プロレスの評価における横軸と縦軸〜〇〇は▲▲にマウントをとっている!と叫ぶ前に〜

プロレスにおいてAという団体でベルトを巻いていた選手がBという団体に移籍する。そしてそこで参戦当初はBのベルト戦線に絡めず、一見噛ませ犬のような扱いをされる。そうした流れを見て「BはAにいた選手の扱いを悪くすることでAに対してマウンティングをしている!」。そんな意見がSNS上で出てくることはあります。現代では選手の移籍は活発化しておりそうした論争を目にする機会は増えているとぼくは思います。

個々人が自由に意見を交わすことは大事ですし、それは保証されて然るべき。とはいえそんな論争ばかりを目にすると辟易してしまう…。なので今回はぼくが考える「プロレスの評価における横軸と縦軸」についてお話したいと思います。

ここからは少しサッカーの話と絡めていきます。サッカーではクラブ毎に異なる戦術を用いています。あるクラブは「ボールを保持して最終ラインから細かくボールを繋ぐ→保持型」。あるクラブは「保持する相手にハイプレスを仕掛けて敵陣でボールを奪い、少ない手数で相手ゴールを狙う→非保持型」。当然ですが、保持型と非保持型のどちらが優れている?という問いに答えはありません。この2つは違いであって上下の差はないありません。大事なのはきちんと哲学に基づくスタイルを選択し、そこに合う選手や監督を揃えるということです。間違っても「非保持型はなんとなく人気ないから、見栄えがいい保持型にしたろ!」みたいな思想を持つと碌なことになりません。ちゃんと戦術に基づく監督と選手を集めないとなんちゃって保持型クラブになり…以下略。

少し脱線しましたが、先程に書いた通り大事なことは「スタイルは違いであってスタイル毎に上下の差はない」という点です。※スタイル間の相性などはありますが、そこは一旦おいておきます。このスタイルの違いがぼくの考えるプロレスの横軸です。

例えば全日本なら「大型選手がぶつかり合う&緩急は場外戦を含めた間合いでとる」。ノアなら「試合の主導権をリング上の攻防でとる&細かいテクニックを重視する」。新日本なら「フィジカル的なスピードとアップテンポのトランジションができるスタミナを重視する」。

人によって解釈は異なると思いますが、「団体によって主たる試合のスタイルが異なること」はプロレスファンには理解できると思います。

特にこの15年はどの団体も「新日本と差別化」という命題がありました。新日本と同じことをしても経営規模を考えたら太刀打ちできない。であれば新日本とは異なるスタイルをとろう。それにより団体毎のスタイルもより差別化されたとぼくは思います。

そうしたスタイルの細分化によって引き起こされたのが「移籍をするとその団体のスタイルにマッチするまでに時間がかかるようになった」という現象です。

実際にサッカーでも「非保持型クラブにいたボール奪取に特化した選手が保持型クラブに移籍すると足元の技術不足でフィットするまでに時間がかかり試合に出られない」というケースはあります。

これは「前のクラブが今のクラブよりレベルが低い」ではなく、単に選手と今のクラブの相性やかみあわせの問題です。

プロレスにおいても同じようなことが言えるのではないでしょうか?。「細かいテクニックや場外戦などを利用して試合に緩急をつけていた選手」が「フィジカル的なスピードやパワーと細かいトランジションを第一に求められる団体」に移籍したら?即座にフィットするのは難しいと思います。そして団体側も「しっかりフィットしなければ優先的に使うことはできない」となるでしょう。そこに他所へのマウンティングなどはなく。あるのは「団体が要求するスタイルへの適合度」。ぼくがプロレス評価の縦軸においているのはまさにここです。

改めて整理すると、ぼくの考えるプロレス評価の横軸は「スタイルの違い」で縦軸は「スタイルへの適合度」です。最初に書いた「BはAにいた選手の扱いを悪くすることでAに対してマウンティングをしている!」という意見。これはぼくの考える縦軸と横軸を入れ替えた発想かもしれません。スタイルそれ自体に優劣をつける。もちろん人間なので好みはありますし、多くの人が好むモノ(高い売上)は優れているとみなすこともできます。ただし行き過ぎると団体のファン同士で殴り合うことに繋がりかねません。しかし横軸と縦軸を入れ替えれば、そうした空気から逃げることもできます。

snsにおける団体のファン同士のマウンティング論争に疲れた方が「あーこんな考えもあるのか」と思ってもらえると幸いです。




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