見出し画像

日本のサッカー総合力

オリンピックの男子サッカー決勝戦スペイン対フランス。
文句なしに近年の決勝戦では最高に面白かった。

スパイン、フランス両チームのプレーヤは間違いなくU23として世界最高レベルだったし、特にスペインの21歳フェルミン・ロペスはすでにA代表で、今年のUEFA EURO 2024(欧州選手権)でもスペインに優勝をもたらした。

スペイン監督のSanti Denia(サンティ・デニア)は、前スペインのU17,19、そして21からU23に持ち上がった、たたき上げの監督。

一方のフランスの監督は、サッカー・フリークには懐かしい、Thierry Henri (ティエリ・アンリ)。言わずとしれた1998年フランス・ワールドカップ優勝の中心選手の一人であり、ジダン、デシャン(現フランス代表監督)とともにフランス・シャンパン・サッカー(シャンパンの泡のように、次々にパスをつなぐ、華麗な試合スタイルで世界中のサッカー・フリークを魅了した)黄金時代を作った。アンリは、その後イングランドのプレミヤリーグ、アーセナルに移籍後228得点(歴代最高)をあげた実績がある。

そして、第1,2,3審判は全員がブラジル人。ブラジル・リーグで鍛えられたであろう主審は、サッカー本来のフェアープレイ精神にのっとり、シミュレーション(ファールをもらうため、わざと倒れる)には毅然として笛を吹かなかった。またVARも一度だけで、自分自身でモニターをみて判定した。副審(昔の呼び名では線審)も、オフサイドやファウル判定はTVから聞こえてきそうな風切り音が出るように、バッと旗をあげ、明快な判定をしていた。

なお、日本本対スペイン戦の主審(モーリタニア出身だったと記憶する)が、この決勝戦では第4審判(選手交代やアディショナル・タイムの表示)だった、と思う。これは、さすがに日本対スペイン戦のお粗末極まりないレフェリングをみて、一応義理で審判団にいれてあげた、という感じだったのだと思う。

しかし、残念だったのは、決勝戦を放送したアナウンサーと解説者だった。
試合開始前に、国際放送映像が観客席のVIPを映し、その中に表題写真のPierluigi Collina (ピエルイージニ・コリーナ)元FIFA審判委員長がハッキリ写された。コリーに氏に敬意を表して大写しにしたものと思うが、日本の解説者もアナウンサーもなんら説明なく、無視。これだけで、日本のTV放送ノサッカー知識レヴェルの低さが分かる。仮に知ってはいたが、無視したのならなおさら質が悪い。こんな放送では日本サッカーの先が思いやられる。

確かに、個々の選手は海外の主力リーグでレギュラーとしてプレーし、例えば三笘選手や伊東選手のように、リーグ中堅のチームを中心選手として引っ張っている。富安選手、遠藤選手も世界レベルのプレーヤだと思う。

しかし日本サッカー協会、そして代表の監督・コーチ陣は、とてもじゃないが、海外の主力リーグでマネージメントしたり、コーチできる力はない。早く、長谷川選手がコーチの国際ライセンスをとり、ブンデスリーグでコーチングの実績をとって、晴れて日本代表のコーチ、監督に就任して欲しいと願ってやまない。

そしてサッカーのサポータを啓蒙し教育する役目のあるべきメディアも世界レベルには程遠い、と改めてわかった。FIFAの元元FIFA審判委員長のコニーナ氏を紹介しないとは、情けないにもほどがある。しかも、解説したいたのは、(私にはなじみにのない名前だったが)、リベラルNHKに忖度したのかどうか分からないが、さかんに、ブラジル人主審のレフェリングについて、それとなく批判するような事を繰り返していた。VAR至上主義かと言いたくなるほど、サッカーの試合の流れとか、そのファールの危険度合、あるいはゴールに結びついたか否か、に関係なく、ただスロービデオをみて、ああじゃ、こうじゃ、という解説には本当に閉口した。(たしかにフランスのTVは怒り心頭だっただろうが)

ちなみに、コリーナ氏はこの独特の風貌、スキンヘッドにぎょろりとした目で、また4ケ国語を操り、サッカー界の伝説となった往年のレフェリーだ。コナミさんサッカーゲームソフトのパッケージを2度ほど飾ったくらい、知られた審判であった。他のパッケージは、むろん、サッカー選手だけだったのに、なんと審判がゲームの顔になるなど、前代未聞ではないか。

なお、同氏が、スキンヘッドになったのは、たった10日間で毛が抜けてしまったためと言われているが、その理由は分からない。また、ご本人は決して触れないとのこと)

コリーナ氏は、1999年から連続6年間世界最高審判に選ばれ、世界のトップクラスの選手達から最も恐れられ、そして、最も信頼された審判だ。

2002年ワールドカップ決勝 ドイツ対ブラジルで主審を務めた。その決勝戦を前に、ドイツとブラジルのそれまでの試合をビデオで見て、両チームの戦い方、個々の選手のプレースタイルを研究したと言われている。そして、”選手より先に”、次のプレーを予測し、ボールのすぐそばで判定することで、選手には有無を言わさない、そして選手が納得する笛を吹いた。時として、鬼のような形相で選手を叱り飛ばすこともいとわなかった。

1998年ワールドカップ ブラジル対ドイツ戦で主審をつとめたコリーナ氏 真ん中ロナウド(大五郎カット)のドリブルを覗き込むように見守るコリーナ審判

ちなみに、コリーナ氏は、長い間FIFA(国際サッカー連盟の審判委員会の委員長を務め、また現在のVAR (ヴィデオ・アシスタント・レフェリー)導入前の事業評価と分析にあたり、実際の試合での活用を有効と判断した。決して、新しい技術を拒絶するのではなく、より良い、公平で公正なサッカーのレフェリングのため、新しい試みにも取り組んできた。

下の写真は、かつてのフランスの英雄ジダン選手(サッカーのエース番号10番を背負っている)の肩に手をかけ、ブラジルの英雄ロナウドに話かけるコリーナ氏。左は若き日のネイマール。(これが何の試合かは分からないが、もしかしたらロナウドの引退試合かもしれない。かつでフランス・ワールドカップ決勝戦で対決した両国を代表する英雄二人に、これほど親しく話かけられる審判はコリーナ氏以外にはいないのではないか?

かつてイタリア・エリエAで、審判の買収スキャンダルが持ち上がった時、ただ一人潔白が証明されたのも、コリーナ氏だった。

なお、実は日本対スぺイン戦でもコリーナ氏はTV画面に映ったのだが、日本のTVでは無視されていた。なんとメディアのレベルの低いことか。こんなことなら、先のワールドカップでネット解説をしてものすごい人気となった本多選手に、もう一度ネットででも解説をしてほしかった。


いいなと思ったら応援しよう!