N-1 VICTORY2022【DAY6】藤田和之VS田中将斗〜巡り会えたライバルとの本気の戦い〜
※トップ画像はWRESTLE UNIVERSEのキャプチャです。
藤田和之というプロレスラーが2022年にプロレスリング・ノアで完成する。そんなことを20年前に発言していたら?おそらく鼻で笑われるのがオチでしょう。真実は小説より奇なり。それを現実世界で知らしめたのがN-1 VICTORYの藤田和之VS田中将斗の試合です。
プロレスにおいて藤田の比類なき怪物性を引き出せた相手は少ないです。永田裕志、潮崎豪、中嶋勝彦等。しかし彼らは藤田和之を活かせてもライバルとは言えなかったと思います。敵はいてもライバルは不在。そんな中で藤田がようやく巡り会えたのが田中将斗なのではないか?
22年3月に当時GHCヘビー級王者だった藤田に挑戦したのが田中でした。あのときもお互いの肉体をぶつけ合う名勝負でした。しかし今年のN-1の試合はそれをさらに超えました。
序盤の静かなグラウンド合戦。藤田の領域かと思わせつつ田中が当たり前のように合わせる。「プロのレスラーなんだからこんなもん出来て当然」。田中からそんな言葉が聞こえてきそうな光景でした。
リング中央での4の字固めを巡る攻防も。フルスイングでエルボーを叩き込む攻防も。田中は藤田の底力を引き出すだけでなく。その上で藤田に勝つことに執念を見せていました。それは序盤に藤田の足を徹底して攻めたこと。中盤以降に何度かビーストボムで担ぎ上げられても凌いだこと。そのあたりからもうかがい知ることができます。
一定のラインまでは攻撃を受けつつ。しかしクリティカルヒットは許さない。田中がこのスタイルだった反面藤田はそうではなかったかもしれません。試合中時折見せた笑顔。それは「俺の攻撃にお前は耐えるのか?」「なら俺だって耐えてやるよ!」と。自分と同じ目線で戦う相手を見つけて嬉しかったのかもしれません。
象徴的だったのが決着のついたシーンです。田中が後頭部→正調とスライディングDを放ちカバーに入る。藤田はこれを返して上半身を起こす。田中がサポーターを外してラストショットを狙う。このとき藤田は雄叫びを上げました。逃げることもできたはず。しかし藤田はそれをせず「受け止めること」を選択しました。
完璧に入った田中のスライディングDを藤田は返すことができず。この日の勝負は田中に軍配が上がりました。両者がもっと早くに巡り会えたら?さらに多くの名勝負が生まれていたのか?それはわかりません。ただ両者が様々な経験を積んで対峙した。そこに名勝負が生まれた。それだけは間違いありません。藤田和之の全盛期は今である。敗れてなお私はそう確信しました。
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