紙博in東京の戦利品で名刺入れを作ったはなし。
「お前新しい名刺作らなくていいだろ」
「そッスね」
外部との接触ほぼ皆無な仕事をしてます。入社以来の歴代の名刺、どれも半分減ってすらいない。部署名が大幅変更されたとき、ついに名刺の注文すら放棄しました。
でも自分自身をアップデートする場――最新技術の展示会とかシンポジウムとか――には名刺が必須。
名刺じたいは何とかなりますが名刺入れが無い。だったら作るか。
自作の名刺入れと言えば定番は革細工でしょうが、菱目打ちでの穴開けは打音で母と揉めるのが分かりきってるんで道具を揃えてないのです。
残るは手芸か紙工作。ちょうど紙博in東京で購入した金属箔入りの阿波和紙がありますんで、これの取り扱い練習も兼ねて厚紙で名刺入れを作りましょうか。
蛇腹折りで本体を作る
まず実際に名刺が入る蛇腹折りの本体を作ります。本体にも戦利品を使えれば良かったんですが、筆記用をメインに物色したせいで白系ばかり。
阿波和紙に合う色味と名刺入れとしての強度を考慮し、世界堂で栗茶のレザックを購入しました。
紙の裏面にすべての山折り線・谷折り線を引いたあとにレザックを切り出します。これが本体の底と側面になります。
そのまま折ると紙に不格好なシワが入るかもしれないので、カッターのお尻にある丸みのある金属パーツで事前に筋入れしたあと、金尺を当てながら丁寧に折ります。
蛇腹折り用の線を全て折ると綺麗な凹型に! 折る前は半信半疑でしたが、こうハッキリ形になるとテンション上がりますね。
せっかくの蛇腹折りですが、いったん折りを開いて紙の重なりが多くなる個所を切り取ります。
側面の折り返し部分を折って接着後、改めて蛇腹折り。
本体の内側になるレザックを切り出し、本体パーツ両面に接着します。あ、接着剤は最初から最後まで製本用ボンドを薄めず使いました。レザックは紙の表が内側になるようにしてます。
貼り合わせ終わったら重しの下に一晩置いて本体パーツ完成。
前面パーツを作る
いよいよ阿波和紙を使った外側パーツづくりに入ります。まずは肩慣らしに簡単な前面パーツから。
パーツの芯になるのは1mmの厚紙。先に前面・背面・上面・蓋すべてのパーツぶん切り出しました(幅が同じなんで)。
阿波和紙は厚紙のサイズに上下左右1.5cm足した大きさで切り出します。
更に端から2cmのところで四隅を切り落とします。
阿波和紙に製本用ボンドを塗り、厚紙を載せて四方を折り畳みます。まず長辺を折ってから短辺を折るのですが、このとき長辺の端のたるみにヘラ先でひだを付けてから短辺を畳むことで角が見栄え良くなります。
金属箔入りの和紙は厚みがあって硬いのでひだ付けが大変でした……角の和紙も浮いちゃうんで少量の製本用ボンドを付けて重しを載せ、しっかりと接着。
前面パーツはこれで完成。
背面・上面・蓋パーツを作る
背面・上面・蓋パーツ用の厚紙は同じ阿波和紙に貼ります。
阿波和紙の切り出し時、厚紙を置くためのガイド線も引いておきます。ポイントは上面パーツを置く場所の幅は厚紙より若干広くすること。
製本用ボンドを塗った阿波和紙の上に3枚の厚紙を置くと、厚紙どうしの間にスキマができます。
前面パーツと同じように四辺を貼ったあと、厚紙どうしのスキマのところで折ります。このとき阿波和紙についた折り目をヘラで厚紙どうしのスキマに押し込みます。
元の作り方では背面・上面・蓋の役割を担うのは1枚の長い厚紙で、折り目には目打ちで筋を入れるだけ。
今回は厚紙に別の紙を貼るので、蓋の開閉がしやすいよう厚紙3分割方式を採用しました。
前面パーツと違い背面・上面・蓋パーツは名刺入れの開閉時に厚紙が見えてしまうので、別の紙を貼って隠しましょうか。私は江戸小染 はな のきはだを選びました。
切り出す大きさですが、幅は本体パーツと同じにして長さは本体パーツを貼ったら隠れる程度にしました。
厚紙のスキマに押し込みながら江戸小染を貼ります。これも開閉時のシワ防止。私この作業苦手なんですよね……。どうもマチ部分が浮いてしまう。
ともあれ背面・上面・蓋パーツもこれにて完成です。
パーツの組み立てとスナップボタン付け
全てのパーツが揃いましたんで、いよいよ組み立ての工程です!
まずは本体パーツと前面パーツを接着。ひとまわり小さい本体パーツ側に製本ボンドを塗り、前面パーツの厚紙露出部を隠すように貼り付けます。毎度のことですがちゃんと重しもかけてる。
そしてこの時点で前面パーツ側のプラスナップを取り付けます。
ハンディプレスを使う場合、どうしても挟める範囲に制約が出るのでなるべく組み立て前に作業した方が吉。上下の穴がズレる危険性はあるんでそこだけ要注意ですね。
ハンディプレスの限界を見極めながら取り付け位置を決め、目打ちで穴を開けます。
あとは説明書どおりにプレス。プラスナップが厚紙に負けないか心配でしたが、ギリギリ食い込んでくれました。
本体パーツの反対側に製本用ボンドを塗って背面・上面・蓋パーツを接着。それから蓋側にプラスナップを取り付けます。
最後に細かいところの剥がれを再接着して全工程終了となります。
完成!
蓋パーツと前面パーツの金色バランス、我ながら上出来だと思います。
名刺はこれから受け取るのですが、マチが広めなのでけっこうな枚数入りそう。
改善点を挙げるとすれば、背面パーツ用と上面パーツ用のパーツのスキマをもっとあけて反対側にも折れるようにしたら名刺の取り出しやすさが向上しそう。
なんにせよ使うのが今から楽しみです。
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