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020 地域経済の見方 /こんな学校あったらいいのに

私立大学の観光学部が、千葉県鴨川市から撤退します。

撤退あとは、どうなるんだろうか。

そこに、地域活性化に貢献する、こんな学校ができたらいいのにという妄想です。

引き続き、地域活性化を学ぶためのテーマを考えていきます。

経済学ってナニ?

「日本経済が、・・・・・」

毎日のニュースで耳にしない日はない「経済」という言葉。

まあまあ、お金に関することは「経済」にからんだ内容かなと、漠然とは思います。

しかし、経済を学ぶ経済学って、いったいナニ?と考えると、あまり理解できていなかったりします。

以前も紹介した日本学術会議の『大学教育の分野別質保証』に、経済学についても資料があります。

その中で、経済学は次のように定義されています。

 経済学は、社会における経済活動の在り方を研究する学問であり、人々の幸福の達成に必要な物資(モノ)や労働(サービス)の利用及びその権利の配分における個人や社会の活動を分析するとともに、幸福の意味やそれを実現するための制度的仕組みを検討し、望ましい政策的対応の在り方を考える学問領域である。

出典:日本学術会議 http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-h140829.pdf

経済学の目的は、そもそもは人々の幸福の達成にあると言っています。

そこではモノやサービスの活用や権利配分を考えないといけないらしい。

それらを考えて、制度的な仕組みを検討して、政策に活かしていくらしい。

つまり、人々の幸福の達成に向けて、政策を考えるために、経済学はあるということです。


有名な教科書

経済学の入門となる教科書にはいくつか有名なものがありますが、その一つにマンキューの入門経済学があります。

その目次を見てみます。

第Ⅰ部 イントロダクション
 第1章 経済学の十大原理
 第2章 経済学者らしく考える
 第3章 相互依存と交易(貿易)からの利益
第Ⅱ部 ミクロ経済学
 第4章 市場における需要と供給の作用
 第5章 需要、供給、および政府の政策
     <付論>弾力性
 第6章 消費者、生産者、市場の効率性
     <付論>税と効率・公平
 第7章 外部性
第Ⅲ部 マクロ経済学
 第8章 国民所得の測定
 第9章 生計費の測定
 第10章 生産と成長
      <付論>失業
 第11章 貯蓄、投資と金融システム
      <付論1>貨幣システム
      <付論2>貨幣の需給とインフレーションの古典派理論
 第12章 総需要と総供給
 第13章 開放マクロ経済学:基本的概念

大きくはミクロ経済とマクロ経済に分かれています。

「需要と供給」「国民所得」「生産」「成長」などといったキーワードが並んでいます。

こうした内容を、経済学の基礎として学んでいます。

実はこの教科書で一番参考になったなと個人的に思うのは、第一章にある『経済学の十大原理』です。

第1原理:人々はトレードオフ(相反する関係)に直面している
第2原理:あるものの費用は、それを得るために放棄したものの価値である
第3原理:合理的な人々は限界原理に基づいて考える
第4原理:人々は様々なインセンティブ(誘因)に反応する
第5原理:交易(取引)は全ての人をより豊かにする
第6原理:通常、市場は経済活動を組織する良策である
第7原理:政府が市場のもたらす成果を改善できることもある
第8原理:一国の生活水準は、財・サービスの生産能力に依存している
第9原理:政府が紙幣を印刷しすぎると、物価が上昇する
第10原理:社会は、インフレと失業の短期的トレードオフに直面している

この部分を読むと、経済学がどのような課題を持って考えているのかが、よく理解できます。


地域の経済に目を移すと

さて地域の経済に目を移してみると、国の経済で議論されていた内容が活かされる部分が多いものの、違うところもあります。

国という単位ではなく、多くの場合は市町村という地方自治体を単位とした見方になります。

国という単位であれば、他国との貿易に関税がかかる、他国との人の移動には一定の制限がかかるなどといった制約があります。しかし市町村という単位であれば、他の市町村とのモノやお金のやり取りは自由ですし、隣の市町村で働いたり、隣の市町村から働き手が来たりということも、制限なく行われます。つまり市町村の単位で見つつも、周辺の市町村を含めた広域で地域を見る必要があるということです。

政策の決定、税収を含めた予算策定と政策実施、住民への身近な公的サービスでは市町村というのは閉じた単位になりますが、お金や人の流れではオープンな単位になります。そうした特徴を踏まえて、地域の経済を見ることとなります。

では地域経済を考える目的はなんでしょうか。

市町村あるいは周辺市町村を含めた地域が経済的に自立し、持続可能な経済とすることが、地域経済を考える目的となります。

もちろん国からの交付金で賄う部分も必要です。しかし、交付金に過度に依存した経済とはしないということが、経済的に自立するということです。

地域経済を分析する上では、
・比較: 周辺市町村との比較、都道府県平均との比較、全国平均との比較など
・時系列: 過去からの数値の推移、産業構造の変化の推移、人口動態の推移など
・連関と因果関係: 地域内あるいは地域外の産業間の連関、生産性の高低に影響与えている要因、住民の所得の高低に影響を与えている要因など

といった視点を使うと、本質をあぶりだしやすくなります。

そして地域経済を分析した結果、地域の経済構造をどのように変えていけば、経済的に自立し、持続可能な姿に近付くのかを考えることが重要です。

地域の経済構造をどのように変えるかの大きな方向性は、次の3つになります。


地域の外に出ていくお金を少なくすること。

地域の外から入ってくるお金を多くすること。

そして地域の『幹となる』循環を太くすることで、地域に仕事を生み出すこと。


そのために必要な打ち手は、地域が持つ強みや特徴によって異なります。

そのための検討材料となるのが、地域経済の分析結果なのです。

地域経済について調べる方法を、千葉県鴨川市を例にまとめてあります。

人口増が目的か?

ところで重要な数値の一つとして、地域の人口があります。

人口は、地域経済に大きな影響を与えるドライバーでありバロメーターですが、人口を増やす、あるいは維持することを目的にすることは疑問です。

人口の増減だけに主眼を置くと、周辺市町村との人口というパイの取り合いになりかねないからです。

地域の外に出ていくお金を少なくすること。

地域の外から入ってくるお金を多くすること。

そして地域の『幹となる』循環を太くすることで、地域に仕事を生み出すこと。

地域に仕事を生み出すことが重要で、その結果として地域の人口を増やす、あるいは維持することでしかないのです。

参考書

地域経済を考えるために、いくつか参考書をリストアップします。



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あおい しんご
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。