カンヌライオンズCEOが語る、これからの広告を占う3つのテーマとは?(ad:tech tokyo 2022 参加レポート①)#adtechtokyo
アジア最大級の国際マーケティングカンファレンス「ad:tech Tokyo 2022」が、10/20(木)から10/21(金)までの2日間、東京ミッドタウンとザ・リッツ・カールトン東京で開催されました!
ad:tech tokyoとは?
このイベントは、世界各地で開催される国際マーケティングカンファレンス「ad:tech」のひとつです。広告主をはじめ、代理店、メディアなど、さまざまなジャンルのマーケターが集まり、各企業の展示や、基調講演を含む60以上のセッションが用意されています。日本では2009年に第1回が開催され、今年で14回目の開催です。
Molocoは昨年に続き「ad:tech tokyo」に参加し、ブース展示や日本事業統括責任者・坂本達夫によるセッションを行いました!
カンヌライオンズのCEOが示唆した、これからのクリエイティブ業界を考えるための5つのテーマ
さまざまな業界からキーパーソン中のキーパーソンが集まる「ad:tech tokyo」。初日の講演で特に注目を集めたのは、カンヌライオンズCEO、Simon Cook(サイモン・クック)氏の基調講演でした。
改めて――といってもすでにご存じの方ばかりかもしれませんが――カンヌライオンズ(カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル
/Cannes Lions International Festival of Creativity)とは、その規模の大きさ、審査レベルの高さから、世界で最も権威のある広告賞ともいわれています。時代の変化に合わせて表彰部門も広がり続け、広告業界の世界的なトレンドはもちろん、社会のトレンドをも知ることができるイベントといっても過言ではありません。
そんな世界屈指の広告賞を運営するトップが、どのように今年のカンヌライオンズをみたのか?彼の言葉からは、これからの広告やクリエイティブを考えていくうえで欠かせないヒントが明らかになりました。
Simon氏は最初に、今回のカンヌライオンズを分析して明らかになった、今後のクリエイティブ業界の行方を占う5つのテーマを掲げました。
セッションではこのうち、戦略的な話題性、共感力、メタコマースの3つについて、それぞれのポイントがどのように今後の広告やマーケットに影響を与えるのか、受賞作品による実例とともに解説されました。
クリエイティブ業界の行方を占うテーマ①――戦略的な話題性
話題性の追求は、今に始まったことではありません。しかし、今年の受賞作品に共通してみられた「話題性」をひも解くと、ただ瞬間的な話題に「触れる」だけではないことがわかりました。つまり、社会の関心事に合わせたブランドメッセージやクリエイティブを発信するなど、話題に即して「自ら行動を起こせる存在である」ことの重要性を示しているのです。
セッションでは、ハイネケン(蘭ビールメーカー)やChipotle(米メキシコ料理チェーン)、EOS(米スキンケアブランド)などの事例が紹介されました。
中でもChipotleでは、「カルチャーハンター」と呼ばれる専門チームがブランドの成功を後押ししました。彼らはソーシャルメディアを通じて世界の動きを把握し、時には著名なクリエイターとも交わりながら、どのタイミングでビジネスを展開するのか、どのようなメッセージングや対応がリアルタイムでできるのかを見極めます。あるひとつのテーマが話題にあがった瞬間、自らのブランドがその話題の中心になるよう働きかけているのです。
また、クリエイティブに「話題性」を示すためのもうひとつのテクニックが「俊敏性」。例としてWingstop(米フライドチキンチェーン)の事例が紹介されました。
Wingstopが展開しているアメリカでは、コロナ禍によってブランド名にもある手羽先(Wings)が供給困難な状況でした。そこでWingstopが急遽展開したのが、もも肉(Thigh)を使ったフライドチキンのブランド「Thighstop」でした。
Cannes Lions 2022 - Thighstop - Wingstop
ラッパーであり、フランチャイズオーナーでもあるRick Ross(リック・ロス)氏もプロモーションに加わるなど、社内外の様々な人物が連携してプロモーションを展開し、Wingstopは新たな顧客層を取り込むことに成功。なんとThighstop商品を購入した人のうち60%が、今までWingstopと接点がなかった人であるというデータも得られました。
これらの「話題性」を示すために必要なのは、「常にブランドメッセージが社会の文化やその時の話題に対応すること。そのための最初の一歩として、洗練されたソーシャルリスニングを通じてトレンドのトピックを常に把握すること」であると、Simon氏は指摘します。
クリエイティブ業界の行方を占うテーマ②――共感力
共感とは、「純粋に消費者の立場に立ち、消費者の視点を理解しようとすること」。生活費の高騰や紛争など日々刻々と変わる世の中では、こうした共感を指標とする「共感力」がますます重要になっています。アメリカの広告代理店Karatによれば、世界で最もエモーショナルなブランドのトップ20は、2010年から2021年の間に910%の株価上昇を記録したとのこと。
この「共感力」を高めるためにできる施策として、ひとつは「リサーチで消費者に適切な質問をすること」、もうひとつは「日常の瞬間に潜む感情を捉えること」とSimon氏。例として取り上げられたPenny(独スーパーマーケット)の作品では、パンデミックによる若者の苦悩が描かれており、定量的なデータでは表れない、日々の感情の機微を作品から感じ取ることができます。
Penny | The Wish (english subs)
Simon氏は「消費者への質問を通じて彼らが持つストーリーの全体像を把握することで、共感力を高めるヒントがみえてくる」と指摘します。
クリエイティブ業界の行方を占うテーマ③――メタコマース
今回のカンヌライオンズでは、受賞者の多くが消費者に購買を促すための優れたテクニックを披露しました。
これからのショッピングは、リアルとバーチャル空間にそれぞれマーケットがあり、2つの空間をまたぐ「マルチバース」による購買体験ができるようになるといいます。
セッションでは「マルチバース」による購買体験の例として、アディダスのオンラインコレクションが取り上げられました。メタバース上でコレクションのNFTを購入することができ、高度にパーソナライズされた購入者のアバターがアディダスのコレクションを身にまとうだけでなく、NFT(非代替性トークン)マーケットでの二次流通も可能にしています。これらのNFTは10万円近くで購入された例もあり、今後も勢いが続くとみられます。
また、もう一つの例として紹介されたTennis Australiaによるイベントでは、全豪オープンのファン文化をメタバ-スに引き込み、157か国で175,000ものユニークセッションがあるほどの盛り上がりを見せた様子が紹介されました。
このように、今年の受賞作品ではメタコマースの可能性を追求した取り組みが数多く見られたことから、「来年以降もこの分野で先進的な取り組みをみせるケースが見られることを楽しみにしている」とSimon氏も期待をみせています。
最後に――変化の激しい時代のなかで、より良い広告を出すために
Simon氏は最後に、セッション参加者へのメッセージとして次のように問いかけました。
今回Simon氏が解説した3つを含む5つのテーマは、いずれも表現の技法というより、どうすればより良い広告が人々に届けられるのかという本質的な問いだったように感じました。そして、これらの問いに応えるために、ブランドが社会の声に耳を傾け、社会に寄り添う取り組みからはじめることが大切であると再認識することになりました。
また、この問いはクリエイティブだけでなく、広告に関わるものすべてに当てはまるのではないでしょうか。Molocoでも、ユーザーが本当に必要としている広告が提供されるソリューションをプロダクトを通じて届けることで、今後もよりよい広告を世の中に届けられるよう取り組んでいきたいと思います。
ad:tech tokyo 2022の参加レポートは、シリーズでご紹介します!次回もお楽しみに!