から避難した人々が安心で自分達の家に帰れるように、ハマス軍事力を壊滅しなければならない。
さらに、私自身今まで知らなかった事だが、実はガザ地区のハマスは、およそ3万人の兵力を有し、軍隊としての指揮命令系統、十分な兵器、通信、移動手段を備えた、軍隊である、とのこと。(私は個人的には、軍事訓練を受けたテロ組織で数千人規模かと勝手に想像していたが、大きな間違いとわかった)
一般に、攻防戦では、攻撃側は防御側のおよそ3~5倍の兵力が必要とされている。(これは様々な書籍で何度も読んだ記憶がある)実際にイスラエル国防軍はおよそ10万人の兵力をガザ地区に投入している。これは、イラク戦争時に、アメリカが投入した兵力とほぼ等しい。ジェフリー・コーン退役中佐自身も、このイスラエルの投入兵力の規模の大きさに驚いたと言っている。
次に、これは飯山博士が何度も説明されていることだが、ハマスはガザ地区市民をイスラエル軍の攻撃からの盾にして自分達を守っている、という点。事実イスラエル国防軍の発表した写真には、病院や学校の地下にハマスが長大な地下トンネルを掘り、自分達はそのトンネルに隠れ、一般市民を守ろうともしていない。これこそ国際法違反である。
さらに、ジェフリー・コーン退役中佐は、”盾”というよりも、むしろ積極的に市民の犠牲者を出して、”ベトナム独立のため何万人のベトナム国民が命を犠牲にしたか”、というプロパガンダを展開している。
またこれは別のニュース解説で聞いたことだが、イスラエル国防軍がガザ一般市民に、ガザ南部(エジプト国境)に避難するように勧告し、実際に軍事作戦を控えていた避難回廊に、ハマスが一般市民に、戦闘地区に戻るように強制している、との航空写真を見たことがある。
このような卑劣極まりないハマスの自己防御に対して、イスラエル軍は一般市民の犠牲者をできるだけ減らそうと最大限の努力と工夫をしている、と報告されている。(これも別のニュースで聞いた事だが、空爆する前に、"roof knock" 屋根に落して音で住民に事前に空爆を予告する、という方法、空中からのビラ散布と放送、そしてイスラエル国防軍が命がけで、ビル一部屋一部屋、地下道の一つ一つを兵士が調べている。仮にイスラエル兵士の犠牲をこばみ、また捕虜奪還を諦めるのなら、かつアメリカ軍が我が国に対して、明らかに国際法違反の大都市の無差別爆撃をしたのと同じ軍事作戦も取れるはず。
このように時間はかかるが、まず捕虜奪還を最優先にした大規模軍事作戦を展開しているイスラエルは、人的かつ経済的な負担は極めて重いと言わざるを得ない。しかも、エジプトを始め周辺国は、ガザ市民の受け入れをかたくなに拒んでいる。つまり、自国にハマスが紛れ込んでいるというリスクのある市民受け入れはできない、との自国最優先の施策をとっており、それはそれで、致し方ない事かもしれない。
イスラエルにとり、最大の難問は、ハマス壊滅をどのように確実なものにするのか、さらに戦争後のガザ地区をどうするのか?ジェフリー・コーン退役中佐は最善方法はないが、最悪の施策ならある、と匂わせている。
さて、この戦争がアメリカ大統領選にどのように影響するのか?私見を述べてみたい。
・まずハマスのテロ軍事作戦は、現バイデン政権が、イランのアメリカにある資産凍結を解除したことから始まったと考える。これは、確かイランにとらわれていた数名(確か5人程度と記憶)をイランが開放する条件として、イラン側がアメリカンに要求してきたことを飲んだ形。そもそも、オバマ政権時代に、イランへの経済制裁をゆるめ、結果核開発を進めることを許した事から始まっている。トランプ政権時代に、相当イランを経済的に締め上げ、成果がでていたはずなのに、バイデン政権のいかにもリベラル左翼的、偽善的(その実、実際にはイランから何らかの見返りがあったのではないかと疑いたくなるような)弱腰政策と言わざるを得ない。
・仮にトランプ政権が復活したら、このイスラエルとハマスの戦争はどうなるのか?私は個人的には、トランプはアメリカ軍のガザ進攻は許さないと思うが、イランに対する強烈無比な経済制裁と、ハマス幹部の個人資産凍結、等をカードとして使うのではないか、と考える。アメリカ国内はもちろんのこと、NATO諸国と奥の手としてスイス銀行にも圧力をかけ、資産凍結に協力させる、そんな手をトランプ政権はもっているような気がする。(買いかぶりすぎかもしれないが)
・私はアメリカ国民の多くは、このバイデン政権の明らかな失策とみているはず。他にも国境の開放での年間3百万超と言われる不法移民急増と凶悪犯罪の急増、さらには国境から不法持ち込みされる大量のフェンタノーるによる年間10万人をこえる死者、2倍に跳ね上がった住宅ローン利率、何倍にも高騰しているガソリン代、20%を超えるインフレ率、等々、良識ある人ならだれもが認める失策の数々。
・しかし、アメリカ主要メディアはまだこうした事実を恥も外聞なく嘘とごまかしとスリ代えで、ごまかそうとしている。(現大統領報道官のクリン・ジャン・ピエール女氏は、元々のジ頭が悪いのか、それとも、厚顔無恥の大ウソつきなのか、平気な顔で、”国境安全は万全だ。我々は日夜国境保全に全力を挙げている”、とうそぶいている。(いい加減多くのアメリカ人が気が付き始めたように思う)