【本編14】組織長との激論(水曜日)
組織長の秘書に時間をもらい、組織長と二人で応接室に入りました。
私のタダならぬ雰囲気に、組織長は私が何を話そうとしているのか察しているようでした。私の心臓はバクバクしていました。
私はダメ元で、まずは要員増をお願いしました。
「たった一人でもいいんです。そうすれば私たちで何とかしますので」
組織長の答えはノーでした。
「今回の件がなくても、手順書を直すのは当然の作業だろう。当然の作業を実施するためにいちいち要員を増やすわけにはいかない」
上司の意向に逆らったら社員は損をするだけ。いつもなら長い物に巻かれろで、簡単に引き下がってしまう私でしたが、この日は違っていました。胃が痛くなる2時間以上のやりとりが続きました。
そして、ヒートアップしていった私は、踏み込んだ発言をしたのです。
「手順書の修正は微々たるものだとおっしゃいますが、組織長はうちのプロジェクトの手順書を読んだことがあるんですか?」
組織長の顔色が変わりました。そして、怒りを抑えながら搾り出すように言葉が出てきました。
「ない」
ここで分別のあるサラリーマンなら、これ以上上司を追い詰めたりはしないものですが、私はさらに畳み掛けてしまいました。
「ないでしょ。だから簡単にできるだなんておっしゃれるんです。組織長が本当にやりたいことはプロセスの改善であって、資格の取得ではないはずですよね」
「それはもちろんだ」
「だったら、プロセス改善に注力して、資格を取ることはもうやめましょう」
冷静さを装っていた組織長が、私のこの一言でとうとう切れてしまいました。おもむろに立ち上がり、机を両手でバン!と叩き、こう怒鳴ったのです。
「そんなことしてみろ!お前の人事評価はゼロだ!!」
私は苦笑いを浮かべながら「やっと本音が出ましたね」と言うのが精一杯でしたが、その後の細かいやりとりは私の記憶からは欠落しています。しかし、そこはお互いにオトナなので、最終的には玉虫色の結論を以ってお開きになったように思います。
応接室を退出したあと、しばらくは仕事が手につきませんでした。