夜風 【創作SS】
じゃりじゃりと音がする。
私が前に進む度に足元から砂の音が響く。
砂の悲鳴かもしれない。
胸の中に黒いコードがぐちゃぐちゃに渦巻いてる私を秋の気配を含んだ風が私の頬をなぜた。
手にはスマホ、ポッケにカギだけ入れて私は夜を楽しんでいる。
電灯があまりない田舎なのであたりは暗い。このコンクリートの壁の向こうでは波の音がひしめきあっている。
隙間から向こうを見るとどす黒い闇が広がっていて吸い込まれそうだ。私を拒否しているようにも呑み込もうとしているようにも見える。
少し肌寒い。
風呂上がりでちゃんと髪を乾かしきれてないから湿っている。そんな髪をたまに風がなびかせる。
黒い髪は闇に溶けている。
私まで溶けたらいいのに。
日が昇ったら夜のことなんて跡形もなく美しい光景がやってくる。誰も私が溶けたことなんて知らない。
それでいいのだ。
そう思っていると耳で風が鳴いた。
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