あの日の、リトルワールド
リトルワールド。
小さな世界。
それは、愛知の山間部にあるパラダイス。
小学生のころに、家族と一緒に訪れた記憶のある場所。
無性にわくわくした記憶のある場所。
あの時の想いを確かめに、私が再びリトルワールドを訪れたのは23歳のときだった。
*
名鉄名古屋から特急で30分。
更にそこからバスで20分。
あなたはパラダイスに降り立つ。
入場料は、大人1800円(2020年4月現在)。
安い。
さすが私のパラダイス。ありがとうパラダイス。
さあ、それでは準備はいいですか?
パスポート片手に。
8年前の私と一緒に、ラフな世界一周へ、レッツGO!!!!!
スタート地点は、沖縄。
シーサー。シーサーも狛犬と一緒で阿吽なんですね。
そして阿吽を見ると、阿吽の顔で写真を撮りたくなりますよね。
モザイクの下は馬鹿みたいに口をあけております。
あと、8年前の私は芋虫っぽいダウンを着てますね。
続く台湾エリア。
おみくじ100円。もちろん無人。パラダイスだから。
確か、床に落ちている2枚の三日月の表裏によって、くじを引くか決めるとかそんなんですよね。
台湾ベッド。
いや、私絶対このサイズに収まらないんですけど?
…あっ、芋虫だから丸まって寝ればいいのか。なるほどな。
次は、台湾から一気に…
どーん。北米。
おめでとうございます。
皆さんはこの、徒歩数十メートルで、太平洋を渡りきりました。
便利。パラダイスの本領発揮。
とはいえインディアンのテントが建ってるだけなので、「テントが建ってるなあ」という感じで立ち尽くすしかない私。
早々に次のエリアへ歩きます。
見てください、この貸し切り感。
さすがパラダイス。VIPの気持ち。
人混みが苦手な私、歓喜。
園の存続の方はちょっと心配。
しかも、なんとここはインドネシアバリ島。
さっき北米行ったのに、また太平洋を突っ切る荒わざ。
地図上のルート取り?
そんなの、関係ありません。だってここはパラダイスだもの。
心置きなく、ゆっくり細部を楽しみましょう。
顔がいっぱい。
民族っぽくてウキウキしますね。
はい、じゃあ、夢にこの顔が出てきそうなくらい見つめ合ったところで、次へ行きます。
うーん。
バリ島の次はどこへ行こうかな?
太平洋を突っ切るのは、もう飽きたな。
…よし。
じゃあ今度は、反対側を突っ切ろう!
ということで。
いでよ!ヨーロッパ!
スン。
ワープ完了。
あら。おばさまも私のために祈ってくれてたのね。
ありがとう。
そちらのお嬢ちゃんは、長い舌…じゃなくて、パイプを吸ってるのね。おませさんね。
さてさて。
ヨーロッパにも来たことだし、いよいよアレをやりますか。アレ。
そう。待望の!!!
コスプレターーーーイム!!!!!
いやっほーーー!!
そうなのです。
このリトルワールドというパラダイスは、「お安くたくさんの民族衣装が着られる」場所なのです。これこそが、パラダイスのパラダイスたる所以です。
民族衣装って、最高ですよね。
何故かわくわくしますよね。
それが、500円前後でお手軽に着れちゃいます(2020年4月現在)。
そう、リトルワールドならね!!!!!
てなわけで、フランスはアルザス地方の民族衣装。
ヨロレイヒー。
今なら乳製品摂りまくっても、お腹壊さずに頑張れそう。
ヤギに手紙を食べられても、怒らず笑って居られそう。
ちなみに男性バージョンはこちら。帽子つき。
え?誰?どっから湧いたメンズ?
と、お思いの方。大丈夫。
安心してください!
付き合いたての夫ですよ!
付き合いたての私に、いちいちポーズを決めさせられる、現夫ですよ!
いやぁ、我ながらなかなか良い構図だな。
そんなこんなでコスプレを満喫し、次のエリアへ向かいます。
なんとなく。
なんとなーく、アフリカっぽいな?って思ったそこのアナタ。
ピンポンピンポン大正解。
西アフリカ、ブルキナファソのおうちだそうです。
夫の肖像権ポリシーが厳しいため、モザイクがやんちゃな仕上がりです。ごめんあそばせ。
こちらは南アフリカ共和国。
やることがなさすぎて、ひょっこりはんする私。
このかわいい画は、女性たちがフリーハンドで描くのだそうです。天性の画家さんたちですな〜。
さあ、ここまで来るともう旅も終盤です。
名残惜しいですね。
寂しいですね。
帰りたくないですね。
まだコスプレし足りないですね!!!!!!
ってなわけで。
小学生の私が家族でこのパラダイスを訪れた時に、親に「コスプレは一回だけ」と言われ、悩みに悩み抜いて、コレだ!と決めて着た、インドのサリー。ものすごく嬉しかった記憶がある。
あれをもう一度着たい。
着ずにここを立ち去るわけにはいかない。
13年ぶりの、パラダイスサリー。
あの時は、何色のサリーを着ていただろう。たしか黄色だか紫色だか、そんな色だった気がする。
赤を選ぶようになったなんて、私も成熟したものよ。おほほほほ。
あらやだ、そなたはアラジンかしら?
(当然のように着させられそしてポーズを取らされる夫)
いやー、やっぱりサリーはいいですね。
異国のお姫様感があって素敵ですね。
ねっちりサリーを満喫していたら、お腹が空いた。
やっぱりここは、カレー屋さん。
サリーを着た後に食べるんだから、そりゃカレーを食べるに決まっています。
インド感をしっかり楽しもう。
お盆と器が、めちゃくちゃ和なことなんて、気にしない。
ここはパラダイス。
楽しんだもん勝ち。
大きなナンでカレーを平らげる。
まるで和定食を食べ終えたかのようなお盆を返却し、店を出て隣接する韓国の家ゾーンを抜けると、山形、つまり日本の家に帰ってきます。
これにて、8年前の私による、ラフな世界一周の旅は終わりです。
いかがだったでしょうか。リトルワールド。
パラダイスっぷりが、皆様に少しでも伝わりましたでしょうか。
小学生のあの頃と変わらず、23歳の私も、リトルワールドを存分に楽しみました。
ありがとう、私のパラダイス。
またいつかきっと訪れるから、それまで待っててね。
心のなかでそう呟いた、23歳の春でした。
*
それから4年後。
私と夫は結婚式を挙げた。
そのとき、父から、結婚式で使えるようにと大量の写真データを受け取った。実家のアルバムに貼ってあった私の写真を、全て自分の手でデータ化したらしい。全てに目を通すことが出来ないくらい、膨大な量だった。
この記事をほぼ書き上げたそのとき、ふと気になってそのデータ群を参照してみた。だいたいこのへんの年代だろうか、と当てをつけて、1つめのフォルダを開く。
1998年1月。
まさにそこに、あの日の写真があった。
貸し切りゾーンは、やっぱり貸し切りだった。
南アフリカ共和国の家は、もっと鮮やかな色だった。
私のサリーの色は、青色だった。
そうそう。
このおでこに付けてもらったビンディのシールを、帰りの車の中でもずっと剥がさずにつけていたんだっけ。
21年前、私の横には妹がいた。
8年前、私の横には夫がいた。
次に行く時、私の横には夫と、そして子どもがいる。
娘は、サリーを着たがるだろうか。
どんな民族衣装を選ぶだろう。
それとも、何も着たくないと言うのだろうか。
今から気になって気になって、仕方がない。
私は、赤でも青でもない色のサリーを着よう。
だからパラダイス。
それまで絶対、閉園しないでね。
おしまい。