春の朝 【創作SS】
目覚ましが鳴った。
心地よい眠りから覚めて薄目をあける。窓から暖かい日差しが差し込みレースのカーテンがそよいでいる。
誰かが開けてくれたのね。
カーテンの内側には猫が目を細めて日向ぼっこしている。あら可愛い。
猫の名前はクリーム。クリーム色してるから。
猫の邪魔にならぬようにベッドを降りる。小鳥のさえずりが聞こえる。
あぁ、幸せだなと感じた。前の職場で軽い鬱になった私はこんな小さなことで胸が満たされる。
「おはよう」
信頼できるパートナーが台所に立っていたので返事をかける。
「おはよう」
優しく浅い笑みで振り返りながら返事をしてくれた。
「今日はお花見に行くのー」
パートナーの子どもが席で嬉しそうに
机の下で足をバタつかせている。
「なぁちゃん嬉しそうねぇ」
「うん!」
「かなこちゃんも行くんだよ?」
「あら、私もご一緒してもいいのかしら?」
「もちろんだよ」
コーヒーを入れてくれていたパートナーが湯気の立ち上る焦げ茶色のマグカップを2つ持ちながらこちらへやってきた。
先ほどからパートナーと呼んでいるのはくぅくん。なぁちゃんの正真正銘の父親だ。
「お弁当を作ったんだ」
「素敵。どんなお弁当?」
「おかかと鮭フレークのおにぎりと卵焼きとウィンナー。それとりんご」
「すごい。みんなが喜ぶお弁当ね」
私がそう言うとくぅくんは優しい笑みでコーヒーを一口飲んだ。
私はコップから立ち上る湯気を見つめることしかできない。
「いいなー。私も食べたいわ」
「食べればいい」
「無理よ、だって私はもうここにはいないんでしょう?」
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