10 完結:シバイヌモモの老人観察日記 トラさん編
悪友達からの心のこもった”ののしりやらそしり”が、聞きたかったはずが・・・
『あなた目を覚まして下さいな。お客様達もそろそろお帰りになりますよ。』
トラさんはおかみさんの声で起こされまして 全て夢だったと知ってほっとしましたねえ。悪友達はと言いますと、お酒も入っていますから好き勝手な事を言っておりました。
『馬鹿だねお前は。悪友達からの心のこもったののしりやらそしりが、聞きたかったんだろうが。それを聞かずに主役が爆睡しちまってどうするよ。これは何だな 生前葬第二弾をしっかり企画しろってことだな。それとも何か? オレらも持ち回りで生前葬をやるか?』
などと無責任な事を言いながらそれぞれ陽気に帰って行きました。
トラさんはと言いますと夢のおかげで、おかみさんのありがたみを改めて感じましたね。
『お墓の件だけどさ、お前は俺と一緒の墓に入ってくれるのかい。』
『当たり前じゃありませんか。縁あって一緒になってここまで来たんですからね。あの世とやらでも一緒に楽しく過ごしましょうよ。そう言えばついさっき見たんですけどね ネットに面白い情報が載ってましたよ。天国の住宅情報とか言っちゃって 今ならお墓を予約すると あちらの世界の快適な物件も斡旋します・・・ですって。』
『何だいそりゃ 俺たちはね ごく普通のお墓だけでいいんじゃないか。』
『何かホッコリしていて癒されそうな物件だったんですけど変ですね、物件の画像が全部削除されてるわ。天国不動産って言ったかな。問い合わせ先は確か”お迎え天使”その代理。』
『えっ なんだって?』
『あらら こんな訂正が入ってますね。
(故障中です。復旧の目途が立っておりません。全てキャンセル・・・じゃなくて ”どうか速やかに忘れて下さい”)ですって! 何これ??』
トラさんは思いましたね。おいおい 天使の代役のアルバイトさん あの世だけに 何もかもお釈迦にしちまったんじゃないのかい。
・・・・・おしまい・・・
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