10.30清宮海斗VS藤田和之〜長距離ランナーと中距離ランナー〜
トップ画像は@shun064さんの作品です。
10.30プロレスリング・ノアの有明アリーナ大会。メインイベントの清宮海斗と藤田和之のGHCヘビー戦は諸々と物議を醸すモノとなりました。特にSNS上では試合に関しての賛否両論。どちらかといえば否の方が多かったように感じます。否の多くは清宮に対してのものでしたね。
※前提として私はこの試合を会場ではなくABEMAでの観戦でした。なので会場での実際の熱量は推し量ることしかできません。
結論から言えば私は「細部では清宮の良さが出たものの全体としてはそれが伝わりづらい試合だった」と感じました。清宮の良さが出た細部は「挑む姿勢」と「受身の強さ」「躍動感」です。MMAの猛者である藤田に対して逃げずにグラウンドの攻防に挑んだこと。藤田のパワー殺法を受けても耐えきるタフさ。スピードある技の切れ味。特に「躍動感」については中盤にジャーマンからシャイニングウィザードに繋げたシーン。このシャイニングウィザードのスピードは素晴らしいものでした。またフィニッシュのフランケンシュタイナーも清宮の武器である跳躍力が光るものでした。
そうした良い細部があってもなぜそれが全体として伝わらなかったのか?フィニッシュの精度が原因だと言われますが私はそこだとは思いません。それは単純に試合時間が関係していると思います。
今の清宮はタフさと終盤のスピードが武器です。それを伝えるにはある程度の試合時間が必要です。「こんなにたくさん攻撃を受けてるのに立ち上がれる」「こんなに終盤でもスピードがある」。端的に言えば長距離ランナー的な良さです。
一方で藤田和之の良さは「短時間で相手を圧殺するできる」です。パワーを活かして相手をボコボコにする。相手の攻撃を受けきるというよりも攻撃で相手を制圧する。いわば中距離ランナー的な良さです。
この日の試合時間は24分06秒。私が清宮の今年のベストバウトだと感じる鈴木秀樹戦が33分だったことを考えると。少なくとも清宮が活きる試合時間とは言い切れません。試合後に藤田が余裕の態度を見せたように「我慢比べ→ラストスパートの叩き合いで相手を制圧」とは言い切れない内容でした。
あとは近年のプロレスのトレンドである「打撃の打ち合い」が清宮の得意とする領域ではないこともあるでしょう。清宮は攻撃もテクニカルに組み立てるスタイルです。打撃はここぞというときに放つタイプです。お互いがエルボーないしキックを打ち合って片方が打ち勝つといった形が成立しずらい。
これらが私の考える「清宮VS藤田戦が噛み合わなかった理由」です。もちろん王者は清宮なので相手と噛み合わせが悪くても良い試合をする責任は彼にあります。またそもそも藤田を指名したのは清宮です。そのため清宮に対する批判が出ること自体は仕方ないと思います。しかし「だから清宮は駄目だ!」と言われるほどの内容でもありません。もう一度言うと「タイプが違うので噛み合わなかった」という話です。これからの彼の成長で充分ケアできると私は思います。
※私は彼とは別の部分で足りないモノをノアに感じてますが、それはまた別の機会にお話します。
いずれにせよ清宮は王者といえども完成形ではありません。ゲームのように伝説の武器を入手したから強くなるというもんではありません。清宮がこの試合で見せた「挑む姿勢」を信じてこれからも彼を追い続けましょう!
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