おばさんバービーを増やしたい。
バービーの映画を観た。とても面白かった。バービーの世界では、大統領も、ノーベル賞受賞者も、みんなバービー、つまり女だった。バービー=女、ケン=男で、バービーの世界では、バービー優位の世界で、現実の人間社会はケン(男)社会だ。とても滑稽に映るけど、現実世界を表している。私たちは目の前の事象に心を慣らしてしまっているけど、しっかりと滑稽な世界に生きているのだ。
現実世界の私の仕事では、ディレクターと呼ばれる仕事をしている。所属する会社は、社会を良くしようとしてるスタンスだし、ディレクターにバービー(女)とケン(男)は、それなりにバランスよく布陣している。
表舞台を拵えるのもディレクター(舞台裏)の仕事のひとつ。舞台を整え始めると、「舞台役者ケンばっかじゃん」と感じることが、非常に多い。クライアントも、クリエイターも、みんな個人として素敵なのに、みんな「ケン」なのである。キャスティングを躊躇う。(それはバービーとケンの能力の差では決してない)
舞台裏のバービー(女たち)は、「バランスをとるため」に「モデレーターとしてでも自分が舞台に立つか」とセルフキャスティングし、バランサー要員として自分の存在使ってしまったな…と、自尊心がやや消耗してしまう。
舞台裏での活躍も素敵なのだが、表舞台はまだまだ不均衡なのは無視できない。なぜ、こうなのか…と想いを馳せる。
自身の話をすると、20代後半で出産を二回経験した。30代後半の今、それなりに子育ての手が離れ、自分に時間を使えつつある。いろいろありつつ、30代半ばで今の仕事に就き、子育てと仕事を試行錯誤で乗りこなし、なんとなく仕事でやれることが増えてきて、只今、30代終盤である。
U30、という「若いけど活躍してる」「未来がある」人たちを、アラフォー以上はサポートする側に回ろうなんて、声が盛んに聴こえる。そんなことを言うのは、人間社会ではケンなる存在である。
結婚で肩書を失い、出産と子育てで時間も(社会的な)自尊心も失った後、ようやく「社会的」な復帰を奮起し、自分にもお鉢が回ってきたと思うと、「若い子に舞台を譲ろう」と、舞台裏時代を知らない同世代のケンから、のうのうと同調圧力を受ける。
バービーは生殖器がないと言っていた。大統領もノーベル賞がバービーの、バービーの世界は、出産と子育てが基本的に存在してないのだ。もちろん、バービーは老けない。
何が言いたいか。人間世界の表舞台に立つ「オバさんバービー」を「ケンだらけ」の舞台に増やしていって、ようやくバランスが取れてくるのだ。
おばさんバービーを増やしたい。