009 循環が見える
人口については、打てる手は限られてしまいます。
社会動態で、転入と比較して転出が大幅に上回っている地域であれば、地域にとどまってもらう、あるいは地域に戻ってもらうための策はあると思います。
しかし社会動態で同じように人口減となっている他の地域から移住を呼び込むのであれば、結局は地域同士でのパイの取り合いでしかありません。
決して、持続可能な対策ではありません。
そうなると、たとえば東京など、社会動態で人口増となっている地域からの移住やUターンを促すことになるのでしょう。
いっぽうで出生数と死亡数の差である自然動態は、有効な打ち手は考えにくくなります。
20代が地域の外へ転出せずに地域にとどまってもらい、地域で結婚・子育てをすることで、徐々にでも出生数を増やすぐらいしかありません。
ただし、いま、そうした対策を打ったとしても、人口が増えるという結果につながるには数十年がかかります。
ですから、将来のために人口増に向けた打ち手を取りつつも、まずは「人口減を前提」として地域の『幹となる』循環を太くすることが大切になってきます。
まずは「生産・販売」「所得」「支出」という『幹となる』循環が、市町村でどうなっているのかを調べてみます。
そのために、経済産業省が提供する「地域経済分析システム」(Regional Economy and Society Analyzing System)、通称"RESAS"(リーサス)と呼ばれるシステムを利用します。
RESASには、大きく8つのメニューが用意されています。
①人口マップ
②地域経済循環マップ
③産業構造マップ
④企業活動マップ
⑤観光マップ
⑥まちづくりマップ
⑦雇用/医療・福祉マップ
⑧地方財政マップ
それぞれに細かなメニューが用意されており、全体で81メニューとなっています。
この中で、地域のGDPを調べるために利用するのは、「2-1.地域経済循環図」です。
百聞は一見に如かず。まずは地域経済循環図の実際を見てみます。
この図は、千葉県鴨川市の2015年における地域経済循環図です。
大きくは「生産」「分配」「支出」に分かれています。
この中をお金がぐるぐると回っている経済を示しています。
まず生産を見てみると、第三次産業が822億円と非常に大きいですが、全体として1,017億円の経済規模となっています。
次に分配を見てみると、雇用者所得が545億円、その他所得が687億円で、全体として1,232億円となっています。
生産額よりも大きくなっているのは、地域外からの所得があるためです。
その他所得で地域外から240億円あります。
特に地方においては、国からの交付税や補助金が一定程度あるため、地域外からのその他所得が大きくなりがちです。
そして支出を見てみると、地域外から入ってくる民間消費額が573億円あるものの、地域外へのその他支出が717億円あるため、結果として地域内へ還流するのは1,017億円となっているのです。
RESASには経済循環図以外にも、多くのデータが用意されています。
これらのデータをもとに、まずは地域の経済を「数字」でおさえておくことも大切です。
長野県では、RESASの出前講座を実施しており、その資料が公開されています。
https://www.pref.nagano.lg.jp/kikaku/resas/report/itiran/index.html
https://www.pref.nagano.lg.jp/kikaku/resas/report/itiran/documents/iiyama_highschool_161117.pdf
https://www.pref.nagano.lg.jp/kikaku/resas/report/itiran/documents/karuizawahs_text.pdf
こうした資料をもとに、RESASの利用方法を理解してみるのも良いと思います。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。