世界のゲーム市場動向【2018】
はじめに
2018年は何らかのゲームを楽しんでいる人が世界で23億人おり、世界のゲーム産業は東京都の予算規模とほぼ同じの13兆7,900億円の市場と言われています。これは前年比で、1兆6,200億円増加し、ゲーム人口は13.3%増加しています。
更に、その市場の内訳を見ると、スマートフォンやiPadを代表とするタブレット端末を含むいわゆるモバイルでプレイするゲームのシェアが最も大きく、2007年に初めてiPhoneが発売されて以来、10年連続で二桁成長を続けています。モバイルゲームのグローバルの総売上は前年比で25.5%も伸び、世界富豪ランキング5位のFacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグの純資産とほぼ同じの7兆300億円になります。そしてなんと、2018年はモバイルゲームのシェアが初めてゲーム市場の半分以上となる51%を占める年だと言われています。
更にグローバルのモバイルゲーム市場の内訳を見ていくと、スマートフォンが80%を占め、売上が5兆6,400億円で、残り20%はタブレットによるものです。そして、プレイステーションやXBOXといったコンソールゲームは2018年で、モバイルゲームに続く2番目に大きい市場となり、売上は3兆4,600億円、続いて若干ビハインドでパソコンゲーム市場が3番目の3兆2,900億円です。
過去10年で二桁成長を続けるゲーム産業
さて、2021年に向けて、ゲーム市場がどのように変化するかでしょうか。ある調べでは、ゲーム産業は、2021年までに18兆100億円まで大きくなると言われており、2017年から2021年の間で年平均の成長率は10.3%と予測されています。2012年が7兆600億円の売上であり、2012年から2021年の10年間では年平均成長率11%を維持しています。この10年間で二桁の成長率を維持するということは、事実、注目に値します。この継続した成長率は、単独企業が数十年にも及ぶ経験から成し遂げることが可能な数字と言われており、ましてや、それが業界全体で起こるなんてという驚異の数字です。
モバイルゲームは2021年までに10兆円になる?
この10年間で、モバイルゲームは2012年では、もっとも小さかった市場であったのに、2021年では10兆円を超す巨大な市場になると予測されています。しかし、モバイルゲームがパソコンやコンソールゲーム市場の売上を著しく飲み込んで大きくなっていくのか?というと、そうではないようです。どうやら新規モバイルゲーマーがどんどん増えていくという予測のようです。今後数年間で、モバイルゲームの売上成長率はゲーム市場全体の成長率を上回り2021年までに10兆6,400億円まで達します。その時には、スマートフォンとタブレットゲームを合わせて、グローバルのゲーム市場の59%を占めるでしょう。
因みに、パソコンゲームとコンソールゲームは共に、ここ数年で安定した成長を遂げています。2018年においては、コンソールゲームが3兆4,600億円で25%のシェアであり、パソコンは3兆2,900億円で24%の市場シェアです。
パソコンゲームやコンソールゲームに明るい未来はあるのか?
インターネットに接続できる環境であればゲームソフトをダウンロード・インストールする必要がない、いわゆるブラウザーゲームを含まないダウンロードやパッケージによるパソコンゲームにおいては、2017年から2021年の間で4.2%の平均成長率で、2021年には3兆2300億円となります。マルチ対戦ゲームやesportsがドライブすることで、パソコンゲームは今後も成長を続けると考えられ、これが局所的に高い売上を生み出します。つまり、大人気タイトルのいくつかが高収益の可能性を持ちますが、悲しいことに、それは長続きせずに、新たなゲームによって、その座を奪われるという流れが繰り返えされます。
これは、今まさに、PUBGやフォートナイト等のバトロワゲーで、起こっています。パソコンゲームの大きな問題は、近年ゲーム自体の平均価格が減少傾向にあるということで、これがゲーム産業全体の成長率から見るとパソコンゲームのシェアを縮小させている一つの要因と言えます。そして、パソコンゲーム市場は、2017年から2021年の5年間で1.8%の平均成長率となり、今後、ブラウザーゲームは残念ながらパソコンからモバイルゲームへとシフトしていき、2021年までにブラウザーゲームの半分の売上が無くなります。
因みに、コンソールゲームにおいては更なる成長の余地があり、その鍵となるのは、ゲームの発売元いわゆるパブリッシャーがゲーム初期費用を維持したままでゲーム内課金オプションをうまく活用し収益をあげていけるかどうかです。更にコンソールゲームでは、2021年までにライブストリーイングやesportsがすっかり定着して、これらがプレイヤー間の接触を更に加速すると思われます。そして、コンソールゲームは、年平均成長率を4.1%で維持したまま、2021年には売上が3兆9000億円になる予測です。
日本のゲーマーは世界一課金している
2018年、日本のゲーム産業は世界で第3位の市場で前年比15・1%増の1兆9,200億円です。因みに世界第2位はアメリカで、世界第1位は、もちろん中国です。近年のパソコンゲームのローカライズは、中国語が優先されているのは、これで納得です。日本国内のゲーム産業を見てみると、モバイルゲーム企業が勝ち組という構図で、日本のモバイルゲーム市場規模とカナダとアメリカを含む北米地域のモバイルゲーム市場規模はほぼ同じなのに、日本のプレイヤー人口は北米地域の3分の1しかいません。事実、日本のゲーマーは、どの国よりもモバイルゲームにお金を使います。一人当たりの課金は、なんと北米と比較すると1.5倍、そして西ヨーロッパと比較すると2.5倍です。
そして恐るべき中国ですが、中国はなんとグローバルのゲーム売上の1/4以上のシェアがあり、2018年の売上は日本の約2倍に匹敵する3兆7,900億円に達します。そして、中国は売上のみならず、プレイ人口も世界一を維持し続けています。2018年、中国ではモバイルゲームはゲーム産業全体からすると61%のシェアを占めており、そのまま中国国内のゲーム市場を支配していき、2021年までに70%シェアへと成長していく予測です。
さて、全体としては、グローバルのゲーム売上の52%である7兆1,400億円がAPACいわゆるアジア太平洋地域で生み出されます。もちろん日本もここに含まれます。これは前年比で17%増、増加分のほぼ全てがモバイルゲームに起因するもので、モバイルゲーム単体で言うと、2018年には前年比で9,700億円プラスの4兆4,700億円と成長します。APACは引き続きグローバルゲーム産業の成長の牽引役で、インドや東南アジアのような新興国は、スマートフォンユーザー数が飛躍することにより、また、モバイルゲームへの強い消費意欲により、中国や日本のような定着した市場へと成長します。
また、2018年において、カナダやアメリカといった北米地域はグローバルのゲーム売上では第2位の市場で3兆2,700億円となり、前年比10%増です。この成長のほぼ全ては、やはりスマートフォンから来ており、比較的小規模ですが一部はコンソールゲームに起因します。この傾向はEMEAと呼ばれるヨーロッパ中東アフリカを含む地域と同じで、2018年において、EMEAでは、2兆8,700億円に達すると予測されています。因みにヨーロッパ諸国ではモバイルゲーマーはアメリカよりも課金をしない傾向です。課金は一人当たり、アメリカがヨーロッパの1.6倍となりますが、これは、中東及びアフリカのスマートフォン人口の安定的な伸びと相殺する形です。そして、2018年、中南米のゲーム市場は、5,000億円と成長します。
最後に、インディーゲームが大好きな私の持論ではありますが、ゲームは文化とテクノロジーに密接にかかわる創作物と思いますので、ゲーム開発者には、ぜひ、あまり商業的な視点ばかりに着目してゲームを作ってもらいたくはないですね。私自身は、どうしても大衆向けの大作ゲームでは、インディーゲームで味わえるダイヤの原石を掘り当てたような感動がプレイを通じて得ることは中々できません。その点、ゲームというのは、音楽や映画、書物にも似ていると思いますね。創作物は、開放された自由な発想から作られるもので、ゲーム開発者は、それが面白いと思った人達から自分が生活するに十分な収入を得られる術があれば、それで良いのだと勝手ながら思います。これは、まさに、アーティストの精神です。幸い、今の時代はアイデア一つで、インターネットを通じて様々な資金調達の手段が確立されています。なので、インディーゲームに携わる方は、ぜひ、それらを積極的に活用して、ひたすら我が道をサバイブしてもらえることを願いますね。
あと、この記事を動画にもしていますので、よろしければチェックしてください。
[出典:Mobile Revenues Account for More Than 50% of the Global Games Market as It Reaches $137.9 Billion in 2018]
2016年10月より海外インディーPCゲームに特化した紹介動画をYoutubeであげています。このnoteでも情報発信を2019年1月より始めました。