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定点観察散策―合歓の花咲く道

二十四節気では小暑に入り、次の大暑までの間が一年で一番暑い時期で「暑中」と呼ばれる。例年ではまもなく梅雨明けを迎える時期だが、今年は梅雨はとうに明けた。東北でも連日猛暑の毎日でいつもの窪地の溜池散策も遠のいていた。
近くの友人から『合歓の木が満開になっている!』との知らせがあった。参議院選挙の帰り、ワクワクしながら窪地への道を下りた。前回から大分日が経ち夏草が生い茂って緑が濃く、初夏の景色からはかなり様変わりをしていた。

上から眺めた沼に行く道とネムノキ
青空とネムノキ

坂を下りてすぐ目に入るのがネムノキの並木である。春はしだれ桜が並ぶところである。横に大胆に枝を広げたネムノキの大木がやわらかいピンクにけむっていた。
二つの溜池をつなぐ道をふさぐように咲き誇っていた。ネムノキは日当たりが良く且つ湿気のある水辺で良く育つらしいので、この場所は打ってつけなのだろう。いざ咲いてみると、ここだけでなく沼のあちらこちらに咲いているのがわかったし遠景でも一目で見つけることが出来るが、咲くまではほとんど目立たない。


枝を伸ばして咲くネムノキ

夕方に葉を閉じるネムノキ】                    合歓の木は陽が落ちる頃、まるで眠りにつくように細かい葉を重ねて閉じるところからねむりの木、合歓の木と呼ばれる。それと引き換えに花が開花し、朝になって葉が開くと花がしぼむ、と言われているが、私は夜は見たことがなく、昼でも花が咲いているように見えるが、どうなのだろう。   今年はじっくりと観察してみたい。                  【万葉集にも登場】                               

まるで刷毛の様な合歓の木の雄しべ

古い言葉では『ねぶの花』と呼ばれて、薄紅色のまるで絹糸で出来た刷毛のような形をしているが、それは雄しべらしい。古代の中国では『合歓』の言葉が当てられ、男女の共寝を意味し、妖艶なイメージを思い起こさせる。  
昼は咲き 夜は恋ひ寝(ぬ)る合歓木(ねぶ)の花 
 君のみ見めや 戯奴(わけ)さへに見よ
  紀郎女(巻8の1461)

君:作者
              戯奴:家持のこと                          紀郎女が大伴家持に合歓の枝を添えて贈った歌。家持よりはるか年上で人妻でもある紀郎女は合歓の花にかこつけて戯れに誘っている。
この歌に返した家持の歌は、
我妹子(わぎもこ)が 形見の合歓木(ねぶ)は花のみに
咲きてけだしく 実にならじかも
大伴家持 (巻8の1463)
(あなたが贈ってくれた合歓木(ねぶ)は花が咲くばかりで、実にはならないかもしれません)

車道から眺めたネムノキの並木

象潟のねぶの花
昨年も今頃合歓の木の記事を書いたので二番煎じになるけれど、ねぶの花と言えば何と言ってもおくの細道の象潟で詠んだ句がすばらしい。
象潟や雨に西施がねぶの花  芭蕉
芭蕉は紀元前5cの中国、越の絶世の美女、西施をねぶの花になぞらえた。この想像力はさすがの芭蕉である。

合歓の木の下での旧知との再会
合歓の花を早く見たくて勇んで坂を下りて行くと道の真ん中にすでに先客がいて、写真を撮っていた。思わず『きれいですね』と話しかけると振り返り
『あっ、もしや小手毬さんでは?』と聞かれて驚いた。○○年前の同期で入社した同僚だった。声で分かった!とのこと。声を発しなければわからなかったかも。話しかけて良かった。満開の合歓の木の下で昔話に話がはずみ、楽しくて若返った気持ちになった。                            私と違い、一眼レフのカメラで撮影していたので、ずうずうしくお願いして、今日はその写真を拝借した。おかげで合歓の花尽くし。       ありがとうございました

ほのかに良い香りの合歓の花

では、今日はこのへんで。


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