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田植えは北国から始まる?

第十七侯 「霜止出苗 しもやみてなえいずる」4月25日~29日頃
Last frost, rice seedlings grow

七十二侯の更新が遅れがちになっている。「霜止出苗」は明日あたりまでと言うことでぎりぎりになってしまった。

朝晩の冷え込みもようやく緩み、霜が降りる心配もなくなって稲の苗も伸びてくる頃の意味。そうは言っても「八十八夜の忘れ霜」とも言われるようにまだまだ油断はできない。

地方をガイドをしていると田んぼの景色はおなじみだし、格好のネタになる。お米を食べるのは日本だけではないし、アジアの国々やアメリカでも美味しいお米は出来るから関心は高いので、それぞれの時期に応じて一応予習はしておく。

【苗代作り】                            田植えが出来るほどに苗が成長するには一ヶ月ほどかかるので、東北では4月に入ったころから種蒔きをして苗代作りに入る。土の入った苗箱に種を蒔き、ビニールハウスの中で育てる。

【田植え前の準備】                         苗代の苗が成長すると、田んぼの代かき(田起こし)をしたり、雑草を取り除き、田に水を引いたりと忙しい。田舎に住んでいたので小学生の頃は、確か農繁期休業と言うのがあったと思う。子供の労働力も必要だったのか、どんな手伝いをしたかを日記に書いて学校に出さなければならなかった。私の家は農家ではなかったので、とても引け目を感じており、子供心にもストレスだったように記憶している。農家の子たちは日記に「苗代作り」とか「代かき」とか,「田の草取り」などと書いていたので、私は仕方なく「お使い」、「庭の草取り」、「雨戸の開け閉め」などと書き込んでいたものだ。今の子供たちには縁がないことかと思う。〇○年前のことである。山間の田んぼでは、牛を引いていたところもあった!今はほとんどトラクタ―とか耕耘機である。

【田植えの時期はまちまち】                     しばらく田植えと言うのは東北は遅く南の方が早いもの、と思い込んでいた。東北南部では5月のゴールデンウィークの頃が田植え時期である。田植え機であっという間にきれいに植えられて行くのは壮観である。北の方が早いとは言っても、一番早いのは桜前線と同じく沖縄である。面白いことに九州の田植えは北海道より遅いのである。なぜか。

稲は寒さに弱く、気温の低い日が続いたり、日照時間が短かったりすると,冷害を起こし病気になったりもみの実入りが悪くなるそうだ。そのため、日照時間が短く気温が下がる前に収穫する必要があると言うわけである。その結果、遅い所では6月中旬あたりまで田植え時期がずれる。

、6月骨寺無r水田

         (一関市、骨寺村荘園遺跡の水田)

【収穫までの作業】                         水田では水の管理が微妙で、気温の変化によっては水の量を増やしたり、成長の様子を見ては追肥も行わなければならない。稲の病気,「いもち病」や稲を喰い荒らす害虫の対応、雑草取り等々、収穫までは手が抜けない時期が続く。いくら機械化が進んでも細やかな管理が重要で、昔も今も美味しい良質のお米を作る苦労は同じである。その上、台風の影響などによっては不作になってしまうこともあるから本当に大変である。

【稲刈りと乾燥・もみすり】                     田植えの時期が違うので稲刈りも9月から10月に渡って行われる。コンバインを使うと稲刈りから脱穀まで同時に出来るが、刈っただけで終わりではない。今でも自然乾燥をさせている地域もあるが、ほとんどは機械で乾燥させている。

【田んぼのガイドは案外受ける】                  と、米作りのプロセスの説明も大変だが、一面に水を張った田んぼ、田植えのあとの清々しい様子、梅雨の時期の青々とした景色、そして黄金色の稲刈り直前など、美しい変化に富んだ田園風景は日本の旅のハイライトの一つである。状況によっては、日本の皇室の紹介の折にもこんな話を付け加える。

【天皇陛下も田植えと稲刈り】                    皇居の敷地内には水田があり、昭和天皇、平成天皇、そして現在の天皇も引き継がれて種蒔き、田植えをされ、秋には刈り取って新嘗祭に供えたり、もち米は年末のご一家総出での餅つきの際に使われる。田植えや稲刈りの様子はテレビでも放映されるが、餅つきについてはあまり目に触れることがないように思う。皇室紹介のビデオを持参して、ツアーのバスの車内で紹介することがあるが、特に天皇陛下の田植えや稲刈り、また皇后陛下の養蚕の様子、餅つきには海外の方は一様に驚かれる。

今日はこの辺で。


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