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015 あえて『脱専門』を目指す /こんな学校あったらいいのに

城西国際大学の観光学部が、千葉県鴨川市から撤退します。

撤退あとは、どうなるんだろうか。

そこに、地域活性化に貢献する、こんな学校ができたらいいのにという妄想です。



専門深化という名のタコツボ

ボクたちはあたり前だと思っている大学の学部・学科の分類。

法学部、経済学部、文学部、社会学部、理学部、工学部、農学部、医学部、・・・
工学部の中でも、機械学科、応用化学科、金属学科、応用物理学科、電子工学科、生命科学科、・・・

どの学問も、あたかもまったく別の学問であるかのように、より専門深化してしまっています。

そうではなくて、根っこが繋がっているという受け止め方が、本来はあるのだということを丸山真男氏は語っています。

 これは余談ですけれども、日本がヨーロッパの学問を受け入れたときには、あたかもちょうど学問の専門化・個別化が非常にはっきりとした形をとるようになった段階であった。従って大学制度などにおいては、そういう学問の細分され、専門化した形態が当然のこととして受け取られた。ところが、ヨーロッパではそういう個別科学の根はみんな共通なのです。つまりギリシャ-中世-ルネサンスと長い共通の文化的伝統が根にあって末裔がたくさんに分化している。これがさきほど申しましたササラ型ということです。
(中略)
 自然科学者と社会科学者との間に、われわれは本質的に同じ仕事をやり同じ任務をもっているという連帯意識というものが非常に乏しい、いや大学や学会の哲学と社会科学というものの間にも内面的な交流が殆どない。哲学というものは本来諸科学を関連づけ基礎づけるということを目的とするものです。ところが近代日本では哲学自身が――少くてもアカデミーの世界では専門化し、タコツボ化した。哲学自身が専門化するってことは、ある意味では矛盾なんですけども、そうなっている。哲学者は社会科学に無知だし、社会科学は哲学者のやっていることは自分の仕事には全く縁がないと思っている。

出所)丸山真男『日本の思想』(岩波新書)

本来はそれぞれの学問を横串でつなぐ『哲学』があり、それぞれが関連しあいながら進んでいくはずなのに、つなぐ部分がない。

そのために、バラバラなままで深化していったというのが、日本の学問だというのです。

学術研究が進化すれば進化するほど、次の研究のために知るべき、理解すべきことが、どんどんと増えていきます。

その道で研究を進めようと思えば、他の分野に気を取られている時間など無いというのも無理はありません。

しかし、もう一度、立ち止まって考えてみると、そもそも研究は、なにを目的にしているのでしょうか。


文系も理系もない

いまや日本社会が直面している課題は、単純に解決できるような問題ではありません。

たとえばエネルギー問題を解決しようとしても、多くの壁が立ちはだかっています。

太陽光発電、風力発電、地熱発電、小水力発電など、再生可能エネルギーの候補はあります。

技術的な観点では、かなり進歩してきています。

例えば、以前に比べると太陽光パネルの価格は下がり、投資対効果でも現実的になってきています。

しかし、再生可能エネルギーが普及するためには、さらにいろいろな壁を乗り越えていく必要があります。

これまで設置されてきた電力網は、大型の発電所から、住宅一軒一軒にまで電力を送り届けるために最適化されてきています。

しかし再生可能エネルギーによる発電は、地域のあちこちに分散して存在します。その割合が小さなうちは問題にならないかもしれませんが、数十%という大きな割合になってくれば、その影響は無視できなくなります。分散型のエネルギー源に対応できるシステムとして、電力網を見直していかなければなりません。

太陽光発電や風力発電では、気象状況によって発電量が大きく変化してしまいます。一定の電力を供給し続けるためには、太陽光発電や風力発電の変動を吸収するためのバックアップが必要になります。

地熱発電では温泉業者との関係の問題、小水力発電では農業用水との関係の問題など、法制度的な問題の解決が必要となります。

地域エネルギーの組織を作ろうと考えた場合、NPOなどの組織を立ち上げ、経営していく必要もあります。そうした経営の知識も必要となります。

社会の課題を解決しようとすれば、理系の知識だけでも、文系の知識だけでもダメなのです。

理系と文系の複眼的な視点でものごとを捉えて、解決していく力が求められます。

真理の探究に没頭するのであれば、専門の殻に閉じこもったタコツボでも良いのかもしれません。

しかし社会の課題を解決するのであれば、専門の殻に閉じこもっていては、何も始まらないのです。

大学における学びには、専門を持ちつつも、脱専門を目指す必要があります。

そうした複眼的な視点を養う教育を行う大学は、どれだけあるのでしょうか。

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あおい しんご
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。