僕の右手を知りませんか。
手のひらを手術した。利き手の中指が痛み、検査をすると手術が必要だと。手荒れが原因なのか細菌が入り込んでいたようだ。簡単に膿を出すくらいのイメージでいたら、ちゃんとオペ室に入って想像よりガチ手術だった。
帰りが遅くなりそうだと思い、近所の友人にSOSを出して、娘の晩御飯を依頼した。部分麻酔で感覚を失った右手を三角巾で支えて帰ると、「骨折の人やん」と娘は笑った。友人は、全然気にせんといてなと言って、551の豚まんと手作りの米粉食パンを持たせてくれた。ドタバタした1日の終わり、不安な夜、近くにこの家があって良かったと泣きそうになった。今の家に暮らして3年、徐々にSOSを投げられる友人が増えてきた。
翌日も、「おかずあるよータッパ持っておいでー」と連絡をくれた。大根の煮物は家に帰っても、ほかほかだった。大根のお出汁みたいに、じんわりハートにしみた。
娘は優しく頼り甲斐があった。利き手が使えないので、野菜を切ってくれたり、食器を洗ってくれたり、体を洗ってくれた。本当にありがたいし心強いなあと思って、頭を撫でたり、抱きしめて感謝を伝えた。娘は素直に嬉しそうに喜んでいて、可愛かった。
手術の日は、自分がプロジェクトマネージャーとして進行しなくてはいけない会議があったけれど、他のメンバーが役割をまっとうしてくれ、滞りなく完了したようだ。
大体のことは、自分がやらなくちゃと思い込んでいるだけで、自分が抜けても回っていく。不自由な手でペースダウン、通院の時間でタイムロス。片手で持てるくらいだけの荷物にしたい、と小さく願う。
それなのに。おもろいね、それやろう、もっとクオリティ上げよう…とか言ったり言われたりして、あっという間に、手のひらからこぼれ落ち、持ち物は抱えきれずに腕の中に溢れていく。自分がしてもらったみたいに、優しくできない。