涙拭く木綿のお豆腐ください
「木綿」という名前は、唯一の拠り所。
はじめは嫌いだった。中学生の頃、ちょっと苦手な同級生に、「もめこちゃん〜」と冷やかされたのが起源。
「木綿子」と書いて「ゆうこ」と読む。自己紹介では、「もめです」と名乗るから、本名が「もめこ」と思っている人も少なくない。もう20年以上になる。
柔らかい木綿豆腐。豆腐のなかではしっかりしていると言われるけれど、相手によって姿を容易に変えてしまう。湯豆腐みたいに時々主役にもなるけれど、ブラウニーのベースになることだって厭わない。コスパ良く、栄養価も高い、昔ながらの健康食品。
「木綿子」の冠は、一度結婚した時に変わった。離婚した時は、不平等な気がして変えなかった。だけど時間が経つと違和感が膨らんできて、むちゃくちゃ面倒くさい手続きを経て、変えた。男女がつがいである表明のために、籍を移動させて、冠を変える慣習。そのものの意義、今はわからない。現在のニッポン社会では有利な場面が多いように成っているから便宜上選択することはあり得るが。”現社会での便宜上”、でしかない。
そんな経験も経て、わたしを表すうえでの、「木綿子」の不変性、改めて尊い。「木綿子」から派生した「もめ」も尊いわたしのアイデンティティ。
名曲、木綿のハンカチーフはテーマソング。あらゆるアーティストに何度も何度もカバーされ、多様な表現で、味わい方のバリエーションを知らしめる。あらゆる表現を試して、試して…そして死ぬ前に、我が木綿豆腐の核を見出したいのかなと、思い至る。
冷蔵庫にコチュジャンあるし、今夜は麻婆豆腐にしようかな。