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036 先立つお金をどう集めるか
私立大学の観光学部が、千葉県鴨川市から撤退します。
撤退あとは、どうなるんだろうか。
そこに、地域活性化に貢献する、こんな学校ができたらいいのにという妄想です。
引き続き、地域活性化を学ぶためのテーマを考えていきます。
地域活性化も経営視点で
少し大きな仕掛けとして地域活性化を進めていくために、人や組織がどのように資金を調達するのかを考えてみたいと思います。
資金の調達先から考えるのも一つではありますが、ここでは「会計」の視点から考えていきます。
これから社会に旅立つ人も、ぜひ財務諸表の見方は身につけておくべきだと思います。
欲を言えば、簿記3級程度の基礎知識、たとえば仕訳の考え方なども知っておくと役に立ちます。
通常の企業会計であれば、損益計算書(P/L)、貸借対照表(B/S)、キャッシュフロー計算書(CF)の3表が基本です。
これらの見方については、書店に行けばたくさんの入門書が並んでいるので、どれか一冊を読んで理解してみます。
まず企業では、事業の元手となるお金として株主からの出資を募ります。
これが資本金となります。
この資本金を元手に事業を行い、必要なコストをかけながらモノやサービスの提供を行い、売上を得ていきます。
売上からかかったコストを引いた残りが利益となります。
利益は、株主に配当として分配されるいっぽうで、企業の内部留保として残しておきます。
こうした全体像を記載したものが、損益計算書となります。
モノやサービスを提供するためには、設備を購入したり、原材料を在庫として抱えたりします。
また資本金では足りない部分を、銀行などからの借り入れでカバーします。
こうした企業が保有する財のバランスを記載したものが貸借対照表となります。
表の左側に現金や設備などの「資産」を記載し、右側に借り入れなどの「負債」と資本金などの「純資産」を記載します。
左側の資産と、右側の負債と純資産の合計が同額でバランスするため、バランスシートとも呼ばれます。
その時、その時に、実際の現金(キャッシュ)がどのように入ってきて、どのように出ていくかを見えるようにして、資金繰りの状況が分かるようにしたものが、キャッシュフロー計算書となります。
これらの3表が、企業の財務諸表の基本です。
資金の調達方法
では、資金をどのように調達するかですが、大きくは出資と融資の2つになります。
出資では、企業が株を発行することで出資者に引き受けてもらい、お金を出資してもらいます。
企業が利益を出すようになれば、その中から配当という形で継続的に出資はお金を受け取っていきます。
そして企業が利益を出し続けて成長すれば、あるタイミングで株を売却することでお金を得ることも出来ます。
たとえば最初に100万円を出資し、毎年1万円の配当を得ていたとします。
その状態が10年続いたのちに、持っている株を売却します。
出資した企業が成長していれば、最初に100万円出資したものが、150万円で売却できるかもしれません。
もし企業が十分な利益をだせていなければ、50万円でしか売却できないかもしれません。
出資者はそのリスクを覚悟の上で、企業に出資をします。
融資では、金融機関などがお金を企業に貸し、貸している間は利子を受け取ります。
融資期間が満了となれば、企業はお金を返済するか、もしくは再び融資してもらいます。
最初に100万円を融資したとします。年利が1%であれば、企業は毎年1万円を利子として払います。
そして期間満了となれば、元本の100万円を返済します。
金融機関にとってのリスクは、企業が倒産したりして元本の返済ができなくなることです。
そのため金融機関は企業の財務状況などを、丁寧にチェックしています。
もう一度、財務諸表の話に戻ると、これらのお金は貸借対照表に記載されます。
出資されたお金は、貸借対照表の純資産にある「資本金」となります。
そして融資されたお金は、負債にある短期もしくは長期の「借入金」となります。
企業としては、融資を受けずに出資されたお金と、毎年の利益から株主への配当を払った残りの利益剰余金だけで運営できれば、それにこしたことはありません。
しかし100%を出資でまかなえることは少なく、ある程度の融資を受けながら運営しています。
このように資金調達には、出資と融資の大きく2つがあります。
ファンからの出資
出資について考えていきます。
ここで重要なことは、誰に出資を求めるかということです。
通常の企業であれば、大企業からの出資、ベンチャーキャピタルからの出資といったことが考えられます。
しかし、地域活性化を目的とした組織の場合はどうでしょうか。
都会の大企業から50%の出資をもらったら、配当の半分は地域外へと出ていってしまうことになります。
地域活性化のためには、できれば地域の人々から出資してもらい、配当として地域の人々に還元できることが望ましいのです。
地域の人々からの出資を募る仕組み、それが市民ファンドと呼ばれるものです。
市民ファンドとは、市民から出資を募って、集めた資金を運用する事業です。
地域活性化で多くあるスキームは、市民ファンドで集めた資金を、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの事業体に投資します。
再生可能エネルギーの事業体が売電などで得た収益から、市民ファンドを通じて、最終的には市民に配当が入ることとなります。
再生可能エネルギーで市民ファンドを組む場合には、匿名組合という契約形態をとる例が多いようです。
匿名組合とは、商法第535条から542条に規定された契約形態で、出資者が組合員となり、再生可能エネルギー事業を行う事業者が営業者となります。
その営業により得られる利益を出資比率に応じて組合員に分配する契約を、組合員と営業者で契約します。
組合員は、出資した金額を超える損失を負う責任はなく、これを「有限責任」といいます。
組合員である出資者は外部に対しては登場せず、営業者だけが表にでいるため、匿名組合と呼ばれます。
なお営業者は第二種金融商品取引業者としての登録が必要であり、金融商品取引業者としてしっかりとした運営が求められます。
こうした市民ファンドを組むことで、再生可能エネルギー事業に地域の人々が出資することが可能となり、得られた収益を地域の経済にまわしていくことが可能になります。
幅広く多くの人から出資を募るクラウドファンディングも増えてきています。
クラウドファンディングとは、あるプロジェクトに対して、インターネットを介して不特定多数の人々から資金を調達する仕組みとして登場しました。
クラウドファインディングには「購入型」「寄付型」「投資型」などのタイプがあります。
購入型は、あるプロジェクトに支援したいと思う人々が出資し、出資のお返しとして商品やサービスを得るものです。
たとえば地域活性化を目指したプロジェクトを起こした際に、購入型のクラウドファンディングとして資金を調達し、そのプロジェクトで開発した商品を出資者に提供したり、あるいは地域の産品をお返しとして提供したりするものです。
寄付型は、あるプロジェクトを支援したいと思う人々が、お返しなどのリターンを期待せずにお金を寄付するものです。
寄付した人々は、寄付金に対する税額の控除というメリットはあります。
こうして見るとふるさと納税に近い仕組みですが、ふるさと納税は受け取り手が自治体に限られるのに対して、クラウドファンディングでは個人やNPO団体なども受け取り手となることができます。
投資型は、先ほどの市民ファンドに近い形です。
岡山県西粟倉村での「百年の森林構想」では、その構想を実現するために、高性能の林業機械を必要としていました。
そこで2011年1月1日~2019年6月30日という投資期間で、一口5万円を約1,000口募集するファンドを組成して、資金を調達しました。
森林組合に林業機械を貸し出したレンタル収入や村からの販売支援報酬の一部を出資者に分配しています。
市民ファンドだけでなく、購入型や寄付型などのクラウドファンディングの仕組みが出来てきたことで、より多くの人々が、地域活性化を進めようとする人々を資金の面で支援できる可能性が高まってきたのです。
クラウドファンディングについて、しっかりと理解するための書籍も出版されています。
地域活性化に必要な資金の調達方法も、時代の流れで多様化してきています。
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