【曲目解説】 組曲『魚とオレンジ』より「はなやぐ朝」 中田喜直作曲 【こども向けコンサートプログラム】
組曲「魚とオレンジ」より「はなやぐ朝」
作曲:中田喜直 作詞:阪田寛夫
みかんのたねはおにわにまけば もういちどみかんがなります。
すき通る、ビー玉みたいなさかなの目だま。
おにわにうめて眠れば さかなはいつかお空を泳ぐでしょうか。
「はなやぐ朝」は、ひとの一生を8曲の歌で描いた、「魚とオレンジ」という組曲のはじまりの一曲です。作曲家の中田喜直(なかだよしなお)は、童謡「めだかの学校」などでも知られています。春のやわらかな日差しのなかで、おさない「わたし」の空想のせかいがひろがっていきます。
まず聴こえてくるのは、なめらかに転がるピアノの音。そこに、「コロラトゥーラ」と呼ばれる、高くて軽やかな声のソプラノがかさなり、音楽がはじまります。
阪田寛夫(さかたひろお)が書いた詩は、おさない日の「わたし」の、想像力のものがたり。まぶしい希望に満ちた少女時代は、まるで春の光を胸いっぱいにすいこむようです。組曲のさいごの曲「らくだの耳から(魚とオレンジ)」は、年老いた「わたし」が、この春の日のことを思い返す場面で、「はなやぐ朝」のメロディーがでてきます。
こどもの頃の空想のせかいは、どこまでも、いつでもそこに、ひろがっているのです。