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テクノロジーとの共生の歴史


テクノロジーの進化は、私たちの社会の変遷と切っても切れない関係にあります。

そして時代の移り変わりとともに、テクノロジーの位置付けも変化しています。

高度成長期まで

第二次世界大戦後、高度成長期にいたるまで、日本は産業を成長させることに注力してきました。

製鉄や化学といった重厚長大企業が経済の根幹となり、日本全体の成長を牽引しました。

現在の日本製鉄は、北九州の八幡や東北の釜石から、千葉県の君津へと工場を増やし、生産量を拡大していきました。

現在の三井化学も、九州の大牟田から、名古屋、山口県の岩国、大阪、そして千葉県の市原へと工場を増やし、化学品の生産量を拡大していきました。

製鉄には大量の石炭を必要としますし、化学品の多くは原料となる石炭や石油が反応する際の熱を使って反応を加速させます。

こうした産業には、エネルギーとなる石炭や石油が不可欠だったのです。

産業とエネルギーが両輪となって、日本の成長を支えてきました。

産業とエネルギーの両者を、テクノロジーの進化がさらに支えていたのです。

高度成長期まで


公害問題の拡大

産業と公害という問題は、古くから起きていました。

明治時代には、足尾銅山の鉱毒事件が起きたように。

そうした公害問題が大きく社会に影響を及ぼすようになったのは、高度成長期であった1960年代から70年代にかけてです。

工場から海に排出された有機水銀が原因となった水俣病。

工場から大気に排出された亜硫酸ガスが原因となった四日市ぜんそく。

工場や自動車から大気に排出された窒素酸化物などが原因となった光化学スモッグ。

産業とエネルギーが両輪となって進めてきた日本の成長に、環境問題という新たな課題が加わったのです。

産業とエネルギーを支えてきていたテクノロジーは、環境問題の解決という面でも、その力を発揮していきました。

排水処理や排ガス処理に用いられるテクノロジーが、大きく進化していったのです。

そして産業の成長という側面では、製鉄や化学といった重厚長大産業の成長から、電機や機械といった加工組み立てを主とする産業の成長へと変化していきました。

加工組み立てを主とする産業では、主に電気をエネルギーとして消費しています。

ここでも産業とエネルギーの関係は、切ってもきれないものとなっています。

発電においても、石炭や石油を用いた発電では排出するガスの処理を徹底するとともに、そうしたガスを排出しない原子力発電を増やすなど、産業とエネルギーと環境の関係の中で、テクノロジーは進化していきました。

人と街という観点では、それまでは企業城下町という形で、産業がその地域の雇用を生み出し、人と街を支えていました。

ある意味で、人と街は産業の中の一部であったとも言えます。

しかし環境問題への意識の高まりから、人と街の位置付けが変化していきました。

たしかに産業との関わりが大きいのですが、人と街を守るという視点では、産業の外にも軸足を持って、チェックをしていくような存在に変化していったのです。

環境意識の高まり


21世紀からの未来に向けて

トヨタが、静岡県裾野市に「ウーブン・シティ」と呼ばれる実験都市の開発をスタートしました。

JP — Toyota Woven City (woven-city.global)

これまでは、産業の一部として人や街があったのですが、これからは人と街が中心となり、そこに電気自動車が走り、再生可能エネルギーで多くを賄い、そして医療や教育も充実させていくという時代へと変わっていくのでしょう。

産業、エネルギー、環境を、それぞれテクノロジーが支えてきた時代から、人と街を中心として、それら全体を効果的に、効率的に支えるテクノロジーの進化へと変わってきているのです。

Smart Cityといったような「Smart ○○」の本質は、人と街を中心とした全体最適を実現していくことだと思います。

そこには、情報通信が大きく貢献する「デジタル」が必要となってきます。

これからのテクノロジーは、こうした位置付けで、大きく進化していくのでしょう。

21世紀から未来へ

これらを実現させていくためには、「社会実装」が重要となります。

『独立行政法人科学技術振興機構(JST)の社会技術という概念から生まれた言葉である。社会技術とは人間や社会のための科学技術という意味であるが、社会実装とは得られた研究成果を社会問題解決のために応用、展開することをいう。』(出所:滋賀県資料)

技術としての変革だけでなく、新たな技術を社会で活用できるように制度や仕組みも変革していくことが必要となります。

自然科学だけでなく、社会科学なども含めた視点で、課題に向き合っていくことが重要になっているのです。


最後まで読んでくださり、ありがとうございます。