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【本編25】組織開発が本業になる

 経営企画部のT課長やコンサルタントのMさんとの険悪なやり取りの後、私は嫌な気持ちを引きずったまま、その夜の用事である組織開発のワークショップへと向かいました。

 U理論でお馴染みのNさんが主催するワークショップでした。

 ワークショップでは、旅行代理店で組織風土改革を推進している女性課長と同じグループになりました。先ほどの件もあったため、私は彼女に聞いてみました。


「風土改革はなかなかうまくいかない場合が多いと思いますが、どうやって乗り越えていますか?」

「私のところではすべて順調に進んでいるので、苦労なんてしていません」

「え!それはすごいですね。ぜひ、その秘訣を教えて欲しいです」

「実は、昔はうまくいってなかったんです。いつも、どうしてみんな変わってくれないんだろう?と悩んでばかりいました。色々な施策をやってはいるんですけど、空回りしてばかりいました。組織を変えたい、変えたいと常に願い、一生懸命やっているんだけど、どうしてもうまくいかず。でも、ある時から、全てがうまく回り始めたんです」

「なにがあったんですか?」

変えたいという気持ちを手放したんです


 T課長やMさんからの詰問攻めにあい、ドロドロした嫌悪感に塗れながら参加していたワークショップでしたが、その言葉を聞いた瞬間、目の前が開けた感じがしました。経営企画部なんて絶対に異動するもんかと、意固地になりかけていた私でしたが、その一言でなぜか救われた気がしたのです。これもシンクロニシティなのだろうか?と思いました。その日、彼女に出会わなかったら、その後の私の人生も今とは大きく変わっていたと思います。

 翌日、T課長にメールを送りました。


「呼んでいただければ、いつでも異動しますよ」


 T課長は嬉しそうに返事をくれました。


「昨日厳しく詰問したのは、実は賭けだったのね。Mさんとも相談してね。賭けはうまくいったようだね」


 とはいうものの、当社の人事はなかなか簡単にはいかないところがあり、結局異動できたのは、それから2年後でした。メルマガを始めて5年が経っていました。

 異動したその日、T課長は本社の35階から2階まで、秘書室、経営企画部、人事部、総務部、広報部など、関連する組織に私を連れて挨拶回りをしてくれました。

 うれしかったのが、前社長のHさんにご挨拶に行った時のこと。当時は社長を退任して相談役になられていたのですが、相談役室にお邪魔したら、満面の笑みを浮かべ、


「おお、とうとう来たか!」


と、最大限の歓迎のお言葉をくださったのでした。

 こうして「組織開発」が私の本業になったのです。

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