038 にぎわいづくり
私立大学の観光学部が、千葉県鴨川市から撤退します。
撤退あとは、どうなるんだろうか。
そこに、地域活性化に貢献する、こんな学校ができたらいいのにという妄想です。
引き続き、地域活性化を学ぶためのテーマを考えていきます。
魔法なんてない
2017年にテレビ東京で放映されたドラマ『ユニバーサル広告社~あなたの人生、売り込みます!~』。
原作はこちら。
弱小広告代理店のユニバーサル広告社は、経営も厳しくなり、港町の寂れたさくら通り商店街へと引っ越してきます。
日本全国どこにでもあるシャッター商店街です。
そこでユニバーサル広告社の面々と地元の人々が織りなす物語です。
マグロ漁港で有名な神奈川県の三崎でロケが行われました。
そのドラマの一場面で、地元で暮らしてきたさくらが主人公の杉山に
「この商店街に魔法をかけてくださいませんか?」
と頼みます。
それに杉山が
「広告は魔法なんかじゃありません。小さな輝きを大きな輝きに導くのが広告です。その輝きを多くの人に知らせるのが広告なんです。ですから、お断りします。あきらめてしまった人を輝かせることは、広告にはできません」
と答えるのです。
そのあとにさくらが
「わたしが、わたしたちが、この町をあきらめなかったら光をちゃんと輝かせたら、そのときはそれを大きくしてくれるのよね」
とたずねると、杉山は
「もちろんです。最大限、広告させていただきます」
と。
街ににぎわいを取り戻すことは、地味で時間のかかる取り組みです。
なにかが魔法のようにはたらくわけでもありません。
宮崎県の日南市
人口約5万人の日南市は、宮崎市の南に位置します。
その中心街となる油津は、その昔、マグロと飫肥杉を取り扱う港と運河で栄えた街です。
運河近くには、歴史的建造物の杉村本店や赤レンガ館などがあります。
またプロ野球の広島東洋カープが、駅のそばにある天福球場でキャンプをはる地としても有名です。
その中心にある油津商店街は、その昔は賑わっていたものの、近年はすっかりとシャッター商店街となり寂れてしまっていました。
そこで日南市の﨑田市長に選ばれた木藤亮太さんと田鹿倫基さんが、油津商店街の再生に取り掛かったのが2013年。
ボクなりにポイントをまとめると3つ。
1.モノを売るための商店ではなく、人が集まるための商店
時代遅れの洋服を売る商店があっても、人は来ません。
いまやモノを買うのは郊外やインターネット。
そうであればモノを売るための商店ではなく、人が集まるための商店へと変えていく。
カフェや食堂もそう。
夜の時間を過ごすバーやゲストハウスもそう。
モノを売るためではなく、人が集まるための場所へと変えています。
2.やめやすい商店街
そうは言ってもそれぞれの商店にはオーナーがいます。
そして税制の優遇もあり、シャッターを閉めてもそのまま店舗を維持し続けています。
それでは商店街を変えていくことができません。
油津商店街では、オーナーから借り受けてリノベーションすることで、新たな店を出すサイクルを作っています。
つまり、オーナーが店をやめやすい形をつくっているのです。
既存のオーナーにシャッターを開けろと言っても現実的ではありません。
そうであればと、オーナーが店をやめやすい方向で、解決策を考えていったのです。
3.若い人たちの雇用と結びつける
長野県南箕輪村を例に出したように、人口構成がフラットとなるようにすることが大切です。
そのためには若い世代が街に入ってくる必要があります。
油津商店街では、若い人の雇用に直結するIT企業を誘致して、若者の人口比率を上げています。
また子育て世代の利便性も考え、IT企業のオフィスの前には保育施設の「油津オアシスこども園」もあります。
若い人たちの雇用と結びつけながら、街の活性化を進めていったのです。
何年かかっても
街ににぎわいを取り戻すには、何年もの時間がかかる地道な取り組みが必要になると思います。
しかし現実のデータを理解して、それをもとに練った戦略を持って進めていけば、きっと成果につながるはずです。
それこそが希望。